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「死ぬ日まで空を仰ぎ/一点の恥辱なきことを」。この有名なくだりで始まる「序詩」の作者、尹東柱氏が福岡刑務所で獄死してから、16日で60年を迎えた ▼今年は朝鮮解放60周年、総聯結成50周年と、何かと節目の年だが、尹氏が亡くなって60年が過ぎたかと思うと、感慨深いものがある。解放を目前にして異国の地で、それも獄中で果てたことを思うと、なおさらこみ上げてくるものがある ▼尹東柱といっても、若い世代の中には知らない人もいるかもしれない。氏の詩集「空と風と星と詩」(伊吹郷訳、影書房)などに、生い立ちなどが詳しく掲載されている。1917年、現在の中国・東北地方である間島省に生まれ、延禧専門学校(現延世大学)を卒業。42年に日本にわたり立教大学、同志社大学で学んだ。43年、京都で「治安維持法違反」容疑で逮捕され、福岡刑務所に移送される。そこで正体不明の注射を繰り返し打たれ、衰弱死した。28年の短い生涯であった ▼氏はなぜ逮捕されたのか。「特高月報」によると、「在京都朝鮮人学生民族主義グループ事件」に関わったという。それを詳細に読んでいくと、民族意識を持つことが日本に対する「反抗」ということらしい(前述の「空と…」参照)。朝鮮人が民族意識を持っただけで、逮捕され、獄中で死ななければならなかった ▼禁じられた言葉「朝鮮語」で書かれた氏の詩は、ソウルの友人が甕に入れて隠した。解放後、遺稿詩集が刊行され、その詩は今なお朝鮮半島の人々に親しまれている。95年には同志社大学に詩碑が建立された。(聖) [朝鮮新報 2005.2.17] |