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春・夏・秋・冬

 「大統領の理髪師」(イム・チャンサン監督、脚本)を観た。1960年代から80年代初の激動の南朝鮮を舞台に、ひょんなことから時の大統領の理髪師になってしまった普通の男が主人公。ソン・ガンホ扮する理髪師のあまりのおかしさに笑いころげながらも、息子を拷問で廃人にされた父親としての怒りを露にするシーンは涙せずにはいられない

▼この映画は、ことさら声高に政権非難をしたりせず、市井の人々の悲しみ、怒りを静かに表現しているのがよい。時の政権を全面的に支持してきた主人公が、息子の脚を治すために思わぬ勇気を発揮する。そこらへんも笑わせてくれるのだが、ハッピーエンドで終わる

▼しかし、この映画では風刺とユーモアセンスで描ききっている軍事独裁政権時代。同時代を生きてきた筆者にとっては、笑うに笑えない場面もあった。4.19民衆蜂起、朴正熙の軍事クーデター、その後の軍事独裁政権時代、そして朴の暗殺…。たいへんな時代を生きてきて、現代に至ったのだということを、あらためて感じる

▼今の若い世代にとっては、これも歴史でしかありえないのかもしれない。しかし、今の南がどのようにしてなりたったのかをきちんと知る必要がある。それでこそ、逆に南の人々の思いを真に理解することができると思う

▼それにしても、この映画の監督はこれが初めての作品だという。だからこそ、あの時代をあれほど客観的に風刺できるのか。筆者の世代ではまだできそうにないが、同胞の若い世代なら歴史を乗り越えることは可能なのかもしれない。(聖)

[朝鮮新報 2005.3.5]