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季刊「前夜」創刊から3カ月 「反戦、反差別」「反植民地主義」掲げ

 右傾化というよりも、戦争勢力が占拠した観のある日本の言論の一角に、「反戦、反差別」、「反植民地主義」を掲げて季刊雑誌「前夜」が創刊されて3カ月が過ぎた。予想を上回る反響が続き、五刷の増刷を重ね、発行部数は1万冊に届く勢いである。

 今年1月1日に刊行された第2号の特集「反植民地主義」は出色の出来栄えとなった。「韓国」の歴史家で今最も注目を集める知識人の一人、韓洪九氏(45)の「苦痛の連帯を求めて−新しい平和運動の思想と歴史学」は、南における和解と統一へのダイナミックな動きを支える骨太の思想が脈打ち、深い感動を呼び起こす。

季刊「前夜」の創刊記念トークショー

 韓氏は朝鮮半島の分断と米軍占領によって生じた根深い軍事主義と親日問題の解決を強く主張しながら、次のように指摘する。

 「本当に重要なこと、真相を究明し、再発を防止しなければならないことは、親日派たちが解放後に執権を握ったことであり、そのあとに自らの恥ずべき過去を隠すために何をしたかということです。反民特委(反民族行為特別調査委員会)の破壊から民間人虐殺に至るまで、その過程は私たちが絶対に許してはならない、処罰しなければならないものです」

 韓氏はかつて南で失敗し、挫折した親日派や親日行為の清算について、「いま軍事独裁体制をしっかり清算することを通して、あの時にできなかった親日派清算を行う」としながら、親日派が自らの罪を認め、反省し、謝罪するならば、その時はできる限り寛容であるべきだと述べ、「朝鮮民主主義人民共和国における親日派清算は非常に厳格であったと考えがちであるが、実際はとても寛大でした。まずはそうした部分をよく見なければなりません」と北での親日派清算の経験に学ぶべきだと主張する。

 さらに「前夜」2号では世界各地で植民地主義に抗う人々の営みと理性の声を特集している。

 シオニズムの果てしない暴力にさらされるパレスチナで非暴力、不服従運動を続けるガッサーン・アンドーニ、グアテマラで虐殺の記憶の隠蔽と闘うアーティストのダニエル・エルナンデス・サラサールなど、どれもいま聴くべき理性の声であり、歴史性を踏まえた説得力に富む論考であろう。

 「前夜」を仲間たちと立ちあげた在日朝鮮人作家・徐京植さんは創刊リーフレットに次のような一文を寄せている。

 「いまは夜である。夜が続いている。日本という一つの社会が、速やかに、滑らかに、転落を続けている。だが、この闇は漆黒の闇ではなく、むしろ不快な明るさを帯びている。壊れたテレビ画面のようだ。色彩ばかりがケバケバしく、ピントがあっていないのだ。登場人物たちは非論理的な発言を平然と反復し、軽薄に笑い合っている。笑いながら確実に転落している。その果てには破局が待っている。戦争前夜、破局前夜である」と。

 そして、こう締め括る。

 「破局前夜が新生前夜となる、その希な望みを、私たちは棄てない」

 時代に抗う気迫がヒシヒシと伝わる言葉。それを行動によって示そうと、活字で情報や思想を発信するだけでなく、市民たちと連携して学習、文化活動にも力を入れていくという。

 昨年12月19日には東京の青山ブックセンター本店で岡真理・京大助教授と徐京植さんによる創刊記念トークショーが行われた。

 「パレスチナをめぐる想像力―今、カナファーニーを読む」をテーマにした対談は、「憲法改悪が推進され、戦争のできる国づくりが進む日本の現況は、歴史的不正に対する反省の否定である」という鋭い問題意識を持つ岡さんの「今、パレスチナを考えることで、私たちが生きているこの社会のありようを考えてみたい」という発言からスタートした。

 これに応えて徐さんが「同時代における理不尽の象徴はパレスチナ」「イラクのファルージャ」であるとして、「朝鮮半島の歴史に引き寄せて考えてみたい」と語った。

 徐さんは米軍によるファルージャ攻撃で「一体どれぐらいの人が殺されたのか」と問いかけながら、この非道な民衆虐殺は、「朝鮮侵略における日本の1905年の乙巳条約、07年の韓国軍隊解散によって、それに抗う朝鮮の民族運動を徹底的に弾圧してきた歴史を彷彿させる」と指摘。そして、東アジアでの日本の軍事力が朝鮮や中国などの民族運動を徹底的に抑圧した事実に触れた。

 また、岡さんも「日本はまさに東アジアにおけるイスラエル」だとの認識を示しながら、「米国の存在によって日本とイスラエルはその植民地主義的暴力の行使に対する責任を自らに問うことを免れ続けた」と喝破した。東アジアでの反植民地主義の闘いの忘却が、いま、まさにパレスチナやイラクの民衆の闘いを歪め、隠し、見殺しにしている、と両氏は静かな怒りを込めて訴えていた。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2005.1.19]