国連人権委員会に参加して 注目された日本の過去清算 |
3月末からジュネーブで行われていた国連人権委員会に朝鮮人強制連行真相調査団、人権協会、青商会、朝青、留学同の代表が参加した。戦後60年を迎える年に、日本の教科書問題、独島領有権問題が大きくクローズアップされたこともあり、会議で最も注目されたのは日本の過去の清算に関する論議だった。 日本への非難集中 今回の会議前半、朝鮮政府がすでに教科書と独島問題を提起したことから、日本政府との大論戦が展開されていた。 5日、日本で「慰安婦」問題を削除した教科書が検定を通過したとの報道が伝わる中、日本軍「慰安婦」問題の論議が始まった。 北南朝鮮両政府は「日本は、戦時の強姦は戦争犯罪ではないとしながら、絶対多数の被害者たちが反対する『民間基金』を通し国家的責任を回避しようとした」「まさにお金で犯罪をもみ消そうと考えているのが日本の本心」といった非難とともに、「教科書から慰安婦犯罪のような蛮行が削除、わい曲され、むしろ戦犯者が英雄として賛美されている」との批判が相次いだ。 政府発言に続きNGO発言となったが北南朝鮮、日本、イギリス、スイス、米国などのNGOが次から次へと発言し、会場は日本非難一色と化した。「慰安婦」問題を「国際司法裁判所」で解決すべきとの調査団の新たな提案は、スイスの新聞にも紹介された。 この様子を取材した「連合ニュース」は「人権委員会教科書攻防」「日本、UN人権委で集中乱打浴びる」(6日、8日)と報道した。しかし、残念ながら、日本のマスコミは自国の問題がこれだけ論議されているにもかかわらず、全く報道しないばかりか、政府とNGOの支持発言すら満足になされなかった朝鮮の人権問題に関する報道だけを日本に流した。 人権条約遵守せず 今会議でもう一つ注目されたのが、強制連行被害者の「遺骨」問題である。戦後、60年を経たにもかかわらず、日本国内には数万人とも言われる犠牲者の遺骨がゴミのように扱われている現状を会議で初めて報告(国平寺.尹碧巖住職)。さらに国際赤十字を訪問し、情報提供と調査協力を要請した(総聯中央の高徳羽副議長、調査団の空野佳弘・日本人側事務局長)。 このような事実に対し、「知らなかった」「法的責任以前の初歩的な人道問題」という感想とともに、「これで安保理常任理事国とはとんでもない」との怒りまで聞かれた。 また、青商会は民族教育権問題に関して人権委員会で発言。各国政府及び人権NGO団体を招待しフォーラムを開いた。 戦争、占領、植民地統治被害者の被害回復問題が問われているにもかかわらず、被害者のみならずその子孫まで差別し、近年その差別が加速されているとの情報に、参加者は一様に驚きを隠さず、「私たちが協力できることを知りたい」との質問が相次いだ。 常任理入り資格なし 今回の活動を通して、過去の加害責任を果たすべきとの国連人権委員会、人権小委員会、作業部会、ILO(国際労働機関)などの度重なる報告と決議を日本政府がすべて否定している結果、さらに重大な問題が発生していることが明らかになった。1996年の人権委員会の報告書以降、教科書に日本軍「慰安婦」問題が記載されるようになったが、今回の検定結果、ほとんどの教科書から削除された。そればかりか、全く反対の教科書まで検定を通過した。 NHKの日本軍「慰安婦」特集が大幅に削除された問題、拉致問題と「慰安婦」削除だけを叫ぶ一部政治家の問題も報告された。このことから、日本は拉致問題を巧妙に利用し、過去の責任回避を図っているとの姿勢がクローズアップされてきた。当然の結果であるが、日本の国連安保理常任理事国入りに反対する政府とNGOの発言が相次いだ。しかし、賛成する発言は全く聞かれなかった。 若い世代に期待 今回の会議に参加して、日本の過去清算の問題が、十数年間にわたって数十回の会議で継続的に問われていることを確認したが、これは国連人権委員会始まって以来、長期的、大々的に扱われた単一議題としてワースト記録を更新していた。 また、総聯代表団は日本政府が朝鮮学校への差別的な処遇を改善せよとの国連の条約委員会の「勧告」を反故にし、人道的な赤十字協定から始まり今日に引き継がれている「万景峰」号入港に対する不当な扱いに至るまで包括的に問題を提起し、支持を得た。 今回の参加者は、在日の20代、30代を中心に構成された若い世代である。この世代が、現在の在日の状況を、歴史的経緯と国際的には「人権後進国日本」と非難されているのを目の当たりにして、代を次いで運動を展開するとの決意を新たにしたことは、今後の運動に大きな展望と期待を与えるものだ。 今年は祖国解放60周年とともに日本の過去の清算、独島問題、教科書問題、現在の在日の処遇等の根源とも言える「1905年条約」(乙巳5条約)100年の年である。国際的に最も権威ある国連条約法委員会は、この「乙巳5条約」が当初から「無効」との見解を示している。 これらの問題点を日本国内に知らせ、新たな運動を展開する時期にきたと、国連人権委員会に参加して確信した。(洪祥進、朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側事務局長) [朝鮮新報 2005.4.27] |