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若きアーティストたち(33)

舞踊家・桂栄順さん

 東京朝鮮歌舞団は今年、創立40周年を迎える。来月15日に行われる特別公演のテーマは、「昨日、今日、明日、ずっと同胞とともに」。

 入団11年目になる舞踊家の桂栄順さん(30)は、10年間を振り返り、「あらためて同胞あっての歌舞団、との実感が込み上げてくる」と話した。

 「総連活動のどれをとってもそうでだが、サークルひとつ取ってみても、同胞なしではその意味がうすれる。公演は、観客あってのものだから、記念公演では東京朝鮮歌舞団40年の歩みを振り返り、団員たちをわが子のようにかわいがってくれた同胞たちへの感謝の気持ちを表現したい」

 ひとりでも多くの人々に朝鮮舞踊を知ってもらい、同胞たちには民族的な情緒と喜びを、日本の人たちには朝鮮および在日同胞への理解を…との思いを胸に地元東京を中心にさまざまな舞台に立ち、いろいろな人たちと接してきた。

 03年には、朝鮮の若手アーティストたちの登竜門と言われる「2.16芸術賞」個人コンクール舞踊部門に出場した。出場者は、本国で幼い頃から英才教育を受けてきた精鋭ばかり。舞踊部門は最終的に男性2人、女性5人が残った。

 「審査員は、国家作品審議委員会はじめ、万寿台芸術団、ピパダ芸術団の大御所たち。本場朝鮮で生まれ育った舞踊家たちの気迫と独特の持ち味に圧倒された」。桂さんは、同胞生活に密着して芸術活動を行ってきた歌舞団の舞踊家として堂々と舞い、その結果、1位なしの2位を受賞。祖国の民族芸術団の舞踊家と並ぶ形となった。

 「審査を控えて約5カ月間、日本を離れて平壌で厳しい練習に汗を流した。辛いとき、心の支えになったのは歌舞団の同僚たちと地域同胞サークルのオモニたちの応援だった」

 当時、桂さんは、東京を中心に関東地域17カ所で朝鮮舞踊、チャンゴ、歌のサークルの指導にあたっていた。受賞は、「祖国で認められた舞踊家」としての自信になるとともに、応援してくれた同胞たちへのプレゼントにもなった。

 新しい時代を迎え、在日朝鮮人運動にも「変化」や「転換」がもとめられる中、桂さんは「それでも個人的には純粋に朝鮮舞踊を踊りたい」と考える。「西洋的なものや現代的な要素を取り入れた作品はほかにもあるけど、日本ではなかなか見ることのできない朝鮮の舞踊をもっと知ってもらいたい。観客の要求に応えられるよう練習は積んでいるが…」

 02年9月17日を境に在日同胞を覆った「悪夢のような期間」に、「無言で公演を見守る同胞たちの姿に胸が締めつけられる想いがした」という。

 「このままでは活動の場がなくなるかもしれない。朝鮮の歌を歌い、朝鮮舞踊を舞う歌舞団は、朝・日友好のかけ橋であるはずなのに、対外公演の数が激減して…」

 それから2年、「今は蘇生の時期」と言う。そして「同胞たちは朝鮮と日本の関係が良くなることを望んでいる。同胞たちの要求にこたえ何でもこなせるよう、もっと強かに、しなやかに芸術活動をしていかなくっちゃ。祖国を愛し、同胞たちを愛する気持ちに変わりはないから」と力強く話す。

 公演は12月15日、サンパール荒川で18時30分から。問い合わせ=TEL 03・3945・7040。(金潤順記者)

 1975年生まれ。東京朝鮮第5初中級学校、東京朝鮮中高級学校卒業。93年東京朝鮮歌舞団入団。「4月の春親善芸術祭典」「8.15汎民族大会・芸術公演」「金正日総書記の生誕慶祝・在日朝鮮人芸術団公演」など多数出演、03年「2.16芸術賞」2位受賞。主な作品に「太鼓の舞」「誓い」「チャンゴの舞」「革命の勝利が見える」など。

[朝鮮新報 2005.11.1]