松で船を作り 大同江に浮かべ 岸の柳に 固く固く結んであるのに どこからか声がする 沼に行こう、と
(クジ、生年没日不詳)
「柳」は情人のこと。「沼」は誘惑のたとえ。平壤の妓生。すでに、きれいな「柳」に真心を誓ったはずなのに、「悪い輩」が「沼」へと誘う。「大同江」と「沼」の対比が鮮やか。「声」は、他人のものとは限らない。誰もが、美しい「大同江」や「柳」に惹かれるとは限らない。人の心は複雑で、自分の心のありようを、すべて把握しているわけでもないので。(朴c愛、朝鮮大学校文学歴史学部非常勤講師)
[朝鮮新報 2005.8.10]