〈担当記者座談会 05年朝鮮半島情勢を振り返るA〉 6者会談 |
金融制裁解除が現在カギに 非核化へ大きな一歩 今年、朝鮮半島の核問題を話し合うための6者会談が13カ月ぶりに再開され、第4回会談第2ラウンド最終日の9月19日、共同声明が発表された。6者会談の動きと今後の見通しなどについて担当記者が話し合った。 A 6者会談の動きでは、第4回会談第2ラウンドで共同声明(別項骨子参照)が発表されたことが何よりも大きい。2003年8月に始まり2年あまりにわたって行われてきた朝鮮半島の核問題を話し合う会談も、う余曲折を経てようやく大きな一歩を踏み出した。 C 何と言っても、検証可能な方法で朝鮮半島の非核化を平和的に実現することを目標にすえたことが、共同声明の最も重要な部分だ。 B 核放棄という朝鮮側の任務だけがクローズアップされがちだが、共同声明では米国や他の参加国が行うべきことも明記されたことを忘れてはなるまい。 C 「公約対公約」「行動対行動」の原則がきちんと反映されているというわけだね。 B そのとおり。朝鮮側は核兵器と核計画の放棄、核拡散防止条約(NPT)への復帰、国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れを約束した。一方、米国は朝鮮半島に核兵器が存在しないこと、通常兵器で朝鮮を攻撃したり侵攻する意思がないことを明言した。 A 朝鮮に核の平和利用権があることを明記したのも大きい。朝鮮側の主張が受け入れられたわけだ。ただ、ここで問題は「先軽水炉提供後核放棄」か「先核放棄」かという、どっちが先かという論議だ。 B 朝鮮側は共同声明発表翌日の外務省談話を通じて自国の立場を表明した。「米国が軽水炉を提供したら、すぐにNPTに復帰しIAEAと査察協定を締結し履行する」というのがそれ。この文脈を読むかぎり、軽水炉提供と核放棄は限りなく同時行動に近い。 C 一方で米国は「朝鮮が核兵器と核計画をなくし、NPTに復帰しIAEAの査察を受け入れる時」(6者会談米国代表団団長のヒル国務次官補)を適切な時期とし、その時期に軽水炉提供を討議できるとしている。 A こう見ると朝米双方が正反対の主張をしているようにも思えるが。 B ただ共同声明は5項目で「合意事項を『公約対公約』『行動対行動』の原則に従って段階別に履行するための調和のとれた措置を取ることで合意した」と指摘している。細かいところは今後の会談で詰めていくということだろう。言い換えれば今後はロードマップ作成が主流になるということだ。 A だからこそ、11月に開かれた第5回会談が注目された。しかし、「金融制裁問題」が起きて様相が一変した。 C 「大量破壊兵器の拡散に関わった」として米財務省が朝鮮の貿易会社など8社を制裁すると発表し、「偽ドル流通」でマカオの中国系銀行が朝鮮との取引を中断した件だね。 B 第5回会談で朝鮮側はこの問題を取り上げ、金融制裁の解除を強く求めた。「制裁は共同声明の精神に反するだけでなく、われわれが共同声明の公約を履行できなくしている」(6者会談朝鮮側団長の金桂官外務次官)というのが朝鮮側の言い分だ。 A でも同会談では金融制裁問題を話し合う朝米会談の必要性が確認された。 B にもかかわらず米国は会談を回避。こうした状況では「6者会談再開は絶対に不可能」(労働新聞6日付論評)だというのが朝鮮側の現在の立場だ。 C 米国務省副スポークスマンは会談の来年1月開催で非公式に合意したとしているが、さてどうなるか。 A 朝・日政府間接触も11月3、4の両日に北京で行われた。昨年11月に平壌で行われた実務協議後、いわゆる「偽遺骨」問題で1年近くこう着状態が続いていた。だが、ここに至るまで第4回6者会談第1ランド終了後と第2ラウンドの最中に朝・日団長間接触があった。 C その際、日本側は拉致について正面から論議はせず、平壌宣言履行について言及した。1年ぶりに接触が実現したのは、日本側のこうした姿勢の転換にあったようだ。 B 接触では相当突っ込んだ意見交換が行われたらしい。日本側は拉致、核・ミサイル、過去の清算問題の「包括的な解決」を提案したとされる。 C 6者会談共同声明には、朝・日が「平壌宣言に従って不幸な過去と懸案の憂慮事項を解決する基礎のうえで、関係正常化のための措置を取ることにした」との下りがある。朝・日関係改善のカギを握るのが平壌宣言であることに変わりはない。(まとめ=文聖姫記者) 1、 朝鮮半島非核化が6者会談の目標 ・朝鮮は核兵器と核計画放棄。遠くない時期にNPTに復帰しIAEAの査察受入れ 2、朝米は互いの自主権を尊重し平和的に共存 ・朝・日は平壌宣言に従って不幸な過去と懸案事項を解決。そのうえで関係正常化のための措置を講じる 3、5カ国は朝鮮にエネルギーを提供する用意表明 ・韓国は200万キロワットの電力提供と関連した05年7月12日提案再確言 4、東北アジアで恒久的な平和と安定実現のため共同で努力 5、「公約対公約」「行動対行動」の原則に従って段階別に履行するための調和のとれた措置講じる [朝鮮新報 2005.12.16] |