鄭泰和朝・日会談朝鮮側前団長に聞く 平壌宣言の精神に立ち戻らねば関係改善ない |
【平壌発=金志永記者】朝・日平壌宣言発表(2002年9月17日)から間もなく3年。だが、宣言が履行されるどころか、朝・日関係はむしろ悪化している。朝・日国交正常化会談朝鮮側団長を務めた前外務省巡回大使で、現在朝・日交流協会顧問の鄭泰和氏に話を聞いた。 小泉訪朝で解決 −日本は拉致問題の解決を関係正常化の前提条件にしている。この問題についての考えは。 拉致問題は冷戦時代の1970年代末から80年代初にかけて発生した。朝・日間の敵対関係を背景に、特殊機関の一部の英雄主義者たちによる自由主義的行動から誘発された。 事実関係が表面化しなかったため、私自身もそんなことはないと考えていたし、日本の外交当局者にもそう説明した。日本の民間人を拉致した行為はまさに遺憾だと言わざるをえない。しかし、あくまで不正常な個別的現象であり、国家次元で実施されたものではない。 −昨年5月22日の小泉首相再訪朝は、第1回訪朝以来のこう着状態に突破口を開くものだったと思われるが。 われわれの立場は、小泉首相の1回目の訪朝を機に拉致問題が基本的に解決し、再訪朝を機に完全に解決したというものだ。 再訪朝時、朝鮮側は国家関係がない条件のもとで国籍問題をはじめとする領事関係で各種難問が提起されたにもかかわらず、(拉致)生存者の子どもたち5人全員を日本に送還した。昨年6月には日本側が提起した「安否不明者」の確認のために調査委員会を再び組織し、活動を開始した。7月には日本側の要請により拉致被害者でない米国人、ジェンキンス氏とその娘2人も日本に送還した。 昨年8月と9月には朝・日政府間北京接触で、再稼動した調査委員会の調査結果を通報し、11月9日から15日まで外務省の藪中アジア大洋州局長(当時)を団長とする日本政府代表団が平壌を訪れた。 同代表団の平壌訪問時に拉致問題は事実上締めくくられたというのが、今日も変わらないわれわれの立場だ。 できることはない −だが実際には、日本政府代表団の平壌訪問が「偽遺骨」事件の発端となり、朝・日関係はむしろ悪化した。 当時、生存者とその子どもたちはすでに日本に帰国していたので、焦点は死亡者調査に集中した。われわれは、死亡者8人に対する入国経緯、生存時期の生活経緯、死亡経緯など150余項目にわたって再調査した状況を通報した。写真、パスポート、400余nにわたる病歴書、作品台本、バトミントンのラケットをはじめとする遺品、卒業証書、成績証など生存者の子どもたちの教育進行過程を確認する文献などを日本側に移管した。 日本側は平壌滞在期間、死亡確認のための14人の目撃者及び生活体験者との面談、証言聞き取りを行った。 われわれは死亡者が生活していた招待所、横田めぐみさんが入院していて自殺した49号予防院などの現地踏査など、日本側の要求をすべて実現させた。 特例で特殊機関が持っていた個人資料カードと、拉致事件に責任のある者らを処罰した状況と裁判記録も日本側に移管した。 また、藪中団長の提起に応じて、横田めぐみさんの夫との面会が2回実現し、夫がめぐみさんの遺骨を直接日本側に渡した。薮中団長はわれわれの努力に謝意を表し、めぐみさんの遺骨を公表せず、両親に直接伝えると書面で保証した。 日本側は「真相究明」を引き続き主張しているが、われわれとしてはこれ以上できることはない。 調査した資料をそのまま通報し、渡せる遺品はすべて移管した。日本の警察関係者の調査活動も許可した。 日本政府は道理に合わない言動を繰り返している。表では、われわれの努力に謝意を表しておきながら、裏ではわれわれの通報資料に難癖をつけ、反朝鮮敵対感情を高めるのに利用した。 答え回避する日本 −日本政府は、横田めぐみさんの遺骨が本人とは異なる2人分の骨であるとの鑑定結果を発表した。現時点で遺骨の鑑定と関連した朝鮮側の立場は何か。 朝鮮中央通信社は今年1月24日、朝鮮政府の委任によって日本の遺骨鑑定結果がねつ造であることを科学的に論証する備忘録を発表した。しかし、日本は今日にいたるまで、遺骨鑑定の具体的な方法、期間、鑑定立会い人など反応が鋭敏なDNA鑑定と関連した初歩的な順守事項すら明らかにできていない。 明確にしておくが、日本側に渡した遺骨は横田めぐみさんのものだ。しかし、日本が「偽物」だと宣言した以上、遺骨を持っておく必要はないはずだ。したがって、われわれは遺骨を1グラムも足しも引きもせず、原状のまま平壌の家族に返還し、遺骨鑑定の真相を明らかにするよう求めた。このような立場を今年2月、駐中代表部を通じて日本政府に伝えたが、日本側は今日にいたるまで答えを回避している。 日本は朝・日平壌宣言にのっとって核、ミサイル、拉致問題を解決し、朝・日関係を正常化すると口癖のように言っているが、これは日本の過去清算に基づき関係正常化を実現するという宣言の基本精神を否定するものだ。 日本が朝・日平壌宣言の精神に立ち戻らないかぎり、朝・日関係の改善はありえない。 われわれは、過去清算に対する日本の姿勢と立場を注視している。 [朝鮮新報 2005.9.4] |