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そこが知りたいQ&A−なぜ6者会談無期中断、核保有なのか

 Q 朝鮮外務省は、10日に発表した声明で、「第2期ブッシュ政権の本心は第1期時の対朝鮮孤立、圧殺政策をそのまま踏襲している」と断言した。その根拠は何か。

 A 声明は、ブッシュ大統領の就任(1月20日)、一般教書(2月2日)演説、そしてライス国務長官の上院外交委員会指名公聴会での発言(1月18日)が出そろってから1週間後に発表された。

 ブッシュ大統領は就任演説で、第2期政権の究極目標として「暴圧政治の終息」を掲げ、世界平和達成の最短の道は「自由の拡散」だと述べた。また、「米国は独裁と希望のない社会に生きる人びとが受けている抑圧を座視しないし、抑圧者を許さない。自由のために立ち上がるのなら、われわれも一緒に立ち上がる」とまで言い放った。

 この2日前、ライス国務長官が指名公聴会で、「暴圧政治の前哨基地」(outpost of tyranny)として朝鮮やイラン、キューバなどを名指ししたことを念頭に置くと、米国の対朝鮮敵視政策に変化がなく、「体制転覆」のために圧力を加えていくとの意図が明白だ。

 第1期ブッシュ政権は、朝鮮をイラク、イランとともに「悪の枢軸」を形成していると敵視を露わにし(2002年1月)、イラクのフセイン政権を軍事力で倒した。さらには朝鮮の最高指導者を「暴君」と呼んだ(昨年8月)。今回、それらを「暴圧政治の前哨基地」という言葉に置き換えたに過ぎない。

 ブッシュ政権の、朝鮮敵視という本質にはまったく変化がないことがわかる。

 Q 声明はまた、6者会談の参加を無期限中断するとの立場を表明したが。

 A 昨年6月に行われた第3回6者会談で参加国は、「同時行動を取ることと、『凍結対補償』問題を基本にして討議するということで合意した」(6月28日、朝鮮外務省)。議長(中国)声明も、米国が行動してこそ朝鮮も動けるという認識が参加国の間に定着したと指摘した。

 しかし米国はこの後、核凍結に伴う補償はありえないとしながら、再びCVID(完全かつ検証可能で後戻りできない核廃棄)を朝鮮に突きつけ、さらに、「濃縮ウラン計画」「人権」「麻薬」「宗教」問題まで持ち出してきて言いがかりをつけた。第3回6者会談での共同認識と合意をすべて覆してしまったわけだ。

 これを受けて朝鮮側は、「ブッシュ政権が追求する6者会談は、問題解決のための会談ではなく、朝鮮を『被告席』に座らせ『集団的圧力』で屈服させようとするもの」(2004年10月8日、朝鮮外務省)だという疑念を抱くことになった。

 同時に朝鮮側は、対朝鮮敵視政策を転換し、会談の基礎(第3回6者会談の共同認識と合意に戻ること)を復旧することを米国に要求。そうすれば会談はすぐにでも再開できるとしてきた。が、米国は政策を転換しなかった。それで、昨年9月に開催される予定だった第4回6者会談は延期された。

 ブッシュ政権の「体制転覆」企図が明らかになった今回、朝鮮は、「会談参加の名分が整って会談の結果を期待できる十分な条件と雰囲気がもたらされたと認められる時まで、やむをえず6者会談への参加を無期限中断する」と宣言したのだ。

 Q 今回、核兵器庫の増加、核保有も公式に宣言したが。

 A 朝鮮はこれまで、米国が敵視政策を変更しないかぎり、「強力な物理的抑止力」を強化するという立場を何回も繰り返し表明した。第3回6者会談を詳報した朝鮮外務省スポークスマン談話も、「われわれは外部の侵略脅威に対処した自衛力を打ち固める活動を計画通り推し進めながら、米国の今後の態度を注視する」(2004年6月28日)と言及した。

 ブッシュ政権による核脅威が増幅する中、それに対抗するための自衛措置として2003年1月にNPT(核拡散防止条約)を脱退した朝鮮はその後、核活動の目的を電力生産などの平和利用から変更。同年9月の最高人民会議第11期第1回会議では、「核抑止力の強化」を国家政策とした。

 したがって、米国の敵視政策が変わらないばかりか強化される中、今回の発表は当然の成り行きだと言える。

 だから「思想と制度、自由と民主主義を守る」ためであり、「こんにちの現実は、強い力によってのみ正義が守られ、真理が固守できるということを示している」と指摘しているのだ。

 しかし朝鮮はその目的について、「誰かを威嚇恐喝するためでなく、展望的に在来式兵器を縮小し、人的資源と資金を経済建設と人民生活に回すことにある」(2003年6月9日発朝鮮中央通信)と説明している。

 Q 現在の事態はどうすれば打開できるのか?

 A 朝鮮側は今回、スポークスマン談話や質疑応答ではなく、それよりレベルの高い声明という形式で発表した。断固たる意志と悲壮な覚悟がうかがえる。「これから再び4年間を今までのように過ごすことはできないし、だからといって再度原点に戻って4年間を繰り返す必要もない」という文言からも、それが読み取れる。

 しかし、対話の扉が完全に閉ざされたわけではない。「十分な条件と雰囲気がもたらされたと認められる時まで」、6者会談への参加を無期限中断しただけだ。また、「対話と協商を通じて問題を解決しようとするわれわれの原則的な立場と、朝鮮半島を非核化しようとする最終目標には変わりがない」とも強調している。

 そもそも、現在の朝米核問題は、核威嚇をせず共存志向を明確にした93年の共同声明、その延長上で具体化された94年の基本合意をブッシュ政権が踏みにじったことによって先鋭化した。米国の敵視政策が根源となっているのだ。

 だから米国の朝鮮半島専門家たちは、「朝鮮は米国との敵対関係を終息させる努力を引き続きした。ワシントンが協力的なときは協力し、ワシントンが約束を破ったときは反発した」(シーガル米社会科学研究院博士)、「核問題が複雑になったのは米国が94年の基本合意を遵守しなかったから」(ハリソン国際政策研究所研究員)と分析しながら、ブッシュ政権に「米朝共存」へ態度の変化を促している。

 敵視なのか、共存なのか−ブッシュ政権の今後にかかっている。(姜イルク記者)

[朝鮮新報 2005.2.19]