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〈東京・祐天寺 遺骨名簿調査報告書-A-〉 ニセの遺骨箱まで作り

 (キム・ムギ氏の話の続き)

 解放後、父と一緒に連行され、九死に一生を得た同僚たちから父が日帝によって無残に殺されたとの悲報に接した母は、その場で気を失って倒れ、その翌年死亡した。その後、私たちは父の法事を遺骨もないまま行ってきた」と述べた。

 犠牲者キム・ギルスンの弟キム・ギルリョン氏は「当時私の家は9人の大家族であった。生活は苦しかったが、父は兄のキム・ギルスンだけでも勉強させようと小学校に通わせた。ところが、私が8歳になる年の1943年に普天郡新興里山林組合長は、『徴兵』された自分の甥の代わりに小学校の卒業学年で勉強していた兄を『徴兵』に送った。その後、兄からは何の便りもなかったが1945年に日本の警察が兄の遺骨だと言って箱を私たちに渡した。東京の祐天寺に兄の遺骨がもう1柱あるというが、一体どうなっているのか分からない」と言った。

 すでに発掘されたキム・ギルスンの名前が入っているもう一つの朝鮮人強制連行犠牲者名簿の死亡原因欄には、彼が1945年2月25日、日本の横浜市戸塚区でジフテリアによって死亡したと記入されている。

 このような証言資料は、過去、日帝に強制連行された家族、親戚の生死も確かめられずに60余年間を送ってきた遺族の精神的苦痛がどれほど大きなものであり、朝鮮人強制連行犠牲者遺骨問題をめぐる日本当局の非人道的な行為こそ罪悪に新たな罪を上塗りする犯罪行為であることを物語っている。

確認された幾つかの問題

 祐天寺にある朝鮮人強制連行犠牲者遺骨名簿によって確認された、犠牲者に対する追跡調査とその遺族の証言聴取、日本の厚生労働省を通じて了解した犠牲者関連資料を通じて次のような幾つかの事実が確認された。

 第1に、日本各地の寺院にある朝鮮人強制連行犠牲者遺骨の保管、取り扱いの状態が確認された。

 祐天寺には、8段からなる納骨堂に朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨箱が置かれているが、一つの段に10の遺骨箱がある。朝鮮人強制連行犠牲者遺骨名簿にある1135人の遺骨が80の遺骨箱に入っていると想定すれば、一つの遺骨箱に14.2人分の遺骨が入っていることになる。これは、犠牲者の遺骨がすでに入り混じっていることを意味する。

 一般的に遺骨をまぜるのは、特殊な事情がある場合にのみ遺族の承諾を受けて行う最終的な安置法と見なされている。遺骨は、ある人間の痕跡を維持し、その人が属していた家庭の血統がつなぐ人間生活の普遍の遺産であるだけに、歳月が流れ、安置する場所が制限されたとしてまた、遺族を捜せないとして勝手に処理する性格の問題ではない。

 次に、日本の寺院に放置されている朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨箱に犠牲者の骨の代わりにさまざまなごみが入っていることが少なくないということが確認された。

 祐天寺にある犠牲者キム・リョンギュンの遺骨箱だけを見ても、そこには彼の骨ではなく、ボール箱のくずが入っており、本願寺別院にある朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨箱にも犠牲者の骨の代わりに紙を燃やした灰や石ころ、タバコの吸い殻などが入っているものが少なくなかった。このような事実から、日本の他の寺院に放置されている朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨箱の全般的実態を察するに難くない。

 諸般の事実は、旧日本の政府と軍部が企業と結託して戦後処理問題をうやむやにしようとする下心から敗北直前、侵略戦場に軍奴隷、労働奴隷に駆り出されて犠牲になった朝鮮人強制連行者の遺骨を収集せずに捨て、ニセの遺骨箱をつくってそこに骨の代わりに他の物をあれこれ入れたということを示している。

 第2に、朝鮮出身の朝鮮人強制連行犠牲者の位牌が「靖国神社」にあるという驚くべき事実が初めて露になったことである。

 昨年末、当委員会では祐天寺の朝鮮人強制連行犠牲者遺骨名簿に載っているキム・リョンギュンの遺族を探し出し、朝鮮人強制連行真相調査団を通じて日本の厚生労働省に彼の関連資料を公開することを強く求めた。

 関係者の積極的な活動によって、厚生労働省では昨年11月に犠牲者キム・リョンギュンの資料=旧日本軍在籍の朝鮮出身者死亡者連名簿(旧海軍)=を公開せざるを得なかった。

 日本政府の公的文書と言える「連名簿」の遺骨欄には彼の遺骨はないと表記されており、1959年10月17日に彼の位牌を「靖国神社」に持って行ったと記録されていた。

 このように、日本政府は朝鮮人強制連行犠牲者に関する具体的な名簿と資料を持っていながらも、戦後60年を迎えるこんにちまで朝鮮の遺族には亡父の遺骨存在有無すら通知せず、ボール箱のくずを入れたニセ遺骨箱まで作ったのである。

 それにとどまらず、東条英機をはじめA級戦犯の位牌があり、日本軍国主義の象徴となっている「靖国神社」に朝鮮人強制連行犠牲者の位牌を持ち込んで、彼らの人権と尊厳を踏みにじる二重三重の罪を犯した。(つづく)

[朝鮮新報 2005.6.9]