top_rogo.gif (16396 bytes)

春・夏・秋・冬

 まもなく8月15日がやってくる。今年は60周年。毎年この時期になると、テレビや新聞などで戦争に関する企画が組まれる。60年の節目ということもあって、今年はとくにそんな企画が目立つようだ。そんな「戦後60年物」の中でも、山口、大阪、東京などで上演された演劇「沈黙の海峡」は圧巻だった

▼この演劇にはモデルがいる。徴兵被害者の金百植さんだ。1944年、日本軍に徴兵され、戦地で精神を患った。以後、故郷の家族に知らされることもなく、金さんは日本の病院で孤独な生涯を送った。死後、引き取り手のない遺骨を預かったのが東京・小平にある「国平寺」の住職。その後、遺族が見つかり、金さんの遺骨は無事故郷に戻っていった

▼この演劇がユニークなのは「東京ギンガ堂」と「ソウル市劇団」に所属する韓日の俳優たちが共演していること。セリフも日本語と朝鮮語が混じりあう。とくに、主人公とその先輩(日本人)のやりとりは圧巻。植民地時代の日本と朝鮮との関係だけでなく、ここで語られる話は今の両国関係にも通じる

▼両者の話はすれ違いばかり。だからこそ、わかり合うことの大切さをあらためて感じる。日本が過去、朝鮮に何をしたのかを、日本の若者たちが目をそむくことなく直視することを前提に、互いが互いをわかり合う努力が必要であることを、劇は教えてくれる。そこから未来志向的な考えも生まれる

▼出演者たち、とくに日本人側に若い人たちが目立っていたのは幸いだ。彼らがこの劇から学んだことを多くの友人たちに伝えていってほしい。(聖)

[朝鮮新報 2005.8.6]