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7日は立秋だった。暦の上では秋である。この頃、例年のことだが、早朝、近くの川岸を散歩していると、赤とんぼの群れに遭遇する。立秋がいつなのか、記憶になくてもそのことを思い知らされる。自然の摂理には驚いてしまう反面、人間の力の及ばないゾーンであることを再認識させられる ▼その人間の社会はといえば、道理が道理として通用しなくなってしまって久しい。その原因は、冷戦体制崩壊に伴う多様な価値観の単一化にあると思う。東洋に西洋を押しつけ、イスラム教社会にキリスト教を押しつける ▼旧ソ連・社会主義との冷戦に勝利したと考える米国とその追従国。そして、勝利をイコール正義に置きかえてしまった。その結果、自由主義を標榜する米国価値観の強要、一色化によって、弱肉強食という動物の本能そのものの考え方が大手を振って闊歩するようになってしまった。そこには歴史も智恵も道徳も入り込む余地がない ▼北京で続けられていた第4回6者会談が休会に入った。これまで前例のないほどの熱のこもった接触を行った朝米だが、合意の文書化は先送りされた。原因の一つは、主権国家の当然の権利(核エネルギーの平和利用)行使を、朝鮮に限っては認めないという米国の対応にある ▼朝鮮を除く6者会談参加国はすべて原発大国である。原発がなければ一気にエネルギー不足に陥ってしまう。自らは権利を行使しながら、朝鮮のそれは永久に認めないという米国の行動は、理不尽そのものである。イラクもそうだが、冷戦後の米国のごう慢さが世界を混乱させている。(彦) [朝鮮新報 2005.8.9] |