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国連人権委特別報告官 京都中高、ウトロ地区で現地調査

 人権問題に関する現地視察のため訪日中の国連人権委員会「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容の現代的形態に関する特別報告官」のドゥドゥ・ディエン氏が5日、京都朝鮮中高級学校(京都府京都市)とウトロ地区(京都府宇治市)を訪問し、朝鮮学校と民族教育に対する差別とウトロ地区住民の人権侵害などについて、関係者の聞き取り調査を行った。国連人権委関係者の京都訪問は今回が初めてで、今調査は国連人権委員会に提出される報告書作成において考慮される。

差別是正、協力要請

京都中高で授業を参観するディエン氏ら

 京都中高では、同校の金允善校長、総聯京都府本部の琴基都副委員長兼国際部長、李宗一教育部長、京都民族教育対策委員会事務局の柴松枝氏、留学同京都の金範重委員長が生徒、教職員らとともに出迎えた。ディエン氏は、同校の授業を参観し、生徒らによる民族楽器演奏や朝鮮の歌と踊りを観覧したあと、関係者から聞き取りを行った。

 金允善校長は、在日同胞子女たちを立派な朝鮮人に、国際的に活躍できる人材に育てることが朝鮮学校の教育目標だと強調。「朝鮮学校は、国庫の公的補助がないため、父母たちの教育費の負担が大きく、厳しい学校運営を迫られている」と述べた。

 柴松枝氏は「朝鮮学校は同胞、支持者たちの寄付金が大きな財源となっているが、日本学校と違い税制上、控除対象とされていない」と述べた。

 そして学校側は、日本政府が朝鮮学校を正規の学校と認め、日本学校と同等の補助金を支給し、在日コリアンに対する暴力事件が起きたとき、直ちに対策を講じ、人種差別を処罰する法を制定するよう国連側で働きかけてほしいと訴えた。

 ディエン氏は「アイデンティティーを守る教育は大切だ。コリアンのバイタリティーを強く感じた。コリアンが抱える大きな困難について報告書で言及し、日本政府関係者にも伝える」と述べた。

「離れて暮らせない」

ウトロ住民から話を聞くディエン氏(左)

 ウトロ地区(宇治市伊勢田町)では、総聯南山城支部の金善則顧問をはじめとする同胞住民と、ウトロを守る会の田川明子代表などの支援者らが出迎えた。ウトロ町内会の厳明夫副会長らがウトロ問題の経緯について説明しながら、強制退去の危機にある町内を案内した。その後、ディエン氏は住民らに対する聞き取りを行った。

 ウトロ地区はかつて日本の植民地時代、軍用飛行場建設などの国策に従事させられた朝鮮人の飯場や住宅があった場所だ。戦後、日本政府は何ら補償もしないまま同地区住民らを放置。今も当時の木造住宅が残っており、くみ取り式の便所を利用している家庭もある。

 同地区に水道が敷設されたのは1988年、生活排水も川に直接、流されている。また、約20世帯は今も井戸水のみで生活している。

 一方、同地区では近年、住民の高齢化が顕著になっているにもかかわらず、生活保護や年金受給率はきわめて低く、住民は困難な生活を強いられている。

 土地の所有権問題に関する裁判では、2000年に住民側が全面敗訴の判決を受け、強制執行の不安をかかえたまま生活している。

 ディエン氏は、側溝が整備されず異臭を放ち、少しの雨でも浸水するなど劣悪な生活環境を目の当たりにし、首を横に振り声を詰まらせていた。その後、総聯南山城支部会館内で住民の話を聞いた。

 同胞住民らは「主人を亡くし苦労したが、ウトロの人たちが良くしてくれたこともあり、この地に愛着があるので、ここを離れては住めない」などと訴えた。

 ディエン氏は「日本のような近代的な国で(ウトロ問題が)起きているのが残念。私の報告が有益なものになればいい」と述べた。

 一方、ディエン氏は、同胞無年金高齢者・障害者問題についての聞き取りも行った。(李泰鎬記者)

[朝鮮新報 2005.7.9]