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〈月間メディア批評−下−〉 月刊誌「WILL」 写真を無断転用

結論にならない

 6月11日の朝日新聞に次のような記事が掲載された。

 「ワック・マガジンズ発行の月刊誌『WILL』7月号で、4人の大学教授の写真がインターネットから無断で転用されていたことが分かった。同編集部は著作権侵害があった、として次号におわびを掲載する。使われたのは、特集記事に掲載された同志社大学の浅野健一教授らの写真。編集部員が沖縄タイムスなどのインターネット上の記事から使ったという。浅野教授の指摘で判明した」

 問題になったのは「WILL」7月号の「さらば、自虐史観! 左巻き学者・文化人反日売国のブーメラン」という記事で、筆者は安田隆之氏(ジャーナリスト)。

 「吉田康彦の醜態」という小見出しのあと、こう書いている。

 「北朝鮮べったりの背信的悪意の確信犯として挙げなければならないのが、同志社大学教授の浅野健一と大阪経済法科大学の吉田康彦である。…

 吉田康彦に代わって、北朝鮮の代弁人としてすっかりその地位を確立したのが、同志社大学教授の浅野健一である。浅野健一は朝鮮新報で、『月刊メディア批評』というコラムを毎月連載しているが、その中で、たとえばこんなことを言っているのである(2003年8月8日)。

拉致を正当化?

  『日本は一貫して、一九一〇年の『日韓併合』は合法的だったと主張しているから、八・十五以後、戦後処理を済ませていない朝鮮は今も植民地状態ということになる』

 『朝鮮は今も植民地状態』。妄言と言ってしまえばそれまでだが、浅野健一が導き出したい結論は、つまり、こういうことなのだ。『北朝鮮は日本との抗日戦争の真っ只中にあるのだから、日本の拉致は許される』と。

 実際、浅野健一は、こんなふうに述べて、北朝鮮の拉致を正当化する。

 『日本の支配層も、朝鮮が日本人を拉致したことについて、ある種の『半植民地』ゲリラ闘争だと考えている。小泉首相らが歴史的な日朝首脳会談で訪問したピョンヤンに一泊もせず、十一時間でとんぼ返りしたのは、朝鮮が法的には今も日本の植民地支配下にあることを熟知しているからにほかならない』

 それにしても吉田といい、浅野といい北朝鮮系メディアによく書いているのはなぜか。よほど原稿料がいいのだろう。…(文中敬称略 写真提供/共同通信社)」

 筆者の安田氏は「巨大米系企業の走狗として勤務のかたわら積極的に発言を続ける」と記事の末尾に紹介されている。

 本紙の原稿料は相当低い。「文藝春秋」などの原稿料に比べようもない。私は原稿料が高いところに書くという姿勢と無縁だ。

 安田氏が引用した私の文章を読んでも、「日本の拉致は許される」いう結論にはならないはずだ。なぜ不幸な事件が起きたのかの原因を深く考えなければならないと私は言っているのだ。

「売れればいい」 

 私の次に「北朝鮮を擁護する言論人」として、「在日朝鮮人の東京大学教授の姜尚中がいる」と書いているが、姜尚中教授の顔写真もネットからの盗用である。

 吉田康彦氏の写真もWEBから盗んだ。私の友人がGOOGLEの画像検索で、3人の名前を入れると、アタマのほうに同誌に使われた3点の写真がヒットしたという。

 また、写真家の佐々木芳郎氏からの連絡では、花田氏(「WILL」編集長)が先頃まで所属していた宣伝会議社の「編集会議」編集長時代に佐々木氏の作品である写真を無断使用しており、提訴に踏み切り、1審勝訴したという。現在、控訴審が行われている。

 佐々木氏は「花田氏は常習的にそういうことを行って、あとから謝ればいい、それまでに本が売れればいいと考えている。編集部員のせいにしているが、まちがいなく彼が許可している」と述べた。

 私は同誌に記事の内容に事実誤認があると抗議した。

 花田氏はすぐに電話で謝罪してきた。また、花田氏は沖縄タイムスの編集局長にも謝罪し、同誌8月号に「おわび」を掲載すると連絡してきたという。しかし、8月号には何も出ていなかった。(浅野健一、同志社大学教授)

[朝鮮新報 2005.7.2]