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〈21世紀の反帝、自主に関する世界会議に参加して〉 理念の共通性に基づく国際連帯

 19世紀半ばのヨーロッパに共産主義という妖怪が徘徊しているとしたのは「共産党宣言」であったが、ベネズエラの首都カラカスで開催された「21世紀の反帝、自主に関する世界会議」に総連代表団として参加した第一印象は、21世紀のラテン・アメリカには自主という潮流が渦巻いているということだった。

ボリーバル革命とチュチェ思想

 1976年マダガスカルでの国際シンポジウム以降、数年ごとにチュチェ思想に関する世界的規模の討論会が開かれてきたが、今回の会議は、キューバとともにラテン・アメリカにおける自主をめざす運動の中心として、世界の注目を集めているベネズエラで開催されたこと自体に、その大きな特徴があった。

世界会議に参加した総連代表団(前列右端が筆者)

 19世紀はじめスペインによる植民地支配からの独立後、ベネズエラではほかの南米諸国と同様に米国の新植民地主義政策のもとで特権階層による寡頭支配が続いてきたが、1998年チャベス大統領の就任以降、独立の英雄シモン・ボリーバルの名にちなんだ革命が進行している。それまで「祝日」とされてきたコロンブスの「新大陸上陸」の日を「抵抗の日」として制定したことに象徴されるように、反帝自主の立場を鮮明にしながら、石油産業の国営化と土地、教育、医療などの制度改革が推し進められている。

 とくに最近は、真の自主独立が社会主義によってのみ達成されるとの結論から、「21世紀の新しい社会主義」というスローガンが登場し、「参与制民主主義」の導入や「生産協同組合」の設立も始まっている。この間、外部勢力の干渉とたび重なるクーデターのなかでも革命を前進させることのできた要因は、人民と軍隊の結合にあったという。

 会議では、外務省のウィリアム・イサラ副大臣からこのような一連の動きに関する解説があった。

 それによれば「ボリーバル革命」の理念は、シモン・ボリーバルの思想、イエス・キリストの思想、チェ・ゲバラの思想の3つにもとづいている。これは、ベネズエラの実情と広範な大衆の志向に応じて社会変革を推し進めるための現実的な理念を追求しているということを示している。副大臣は、ここには「自己の運命の主人は自分自身であり、自己の運命を決定する力も自分自身にある」というチュチェ思想の原理が適用されていると述べていたが、ボリーバル革命の理念は、その原理と方法においてチュチェ思想と一脈相通じており、それが、今回の世界会議がベネズエラで開催されることになった由縁でもある。

戦略的同盟関係構築に関心

 会議では各国代表の討論があったが、それらは概して自らの実践的課題をチュチェ思想にもとづいて考察し、その解決の方途を提示しようとするものだった。もちろん世界各地における自主性を実現するための課題は多岐にわたり、たとえば、旧ソ連、東欧諸国での社会主義の再建、ラテン・アメリカ同盟やEUなどアメリカの一極支配への対抗軸の構築、中東や東アジアにおけるアメリカの軍事的干渉の排除、アフリカ地域でのグローバル化に反対する自主的な国家建設などであった。

 しかしそこに共通するものは、自主性への強い志向と、その実現のためチュチェ思想と朝鮮の経験に学ぼうということであった。ここから社会主義建設路線と人間改造理論、現代帝国主義論と先軍思想、世界の自主化と国際関係の民主化論、主体性と民族性に関する理論などが主なテーマとなった。

 これは、自主性のための闘争における理念の共通性とチュチェ思想の普遍性を示すとともに、チュチェ思想の原理と方法を実践に適用しようとする最近の研究方向を反映している。

 会議は、自主理念の共通性にもとづいた国際連帯の場でもあった。ラテン・アメリカ諸国の代表は、朝鮮、ベネズエラ、キューバと連帯し、それぞれの国に自主的な政権を作り、地域に非米同盟を築くことを、ともに強く訴えていた。とくに主催国ベネズエラは、反帝自主をめざす戦略的同盟関係の構築に国家的な関心を向けていた。

 会議終了後、チャベス大統領は、朝鮮代表団団長の楊亨燮最高人民会議常任委員会副委員長と会見し、両国間の政治経済的協力関係の発展と、駐ベネズエラ朝鮮大使館の設置や大統領の近い将来の朝鮮訪問などについて協議したという。

 ベネズエラでは中国、パレスチナ、イラン、ベトナム、インド等の代表団の訪問や大使館の設置も準備されている。会議の初日、保守系新聞の1面に「チャベスはアメリカのもう一つの敵としっかりと手を握っている」というタイトルの記事が掲載されたが、これは自主をめざす国際連帯において今回の会議のもつ意義を物語っている。

総連活動への関心と支持

 総連を代表して徐忠彦・総連中央国際局長が、冷戦後の国際情勢の特徴と米国との政治軍事的対決のなかでの勝利を重ねてきた朝鮮人民の闘争について、チュチェ思想を指針として半世紀にわたる民族愛国運動を繰り広げてきた総連の経験と今後の課題について討論したが、われわれの活動への関心と支持は予想以上に高かった。

 とくに感じたことは、ラテン・アメリカの人たちが自らの経験と重ね合わせて、在日朝鮮人運動を反帝闘争としてとらえ強い共感を抱いていたことだ。すなわち、帝国主義植民地支配の所産である在日朝鮮人が、旧宗主国であり現在もアメリカ帝国主義に追従している日本で、チュチェ思想を具現し主体性と民族性を固守していること自体が、反帝闘争そのものだということである。「拉致問題」と関連した弾圧や「万景峰92」号の入港問題について質問し私たちを激励する参加者までいたのには驚いた。司会者も、総連は資本主義国でチュチェ思想を実践する模範を示していると紹介してくれたが、地球の裏側で在日朝鮮人運動の原点と総連活動の正当性を再確認することができた。

 自主の潮流が渦巻くベネズエラの地に世界40数カ国のチュチェ思想研究者が集い、それぞれの実践的要求から出発した共通のテーマを共通の理念にもとづいて論じ合った今回の会議は、自主性のための研究と実践における国際連帯を全世界に広げていく一大契機となった。

 エクアドルで最高裁判所長官や法務大臣を歴任したミルトン・ブルバーノ氏の次のような討論が、会議の雰囲気を端的に表現している。

 「今日の世界には3人の英雄がいる。それは、アジアで反帝自主を徹底しながらチュチェ思想にもとづいた社会主義を建設している朝鮮の金正日総書記、カリブの地でアメリカに正面から立ち向かいながら社会主義を固守しているキューバのフィデル・カストロ議長、ボリーバル革命の旗の下に21世紀の新しい社会主義を志向しているベネズエラのウーゴ・チャベス大統領である。この3カ国は、自主的な世界、平和で公正な世界を建設するための闘争の先頭に立っており、世界のすべての人民は、これを模範としなければならない」(韓東成、朝鮮大学校政治経済学部助教授、チュチェ思想国際研究所理事)

[朝鮮新報 2005.10.23]