信頼回復の第一歩に |
戦後60年が経った今も、日本の植民地統治と侵略戦争が生んだ多くの問題が未解決のままだ。それは日本の犯罪行為が明確に処罰されなかったからだ。 たとえばナチ・ドイツが行った強制連行、強制労働の責任者は国際軍事裁判で厳しく罰せられたが、日本の岸商工大臣は、後に首相になった。 次に、日本は朝鮮の分断を巧妙に利用して、南とだけ国交を結び、その過程で過去の犯罪の多くを隠ぺいし、責任を逃れてきた。今では拉致問題を口実に過去の責任から逃れようとしている。 そういった意味では、朝鮮は民族の尊厳をまだ完全に回復できていないと言える。この結果として、歴史教科書の問題、独島の問題など山積しており、その典型が犠牲者の遺骨問題だ。 過去の加害行為に対する日本政府の立場が今、問われている。遺骨問題は、賠償、補償以前の人道上の問題だ。 遺族に連絡し、遺骨を返還するのは当然のことであるが、連絡すらなされず、「ゴミ」のように扱われている。数十体の遺骨が一つの骨箱や白い米袋に「合葬」され、粉砕され、放置されている。 一方で北南朝鮮の数十万人の遺族は、60年間もその消息を探している。ある女性は夫の帰還を待ち望み、「父を捜せ」と息子に言い残し亡くなった。「恨」は若い世代に引き継がれている。 日本政府が、戦後60年を経て、さる6月にこの問題の調査を行うとしたことは、ある程度評価できるが、調査を行ったという既成事実を作るため、後々の言い訳のためのものであってはならない。 日本政府は、まず自らが所有している、数万人とも言われている犠牲者の名簿、統計などの資料を全て公開するとともに、遺族の証言を聞きその苦痛を知るべきだ。次に、従来この問題は厚労省の一部局が「ひっそり」と対応してきたが、記者会見を行い新聞等に情報を求めるとの広告も出し、市民に事実を知らせ協力を呼びかけるべきだ。そのような対応が北南朝鮮との信頼回復に、歴史の共有につながる第一歩となるであろう。 日本とアジアの国の関係が膠着状態にあり、歴史認識問題などで今も隔たりがある。朝・日関係も進展があまりないが、こういった時期だけにわれわれも声を上げて問題提起していかなければならない。なぜなら、それが真の友好親善につながり、国交の正常化に結びつくからだ。(洪祥進、朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側中央本部事務局長 [朝鮮新報 2005.8.23] |