国連人権委特別報告官 人権協会、NGOと懇談 |
朝鮮学校に対する差別など報告 京都朝鮮中高級学校やウトロ地域を視察した「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容の現代的形態に関する特別報告官」のドゥドゥ・ディエン氏は6、7日の両日、東京都内で在日本朝鮮人人権協会とNGOの代表らと面会し、日本における差別や人権侵害の状況について聞き取りを行った。 嫌がらせに対策を 人権協会の代表は、朝鮮半島と日本との間の政治・社会情勢に連動する形で朝鮮学校の子どもたちへの暴言、暴行事件が繰り返し起こっていること、またその嫌がらせの加害者が低年齢化し小学生の被害者が増えていること、電子メールやウェブ上で朝鮮学校の卒業生らを誹謗中傷する書き込みがあることなどの事例を提示。差別感情が再生産され嫌がらせが繰り返し発生するのは、日本政府が人権教育や啓発活動をおざなりにし、差別撤廃のための積極的な措置を講じてこなかったためだと強調した。 さらに、数々の国際人権条約審議委員会が日本政府に対し朝鮮学校などの処遇改善を求めているにもかかわらず、いまだに国庫からの助成金は支給されていないとし、寄付金に対する税制上の優遇措置を欧米系のインターナショナルスクールのみに適用し、朝鮮学校などの民族学校を排除するのは、明らかな民族差別であると指摘した。 日本弁護士連合会人権擁護委員会所属の弁護士代表らは、東京弁護士会が作成し東京都内を中心に駅構内や電車内で掲示した、嫌がらせ防止のためのポスターを提示しながら、在日同胞の子どもたちに対する嫌がらせの事例について情報提供した。弁護士らは、日本において人種差別や外国人排斥を罰する法制度が存在しないことを指摘し、法整備の必要性を強調した。 「枝川裁判」支援連絡会のメンバーたちは、日本政府によって戦後一貫して差別的に扱われ、国際人権規約などで保障されている民族的少数者の教育の権利を否定され続けながらも在日同胞によって守られてきた朝鮮学校を、東京都がとりあげようとしている現状について報告した。 「文化守ってきた」 NGOからの情報提供を受けたディエン特別報告官は、「現地に行き関係者の声を直接聞いたことで在日朝鮮人に対する差別事例などを具体的に知ることができ、有意義だった」「在日朝鮮人たちはこれまで差別に負けず朝鮮学校を守り、私たちの『目に見える』朝鮮舞踊や民族楽器などの文化を守ってきた」「今後、子どもたちが『目に見えない民族性』を育んでいくためには日本社会の支援も必要となってくる」と述べた。 また、人種差別や民族差別を禁止する法律の整備が必要だとし、法的な側面から差別事例に関して分析することが重要だと述べた。さらに、人権教育、啓発活動などの取り組みを政府主導のもとで行わなければならないと話した。 歴史教科書において過去の問題をどう扱うかによって特定の民族、人種に対する偏見が助長されることもあると指摘しながら、法整備も重要であり、文化を守ることも重要であり、それらと同じように記憶を次世代に継承することも重要であると強調した。そのうえで、日本において健全な歴史の書き直しが必要とされているのではないかと述べた。 勧告含む報告書を ディエン特別報告官は今回の公式訪問の調査結果を、国連人権委員会に対する「国別報告書」として日本政府に向けた勧告を含む形で提出する。その勧告が日本政府によって履行されない場合は、その旨が特別報告官によって提出される年次報告書に2年間にわたり記載されることになる。 報告書において今回の公式訪問の調査結果をもとに日本における在日朝鮮人に対する差別の実状が明らかにされ、在日同胞の子どもたちに対する嫌がらせ根絶や日本政府による朝鮮学校に対する差別的処遇の改善などが勧告されることが期待される。(宋恵淑、人権協会) [朝鮮新報 2005.7.19] |