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若きアーティストたち(31)

広告デザイナー・鄭伸佳さん

 デザインの力で商品を魅力的にPRする広告デザイナーの鄭伸佳さん(23)。

 ポスター、雑誌、新聞の折り込み広告、プロモーション企画など、多彩な仕事をこなしている。

 高校1年生の夏、日本の学校に在学する同胞学生を対象に開催されたサマースクールに参加して、家族、親せき、幼なじみ以外の同胞と初めて会った。

 「とても楽しかった。100人以上の参加者たちがみんなチョソンサラムだというのが驚きだった」と、当時の感動を熱く語る。

 卒業後、いずれは同胞のために働きたい−。そんな思いを強く抱くようになったのも、朝青や学生会の仲間と知り合ったサマースクールがきっかけだった。

 専門学校を卒業して飛び込んだ広告業界は、常に新しく、刺激的な発想をもって闘う「戦場」だった。

 就職後、鄭さんは毎朝10時に出勤して、終電で帰宅という苛酷な日々を送った。週に3、4回の徹夜は当たり前。最初の頃は先輩にもよくしごかれ、デザイン画を徹底的に指導された。

 そんななかでも鄭さんは、朝青活動に対する愛着を忘れはしなかった。

 「高校時代のように、夏休みに朝青イルクンと一緒に新報の配達をするわけにはいかないけれど、時間を見ては支部に出て活動している。サマースクールのポスターやチラシは3年前から作っている」

 鄭さんは、コリアンユースネットワークマガジン「月刊セセデ」を毎月欠かさず愛読している。

 「『セセデ』を読むとき、僕は朝鮮人になっている。僕らにとって『セセデ』は、朝鮮人としての勉強をするためのものだけど、若者向けの雑誌としては、もっと敷居を低くして、ファッション誌的な感覚で、日本と在日同胞の若者たちが一緒に楽しめるものがあっても良いと思う」

 そのためには雑誌のエンターテインメント性を高めて、見せ方の工夫をする必要がある、と鄭さんは考える。

 「生意気かもしれないけど、どのように見せるかが勝負どころ。大阪のサマースクールのチラシには、これを使って必ず成功させたい!っていう強い気持ちが込められている。気持ち+発想+技術。優れた技術を身につけるのは、自分が表現したいものを具体的に表す手段だから」

 忙しい仕事の合間を縫って、朝青活動に情熱を傾ける鄭さんの胸のうちには、「サマースクールに出会えなかったら、今でも朝鮮人として堂々と生きることができなかったかもしれない」という思いがある。

 「世の中には見えない差別がまだまだたくさんある。名前を隠したり、朝鮮人ということに引け目を感じること自体、見えない差別があることの現れ」

 広告デザイナーの仕事ではいつもほめられたり怒られたり。でも、サマースクールのチラシに限って言えば、みんながそれを素直に喜んでくれる。

 「サマースクールのチラシづくりは、僕にできるチョチョンサオプ(朝青活動)」。それは鄭さんにとって仕事の活力にもなっている。(金潤順記者)

※1982年生まれ。大阪府四条畷北高等学校、朝日コンピュータースクール・マルチメディアクリエイティブコース・デザイン科卒業。雑誌、新聞の折り込み広告、プロモーション企画ほか、サマースクール(大阪)ポスター・チラシ、朝青大阪50周年記念写真集表紙デザインなど担当。現在ディレクテッドバイデザイナー。

[朝鮮新報 2005.8.17]