若きアーティストたち(28) |
ブライダルコーディネーター・李明淑さん 東京都北区のJR王子駅からほど近いところにブライダル・トータル・プロデュース「福音」はひっそりとたたずんでいる。店内には約200着の婚礼、パーティ衣装がかけられ、李明淑さん(34)が明るく出迎えてくれた。「福音」がオープンしたのは一昨年の10月。衣装の買い付けから招待状の作成、ポンチェ(結納)や結婚式のコーディネイト、余興・司会・カメラマンの手配、花嫁のヘア・メイクなど李さんがひとりで手がけている。 初級部の頃から朝鮮舞踊に親しみ、高級部のときには舞踊部内で小道具の管理を任されていたという李さんは、当時から舞踊で使う小道具の故障を針金やペンチ、ビニールテープなどを用いて器用に直していた。卒業後は朝青の専従活動家として日校生の世話役として汗を流した。「民族衣装を着た日校生たちの笑顔がまぶしくて。朝鮮舞踊を通じて民族の文化に触れ、朝鮮人としての自覚に目覚める彼らの役に立てて本当にうれしかった」。 そんな思いからか、専従活動を終えた後、李さんは同胞ブライダルショップや結婚式場などで働きながらさまざまな経験を積んでいった。昼間は店頭で接客をし、仕事を終えて夜間のヘア・メイク・スクールにもせっせと通った。 「接客をする上で知らないことが多かった。チョゴリについて、婚礼儀式について、もっと詳しく知りたかった」 何事も手探りで資料を探し、人を訪ね、知識を深めていった。 独立した現在では、お客さんのニーズに合わせてデザインも引き受けている。 「お客様の要望は千差万別。先日来店された花嫁さんは、とても可愛らしい印象の方で、『フワァッとした妖精のようなチョゴリが着たい』と注文された」 生地を選び、素材の性質を生かしたデザインを考えた。最近では「冬ソナ」ブームの影響もあり、日本人からの注文も結構ある。 手先の器用な李さんは、そうした要求に合わせて衣装をデザイン、発注の際に細かなイメージをうまく伝えられなかったことによるトラブルを避けるため、ブーケやチョットリ(冠)などは手作りで、衣装の細かな装飾なども直接針と糸を持ち手仕事で行っている。 なかでも生地選びには特に気を使う。「式場でのライトの当たり具合によって、見え方が全然違うから。都内某ホテルでは、同胞の結婚式を手がけた経験がなかったため、打ち合わせにずいぶん手間がかかった。結婚式はやり直しがきかないセレモニーだけに1回1回が真剣勝負。式場と照明に対する知識もプロなら持たなきゃ」。 店内には「南の生地に北で刺しゅうを入れた」という古典的な緑衣紅裳が飾られていた。李さんの夢は、「いずれはこの仕事をもってウリナラの人たちと深く関わりたい」ということ。仕事が重なるときは店に泊り込むほどの忙しさだが、「新郎・新婦に喜んでもらえると思うとやりがいを感じる」と笑顔で話した。TEL 03・3914・1002(金潤順記者) [朝鮮新報 2005.1.26] |