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朝鮮中央通信社 備忘録は朝鮮政府の公式見解 日本は誠実な対応を

 【平壌発=金志永記者】朝鮮中央通信社が朝鮮民主主義人民共和国政府の委任により、日本人女性、横田めぐみさんの遺骨「鑑定結果」に関する日本の謀略行為を暴露した備忘録が発表(1月24日)されてから3週間以上が過ぎた。「制裁論」を掲げ、対決姿勢を露わにする日本の不誠実な態度は、朝鮮国内人民の反日感情を極度に悪化させている。

渡された公式外交覚書

 朝鮮側は1月26日、北京の大使館に日本大使館書記官を呼び、日本側の「鑑定結果」に対する政府の立場を通報した。日本の政府と世論は、その2日前に発表された朝鮮中央通信社の備忘録をそのまま伝えた朝鮮側の対応が「不誠実」で、「外交的に無礼なこと」だと反発したが、これは問題の本質を歪めようとする世論工作の一環だと言わざるをえない。

 備忘録は、冒頭で明らかにしたように、朝鮮政府の委任により人民保安省(日本の警察にあたる)と法医学専門家らが分析した資料に基づいて作成、発表された。また朝鮮側は、備忘録とともに、これが朝鮮政府の公式な立場だということを確認する外交覚書を日本大使館書記官に手渡した。外交的慣例に従うと、日本側は当然、朝鮮側が提示した疑問点を真しに検討する必要がある。

 日本側は、遺骨分析結果の矛盾点など、備忘録の細部の内容には触れずに、ただ、自らの主張と立場を正当化している。横田めぐみさんの遺骨だとして提供された骨が「他の2人の遺骨」と判明したという日本政府の発表に今も疑問の余地がないというものだが、その論拠は、「鑑定結果」を出した帝京大学が「国内最高水準の研究機関」ということ以外に何もない。

 帝京大学の「科学的権威」を強調しているのは、朝鮮側がDNA鑑定と関連する日本の技術水準を見下して「ニセ遺骨」を提供したという「仮説」に信ぴょう性を付与しようとするものだ。

 しかしこれは、我田引水の論理だ。日本側が横田さんの遺骨を手渡された経緯を見ても、このような論理は成立しない。

遺骨提供の経緯と真相

 昨年11月、朝・日政府間実務接触の日本政府代表団団長として平壌を訪れた藪中三十二外務省アジア大洋州局長(当時)は、横田めぐみさんの夫と面談する過程で、彼が遺骨を保管しているという「感触」をつかんで、それを提供してくれるよう朝鮮側に要請してきた。当時日本政府代表団は、訪朝日程を延期しながら拉致問題と関連する調査活動を行っていたが、藪中団長の要請があったのは、帰国2日前の11月13日だった。

 この時点では、朝鮮側も遺骨の存在を知らなかった。横田めぐみさんの夫が、一度は土葬した妻の遺体を火葬し、自分のそばに置いていたことを秘密にしていたからだ。藪中団長の「感触」が遺骨提供の発端になったのだ。

 複雑になっている事件の真相解明の手がかりをつかむためには、遺骨提供がなされた出発点に戻る必要がある。

 朝鮮側関係者の説得で、夫が藪中局長に遺骨を手渡したのは、代表団の帰国の前日だ。客観的に見ても、日本側から予想外の要請をされた朝鮮側の関係者が、1日も経たない間にわざわざ「ニセ遺骨」をつくりだし、それを手渡すとは思えない。

 遺骨提供の経緯については、朝鮮中央通信社備忘録にも記述されている。備忘録は、藪中局長が遺骨を手渡されるとき、これを横田めぐみさんの両親に直接手渡すことを約束し、公表しないという内容の自筆を書面化し、サインまでした事実を明らかにしている。日本のメディアは、まるで遺骨が「ニセ物」と判明される恐れがあるから朝鮮側が非公表の条件を付けたように恣意的に解釈している。

 遺骨を提供する問題は、横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさんにも知らされなかった。ヘギョンさんの父としては、母親の遺骨と離ればなれになるという事実を知ったときの娘の心情を考え、遺骨問題が話題にのぼった以降は、藪中局長との面談に同席していた娘をはずすようにした。それだけ神経を使ったのだ。

 遺骨を公表せずに横田めぐみさんの両親に直接手渡すという日本側の約束は、このような事情を考慮したものだった。藪中団長が自ら書面での約束をした事実は、日本側が横田めぐみさんの死亡を確認し、日本人を納得させられる証拠資料をなんとかして入手しようと主動的に行動したということを物語っている。

ありえない「2人の遺骨」

 横田めぐみさんの夫は、妻の遺骨を第3者が介入することなく、藪中局長に直接手渡し、藪中局長は、それを両親に直接手渡すと約束した。遺骨の提供は、このように信義に基づいて成されたが、日本側は家族らとの約束をいとも簡単に破った。

 「遺骨は他の2人の骨が混ざったものだということが判明した」との日本政府の発表は、朝鮮側がとても受け入れられない内容だ。とくに遺骨を提供した夫にとっては、信じられない内容だった。夫は、藪中団長との面談時、ごく少数の人員を動員して土葬した妻の遺体を火葬場に移したことについて述べた。自身が特殊機関に所属していたので、すべての作業は非公開で行われ、他人の骨が混ざる余地は一切なかった。

 昨年11月平壌で行われた朝・日政府間実務接触に立ち会った関係者なら、2人の他人の骨だという「鑑定結果」、そして、朝鮮側が最初から「ニセ遺骨」を準備して提供したという推測にはおそらく納得できないだろう。

 朝鮮中央通信社備忘録にも指摘されているように、帝京大学の「DNA識別鑑定書」に記された内容には、明らかに前後がかみ合わない部分がある。またDNA識別鑑定は、若干の外部操作が加えられても、分析において大きな誤差が生じるのに、「鑑定書」には分析者はもちろん、立会人の名前も記されていなかった。

遺骨返還要求は最終通告

 現時点で疑惑解明の焦点は、朝鮮側ではなく、日本側が発表した「鑑定結果」にあるべきだ。さらに日本政府は、遺骨が本人の物でないと言った以上、それをそのまま返還するよう求めた朝鮮側の要求に応じるべきだ。

 朝・日間の重大事項に対する日本政府の一貫性のない態度は、なぞと言える。

 しかし日本のメディアは、それを検証する取材、報道を最初から放棄しながら、朝鮮に対する制裁を合理化しようとする世論をつくり上げている。

 朝鮮中央通信社備忘録は、日本のメディアが伝えているような「窮余の策」「弁明」ではなく、「国の威信をかけて世界の前に出した見解と立場」だ。朝鮮側は「鑑定結果」ねつ造事件の真相を究明し、責任者を処分することを要求している。

 昨年11月の実務接触時点まで、朝鮮側は拉致問題解決のために誠意と努力を傾けてきた。「鑑定結果」ねつ造事件は、2国間の信頼造成のために努力してきた朝鮮の外交当局者が「日本こそ信じるに信じられない、一緒に過ごそうとも過ごせない国」(朝鮮中央通信社備忘録)だという確信を抱かせる機会になってしまった。

 朝鮮側が求めている横田めぐみさんの遺骨返還要求は、朝・日関係改善のための対話と交渉に幕を閉じるとの最終通告とも受け止められる。

 日本政府は、朝・日平壌宣言を白紙化するのが真の意図でないなら、これ以上遺骨の返還を遅らせるべきでない。

[朝鮮新報 2005.2.18]