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〈月間平壌レポート〉 農業復興への手応え

 【平壌発=李相英記者】朝鮮労働党創建60周年や中国・胡錦涛国家主席の初訪朝などのビッグイベントの余韻覚めやらぬまま始まった11月。一年の締めくくりの時期が近づくにつれて、街の風景も様変わりしつつある。市民らは本格的な寒さの訪れを前にして冬支度を始めている。

「科学農業」の成果

秋深まる平壌でスケッチを楽しむ市民ら [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 平壌火力発電所をはじめとする市内への主要電力供給元では、急ピッチで進められた設備の補修作業が終わった。平壌火力発電所のチョン・グァンサム課長いわく、「今年の冬は各家庭に電気と温水を正常供給できそう」だという。

 また、各地の協同農場では脱穀も終え、早くも来年の準備にとりかかったと伝えられている。

 朝鮮は今年、農業分野における発展を経済建設の最重要課題に掲げ、年初から食糧問題の解決に向けさまざまな努力を行ってきた。今年の生産高についての具体的な数字は明らかになっていないが、近年にない豊作だったというのが一致した見方のようだ。

 「今年は例年にも増して農業部門により多くの資金、物資、技術、人力が動員されました。農業重視方針は食糧問題の解決に向けた国の意気込みの表れです」。農業科学院の関係者は、農作物増産の第一の要因が、総力あげての「力量投入作戦」にあると指摘した。

 農業情報技術研究センターのパク・クァンチョル所長によれば、科学的根拠に基づいた合理的な営農計画や管理システムの構築、現場の実情に見合った農業構造の改革、コンピュータの導入など、ここ数年進めている「科学農業」の成果が着実に現れ始めているのだという。

 「現場の生産意欲も高まっている」とパク所長。科学者である彼自身も農場に何度も足を運び、農民とともに汗を流したそうだ。

 「エネルギー、肥料など解決すべき問題はたくさんあるが、行政、技術者、現場の力がうまく噛み合えば、農業をもりたてていくことは十分可能です」

キムチあれこれ

 11月といえばキムジャン(キムチを漬ける作業)の季節。野菜を満載した車両が市内をあわただしく行き交い、建物の入口や家の玄関に白菜がうずたかく積まれる光景は、この季節の風物詩ともいえる。各家庭のキムチ自慢やキムジャンの苦労話など、「キムチ談議」に花が咲くのもこの時期の特徴だ。

 朝鮮の食卓にはなくてはならないキムチだが、最近はまた別の面で注目されている。

 世界中で猛威を振るっている鳥インフルエンザの予防にキムチが効果的だというのがそれ。キムチに含まれている乳酸菌が鳥インフルエンザウィルスの抑制に効果があり、各種疾病の予防や健康維持に有益なのだという。テレビや新聞ではキムチの効能が盛んに宣伝されていた。

 「キムチを食べれば怖いものなし」などと話す人もいるが、もちろんそれは冗談。朝鮮では現在、国を挙げての衛生防疫対策に万全を期している。

 国家獣医非常防疫委員会の統一指揮のもと、各地の衛生防疫所では被害を未然に防ぐための対策が講じられている。国境地帯でも、陸、海、空のあらゆる経路での検疫を強化中だ。またメディアを通じて、世界中で拡大している被害の状況や鳥インフルエンザぼく滅のための各国の取り組みを詳しく紹介する一方、日常生活レベルでの対策を人々に呼びかけるなど、国内では鳥インフルエンザ防止のための一大キャンペーンが繰り広げられている。

日本の政治詳しく

 一方、今月17日は「乙巳5条約」締結100周年にあたる日だった。

 日本の朝鮮に対する植民地統治の実質的始まりともいえる「乙巳5条約」。100周年に際し平壌では、「6.15共同委員会」、「日本軍『慰安婦』、強制連行被害者補償対策委員会」をはじめとする各団体が声明を発表し、朝鮮歴史学会は条約の不法性を告発する長文の論告状を発表した。新聞各紙も大きく特集を組むなど、日本を強く批判する論調が目立っている。

 過去の清算という歴史の責務に目を背け続けてきた日本への批判のまなざしは、かつてないほど厳しい。

 敗戦60周年という、過去の清算に今一度真しに取り組むべき節目の年に、加害国において戦後史上最大級の反動化が完成しつつあるという異様な事態に、人々は警戒心を強めているようだ。

 「靖国神社」参拝、政界の右傾化、「テロ対策特別措置法」の期限延長など、日本国内の政治動向は新聞の国際面などで詳しく報道されており、平壌市民の関心も一様に高い。

 取材先では、「日本の自浄能力に期待するだけムダなこと。米国との関係にけりが付いたら、日本も過去の清算に対する態度を改めざるをえなくなる」という声も多数聞かれた。

[朝鮮新報 2005.11.26]