米国は基本合意文破棄責任から逃れられない |
朝鮮中央通信社が19日に発表した「米国は朝米基本合意文破棄の責任から逃れられず、高価な代償を払うことになるであろう」と題する詳報の要旨は次のとおり。 朝鮮民主主義人民共和国で、米国の主導下に朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が推進していた軽水炉建設が終えんを告げた。 2003年までに完工してわれわれにカギを手渡すことになっていた軽水炉は、米国の妨害策動によって完了目標の時点から2年が過ぎた今も、かろうじて基礎工事の段階にとどまっている。 朝鮮中央通信社は、軽水炉建設を最終的に放棄し、朝米基本合意文を全面破棄した米国の罪過を朝鮮半島とアジア太平洋地域で核対決を引き起こした重大な犯罪行為として厳しく断罪、糾弾するとともに、国際社会がここから深刻な教訓をくみ取るようにするため詳報を発表する。 1 軽水炉建設の完全中断は、米国の対朝鮮敵視政策の必然的所産であり、ブッシュ政権は朝米基本合意文を歴史の廃棄物にした張本人だ。 前政権の合意拒否 1994年10月21日に採択された朝米基本合意文の基本精神は、双方が相互の自主権を尊重し、和解と信頼を築いて両国間の敵対関係を改善し、朝鮮半島とアジア太平洋地域、ひいては世界の平和と安全を保障することであった。 このような理念から朝米は基本合意文を通じて、政治、経済関係の正常化問題、朝鮮の黒鉛炉を軽水炉に切り替える問題、朝鮮半島を非核化し、平和と安全を保障する問題、核拡散防止体系を強化する問題など、双方がなすべきことを公約した。 しかし、ブッシュ政権は前政権がわれわれと締結した朝米基本合意文をはじめ、一連の合意事項がわれわれにのみ「利益」を与え、米国の利益と権威を傷つけるものになるとしてその履行を拒否し、朝米間の公式文書を全面破棄する行為を計画的かつ系統的に働いた。 ブッシュは2000年12月19日、クリントンと政権の引き継ぎ問題を協議する場で、先任者の対朝鮮緩和政策を深刻な政策上の誤りであったとして基本合意文の破棄を主張し、2001年3月7日、「北朝鮮に対しては強硬路線を取る」と公言して朝米間の合意事項をすべて否定し、われわれとの全面対決を宣言した。 結局、ブッシュ政権は1993年の朝米共同声明と1994年の朝米基本合意文を通じて「朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器を使用せず、核兵器で威嚇もしない」と公約した核不使用の保証も投げ捨ててわれわれを「核先制攻撃の対象」に含め、対朝鮮核攻撃計画を政策化した。 義務事項履行せず 朝米基本合意文は、朝米間の核問題を相互主義の原則に基づいて解決するための政治的意志の反映であり、ここで中核は軽水炉の提供である。 われわれは朝米基本合意文の採択以降、それに従ってわれわれの義務事項を誠実に履行した。 しかし米国は、軽水炉建設を合意した日程どおりに推進しなかったのは言うまでもなく、双方が政治、経済関係を完全に正常化する方向へ進み、その一環として通信サービスと金融決済制限措置の解消を含む全般的な貿易と投資の障壁を緩和することにした朝米基本合意文の第2条も全く履行しなかった。 最初から軽水炉建設を行う意図がなかったブッシュ政権は、軽水炉建設の中断を政策化し、中断の責任をわれわれに転嫁する謀略行為に執着し始めた。 その代表的な実例がわれわれの「秘密核計画」説である。 米国は、われわれの「核開発疑惑」に関する「情報資料」をねつ造してマスメディアに流す一方、それを既成事実にするため2002年10月初、米国務次官補ケリーをわが国に派遣した。 大統領特使として平壌を訪問したケリーは、われわれが基本合意文に違反し、「ウラン濃縮」による「秘密核計画」を推進していると言いがかりをつけた。 われわれは、具体的な「証拠」も示さず、誰にも納得のいかないものを「信頼できる情報」資料だと言い張るケリーに、最大の忍耐力を発揮して十分にわれわれの潔白さを説明した。 こうした事実にもかかわらずブッシュ政権は、ケリーが帰国するなりわれわれが「ウラン濃縮による核兵器計画」を「是認」したというデマを大々的にまき散らした。 米国がけん伝したわれわれの「ウラン濃縮計画の是認」とは、このようにして出たものであった。 その時から3年の歳月が過ぎた今も、米国は「ウラン濃縮計画」の主張を証明できるいかなる資料も出せずにいる。 軽水炉中断は必然 ブッシュ政権は2003年1月17日、KEDOを通じた「対北朝鮮軽水炉提供の中止」を公式な政策と定めて関係諸国との協議に入ることにし、2005年11月22日にはその完全中止を最終決定した。 われわれは、米国がわれわれの自立的な核エネルギー工業に憂慮を表したので、軽水炉を提供してもらう代わりにそれをなくすことについて合意した。 米国が信頼の基本尺度である軽水炉建設を完全に放棄した以上、われわれとしては朝鮮式の黒鉛減速炉に基づく平和的な核活動を強化する事業を瞬間も止めることができなくなった。 ブッシュ政権が軽水炉提供を放棄した状況のもとで、われわれは5万キロワット、20万キロワットの黒鉛減速炉とその関連施設に基づく自立的な核エネルギー工業を積極的に発展させ、時が来ればわれわれの技術、われわれの潜在力に依拠する朝鮮式の軽水炉を建設して平和的な核活動にいっそう拍車をかけるであろう。 2 米国は、軽水炉建設を全面中断し、朝米基本合意文を破棄したことにより、われわれに被らせた莫大な政治的、経済的損失を補償すべき法律的、道徳的義務がある。 政治、経済的損失 ブッシュ政権が重油納入の中断と軽水炉建設の完全中止などで朝米基本合意文を破棄したことによってわれわれが被った政治的、経済的損失は、計りしれないほど大きい。 軽水炉提供協定は、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国主導下のKEDO間に締結された。 米国が協定当事者であるわれわれとの事前協議もなしに協定を破棄したのは、国際法と規範に対する横暴な行為である。 自立的な核エネルギー工業の凍結の代わりに2003年まで建設して正常稼働することになっていた軽水炉が完工されなかったので、われわれは2004年から毎年数十億キロワット時の電力生産損失を被っている。 このため、われわれは人民経済の各部門で増えている電力需要を満たすことができず、工業や農業など全般的な経済発展と人民生活を大きく阻害している。 米国は、朝米基本合意文の第1条第2項によって、黒鉛減速炉と関連諸施設の凍結に伴うエネルギー損失の補償として毎年50万トンの重油を提供することになっている法律的義務も誠実に履行しなかった。 米国は、重油納入があたかも「恩恵」であるかのように世論をミスリードして仕方なく重油を納入したが、毎月4万余トンずつ均等に納入することにした合意事項を一度もまともに遵守せず、長期間納入を中断したり、一度に多くの量を納入する方法で経済的混乱を生じさせた。 国際法からも当然 われわれの補償要求はごり押しではなく、国際的に公認されている法規範と慣例から見ても至極正当だ。 とくに、朝米間の合意と軽水炉提供協定の第16条「不履行時の措置事項」によっても、われわれは莫大な損失に対して補償を受け取る権利がある。 米国は、軽水炉建設を中核事項とする朝米基本合意文を全面破棄したことによってわれわれに被らせた損害に対し、速やかに補償しなければならない。 KEDOを組織して主導してきた米国は、KEDO加盟国との十分な合意もなしに一方的にKEDOを解散したことから、その加盟国が被る損害に対しても当然、補償すべきである。 朝米基本合意文に系統的に違反し、その履行を回避した米国の行為を見れば、われわれが核施設を廃棄せずに維持してきたのは実に正しい決断であった。 さる9月19日に採択、発表された第4回6者会談共同声明は、朝鮮民主主義人民共和国に核エネルギーの平和的利用権があることをせん明し、朝鮮民主主義人民共和国に軽水炉を提供する問題を討議することで合意したことを明らかにしている。 しかし、米国は会談のテーブルから立ち去るなり、軽水炉提供問題が協議の議題ではないとして図々しくも従来の「先核放棄」主張に固執している。 また、さる11月に行われた第5回6者会談で朝米両国が別途に対座してわれわれに対する米国の「金融制裁」を解消するための問題を政治的に討議、解決することで合意したにもかかわらず、それについて口をきわめて否認している。 対朝鮮圧殺の企図 現在、ブッシュ政権はわれわれに対して「悪の枢軸」「核先制攻撃の対象」「暴政の前哨基地」などと規定した発言を撤回するといった公約を覆し、またしても悪口を乱発して朝米関係を超緊張状態に追い込んでいる。 6者会談でわれわれが、朝米間に信頼づくりの物理的基礎である軽水炉提供問題と核計画放棄時点を同時行動でかみ合わせることについて提起した要求は、実に正しいものであった。 朝鮮半島の非核化を望む朝鮮を核兵器保有に向かわせた当事者は、ほかならぬ米国である。米国は、朝鮮に対する敵視政策を引き続き強行しながら、われわれが防衛手段としての核抑止力をより強化することについて難癖をつけて問題視する理由も、名分もない。 われわれは技術的に米国と交戦関係、戦争状態にある。それゆえ、われわれとしては核不使用の保証を一方的に放棄して核兵器を振り回し、われわれを「先制打撃」するという米国の恐喝に対抗して正当防衛のために核兵器を製造し、それを絶えず強化している。 米国の核脅威にさらされなくなった時にこそ、われわれには初めて核兵器が不要になるであろう。 ブッシュ政権が朝米基本合意文を完全に破棄したことにより、朝鮮半島とアジア太平洋地域の平和と安全はさらに不安定な状態に置かれるようになり、核対決の危険性は日々増大している。 米国は、日増しに悪化している現朝米対決の局面が招く破局的結果に対して自重して熟考し、勝算のない核対決政策、時代錯誤の対朝鮮圧殺政策を直ちに中止すべきである。 ブッシュ強硬保守集団がこんにちの不遇な危機状況から脱する唯一の活路は、われわれに対する「金融制裁」騒動を直ちに撤回し、相互尊重、平和共存の誠実な姿勢で6者会談場に臨むことにある。 米国が対朝鮮強硬圧殺政策に引き続き執着するなら、われわれはいっそう度合いの高い超強硬で対応するであろう。(朝鮮通信、中見出しは編集部) [朝鮮新報 2005.12.24] |