東京高裁、康元局長に懲役6年 刑事裁判の大原則否定 |
東京高等裁判所は6日、康永官総聯中央元財政局長に対する「業務上横領事件」に関して、控訴を棄却し1審と同じく懲役6年の実刑判決を言い渡した。検察当局は2001年11月、朝銀東京信用組合本店営業部に開設された仮名口座預金に係わる「業務上横領容疑」で康元局長を逮捕した。しかし、この間の公判で、この仮名口座は当時の朝銀東京側が開設、管理していたもので、康元局長は当初から口座の存在すら知らなかったことが明らかになっている。東京高裁の不当判決に抗議して同日、東京都千代田区の日本教育会館では総聯活動家、在日同胞ら350余人が集い糾弾集会と弁護団報告会を開いた。判決公判直後には、弁護団が記者会見し、東京地裁前で緊急集会が開かれた。一方、弁護団は即日、最高裁に上告した。 「根拠のない政治的な判決」
糾弾集会に続いて開かれた弁護団報告会ではまず、主任弁護人の吉峯啓晴弁護士が報告した。 吉峯弁護士は、東京高裁が1審の不当判決を追認する判決を下したことに強い憤りを示しながら、「根拠のない極めて政治的な判決」だと断じた。検察あるいは警視庁は、朝鮮の大使館的役割を果たしている総聯中央会館に踏み込んだだけに、何としても起訴しなければならないため、「密室」で行われた捜査段階での虚偽の証言に基づき康氏を起訴した。 だが、公判過程で証人は次々と捜査段階の供述を訂正した。にもかかわらず、東京高裁の判決は、この公判供述が信用性に乏しいと主張した。その根拠として、「総聯の最高幹部である被告人や傍聴する総聯関係者を前にして、被告人に不利益となる事実を述べることは心理的に容易でない」などとしている。 吉峯弁護士はこの点について、「裁判官の面前での証言は最も信ぴょう性がある」「公開の場で本当のことを言えないなら裁判など必要なくなる」として、これは刑事裁判の大原則を否定するものだと述べた。 今回の判決は、憲法や刑事訴訟法に基づく証拠裁判主義、適正手続きの保証を放棄してしまうものであり、また6年というたいへん重い罪を科すなど、どの見地からも不当な裁判だと吉峯氏は結論付けた。 21回にわたって保釈請求棄却
「この場に康さんをお連れすることができなかったのは返す返すも残念」−古川健三弁護士はこう切り出した。 数日前、康氏と面会した際、在日同胞たちに託すメッセージを預かったが、意気軒昂であったという。 判決後に面会すると、すぐに上告を願い出たという。「最善を尽くしたい」と古川弁護士は語った。 金舜植弁護士は、弁護士になり立ての頃からこの事件に関わってきた。「研修所で教わってきたこととは真っ向から反する事実認定」と憤りを隠さなかった。 21回にわたって保釈請求を出したにもかかわらず、これが認められない点についても触れた。「逃亡の恐れ」「証拠隠滅」というが、右ひざの関節が曲げられず車椅子での生活を余儀なくされている人がどうやって逃げるのか、すでに検察側が調書をとっているのにどうやって証拠を隠滅するのか、などと指摘。保釈を許さない理由は絶対にありえないと主張した。 報告会に先立ち開かれた糾弾集会では、総聯中央の高徳羽副議長兼同胞生活局長が報告。康氏のメッセージが紹介され、アピールが採択された。(文聖姫記者) [朝鮮新報 2005.10.11] |