東京 民族教育実践交流セミナー 長期的な財政作りへ公的補助の獲得拡大を |
各地の経験共有、方法論探る 民族教育の権利保障のための実践交流セミナーパート2「一緒に考えよう! もっともらえる朝鮮学校の公的補助−地域運動から国連活動まで−」が16日、朝鮮商工会館(東京・上野)で行われ約100人が参加した。在日本朝鮮人東京人権協会と東京の民族教育対策委、教育会などが主催した今回のセミナーは、教育補助金をテーマに各地での経験を共有し、方法論を得るために企画された。人権協会常任理事の洪祥進氏が朝鮮学校に対する公的補助の現状とその課題について基調報告したあと、各地の経験が報告された。 総合的な運動として
基調報告で洪氏は学校の財政について、これまではバザーなどの臨時収入で賄うことが多かったが、これからは長期的な財政作りに取り組むべきだと提起しながら、そのなかでも公的補助獲得の運動は、これからさらに拡大していくべきものだと指摘した。 また、補助金の獲得はこれまで行ってきた運動と別の問題ではなく、JR定期券差別是正や高・中体連加盟、大検や国立大学受験資格などのわかりやすい問題から拡大したものとして、朝鮮学校をめぐるすべての運動を総合したものとして行うべきだと指摘した。 一方で、朝鮮学校に通う生徒やその父母は「外国人」であるとの認識に立って、国際法に基づいた活動が不可欠であると指摘。国際人権規約や子どもの権利条約、人種差別撤廃条約をはじめとする国際条約、国連人権委員会の報告書や勧告などを有効的に活用し、いかに日本国内で効力を持たせるかが重要だと述べた。さらには、朝・日の国交正常化も大きなポイントになると語った。 地域の人との交流を
各地の経験報告では、補助金問題解決に向けたさまざまな経験や教訓が報告された。 まず、鴻巣市の補助金廃止の撤回をはじめとする埼玉での取り組みについて、女性同盟埼玉県本部の金栄淑副委員長が報告した。鴻巣市の補助金廃止案は、それを知ってからすぐに反対行動を起こしたところ、12日目に廃案になったという。金副委員長は、「補助金廃止は偶然起こったものではない。権利は一度勝ち取ったからといって安心できるものではなく、つねにその権利を維持するための運動を行うべき」との教訓を得たと語った。 千葉県青商会の李福学幹事長は、今回、スイス・ジュネーブの国連人権委員会に参加したことと、同会が学校支援のために独自に行っている活動について話した。李幹事長は、結集した力とネットワークによって、一体化した運動を展開していこうと提案した。 つづいて、東京・国立市の補助金廃止決定の撤回とその後の運動について、「朝鮮学校に教育保障を! オッケトンムの会」会員の韓英淑さんが発言した。同会は補助金廃止撤回を求める過程で出会った人々が、現状を変え日本人と朝鮮人がともに生きていける社会をつくる目的で立ち上げられた。国立市側は、保護者から増額の要求がないことを口実に必要ないものではないのか、と主張したという。韓さんは「市の職員も毎年変わる。毎年朝鮮学校の説明をしに行く、増額を求めるなど、継続的に行動すべき」だと身に染みて感じたそうだ。 「兵庫県外国人学校協議会」の活動について報告したのは同協議会事務局長である朴成必さん。95年の阪神大震災後に結成された協議会には、兵庫朝鮮学園をはじめ、7校が会員として名を連ねる。協議会の結成後、補助金や処遇改善について、これまで朝鮮学校が単独で行ってきたときに比べ、行政の対応が確実に変わったという。その結果、助成金は10年連続で増額、兵庫県で4倍増額された。 最後に、東京朝鮮第9初級学校を地域の学校として根付かせるための活動について、昨年度オモニ会副会長の辺貞姫さんが報告した。辺さんは、住民は地域の一員として生徒たちの安全や健やかな成長を願っており、生活者の立場でともに朝鮮学校を支えてくれる存在だと話す。そのためには地域の人たちや、学校同士の交流が必要だと強調した。 継続した権利維持へ セミナーでは、江口済三郎中野区議、斉藤ゆうこ荒川区議があいさつした。江口議員は、この問題を解決するには、議員とのかかわり、地道な活動が必要だと語った。斉藤議員は、枠を取り払っていろんな人と付き合うこと、また、知恵のある交渉を行うべきだと語った。 今回のセミナーでは、世論喚起と市民、行政、議員らとのつながりを深めることなどが一貫して強調された。 発言者たちは、教育担当部署との地道な活動や議員との関わりをもつこと、地域の住民に朝鮮学校の存在をアピールすること、学校同士が連けいを持つことが行政を動かすと、口々に話していた。(安愛麗記者) [朝鮮新報 2005.4.21] |