top_rogo.gif (16396 bytes)

農業科学院・農業情報技術研究センター パク・クァンチョル所長に聞く 「科学農業」に増産のカギ

 今年、朝鮮では近年にない穀物の増産が見込まれている。その要因について国内の農業関係者らは、気候条件にめぐまれたことなどのほかに、2年前から取り組みが始まった「科学農業」の普及を挙げた。

パク・クァンチョル所長

 農業科学院の科学者、研究者らは2003年から、農業省との緊密な連携のもと、土地の特性と当該地域の気候条件に対する科学的な分析に基づき、「適地適作」「適期適作」の原則を適用した合理的な営農プロセスを導入する試みを進めてきた。このような「科学農業」が全国的規模で普及され成果を収めれば、年間800万トンの穀物生産も十分可能だと、農業科学院の関係者らは見ている。

 農業復興のための一大プロジェクト推進にあたり、穀倉地帯である黄海南道内の4つの郡が初年度のモデル単位に設定され、04年にはそれが各道の14の市、郡へと拡大された。全国導入段階にあたる今年は40余の市、郡が対象となった。

 農業部門における今年の成果の要因や「科学農業」の現状、これからの課題などについて、農業科学院・農業情報技術研究センターのパク・クァンチョル所長に聞いた。

 −今年の穀物増産の要因は何か?

 第一に農業部門への国家的な「総動員」「総集中」方針のもと、資金や物資、技術、人力が集中的に投入された結果だといえる。

田植え作業を行う青山里協同農場の農場員(5月)

 科学者の立場から言えば、農業の全ての工程が適時に行われたということだ。田植えに始まり、施肥、害虫駆除、刈り入れに至るまで、科学的根拠に基づいた綿密な計画を立て時期を逃さずやり遂げた。

 「適地適作」「適期適作」は農業の最も基本的かつ重要な原則だ。

 「科学農業」を導入するにあたっては、土壌の特性を徹底的に調査した。そのうえで、どの品種をどこに植えれば収穫高が上がり、いつ、どのように田植えをすれば最も効果的に農作物を生育させることができるのかを科学的に分析した。田畑と土壌の特性に関するデータをもとに、耕作地の略図をコンピュータ上で立体的に再現し、合理的な営農計画を立てた。

 また、気象条件を考慮して農作物の生育を予測する農作物生育予報活動も行っている。データは国内のコンピュータ網を通じて、関係機関や各地の協同農場に提供する。

 現場農民の生産意欲が高まったことも、増産の大きな要因だ。02年の経済管理改善措置施行以降、生産単位の再編成や農産物買入価格の引き上げなどの措置がとられ、農民の生産意欲も年々高まってきている。土地使用料を国に納入することになったので、今まで放置してあった土地を有効利用する動きも活発になっている。農村に残る保守性や経験主義の悪弊が克服され、新しいものを積極的に受け入れようとする雰囲気が芽生えていることは、これからの農業の発展において大きな意味を持つものだ。

 −「科学農業」の導入状況について。

 今年から07年までは、「科学農業」導入計画の第3段階にあたる。これまで収めた成果に基づき対象を全国へと拡大していく段階だ。

 今年は500〜600の協同農場を対象に実施した。

 各道の農業科学分院や農業大学などから300余人の科学者、専門家らが農村に出向し、農民とともに1年間農業をおこなった。

 いまだ限定された地域での導入にとどまっているが、効果は着実に表れている。合理的な農作物および品種の配置、営農プロセスの改善、土壌に合った二毛作、化学肥料の効率的な利用、地力の強化など、導入当初から打ち出してきた対策案が実を結び始めている。

 また、行政、科学者、生産者という三者の力を合わせるという方法論の枠組みが、年間を通じて確立された。

 「生産と科学技術の結びつき」は経済発展のための必須条件といえる。農業も例外ではない。この一年で生産者と科学者の信頼関係がより深まった。来年からは科学技術の成果がいち早く生産部門に反映される体系が構築されていくと見ている。

 −朝鮮農業のこれからの課題は。

 第一に農業構造の改善が挙げられる。経済状態が依然として厳しい中で、多くの投資が必要な稲やトウモロコシ中心の単純な作物生産構造から、少ない投資で生産性の高いジャガイモや豆などを含めた多様な作物生産構造へと転換させる問題は、朝鮮農業発展のための重要な課題の一つだ。

 多様な農作物生産構造のもとで農業を営めば土壌の特性を最大限に生かすことができ、それによって気候条件が農業に与える悪影響を減らすことができるという利点がある。

 科学的な営農工程を適用し、現存する農耕地や肥料、設備などを有効に活用すればこれからも増産は可能だ、というのがわれわれの考えだ。(李相英記者)

[朝鮮新報 2005.12.9]