朝鮮中央通信社備忘録(全文) 日本は反朝鮮謀略劇の責任から絶対に逃れられない |
既報のように、朝鮮中央通信社は24日、「日本は反朝鮮謀略劇の責任から絶対に逃れられない」と題する備忘録を発表し、横田めぐみさんの遺骨「鑑定結果」はねつ造であったことを暴露した。その全文は次のとおり。 既報のように最近、日本は日本人女性横田めぐみさんの遺骨「鑑定結果」をねつ造し、それに付け入って殺伐とした反朝鮮騒動を繰り広げている。 日本の極右勢力と政界の人物が「北朝鮮人権法案」の成立と制裁を唱えながらわれわれとの対決局面をつくり出しており、日本政府は自国が提起した日本人「安否不明者」の解明のため今までわれわれが傾けた誠意と努力、その結果を全面否定し、すでに約束した人道的支援を中断した。 朝鮮中央通信社は、朝鮮民主主義人民共和国政府の委任によって人民保安省と法医学専門家が分析した資料に基づいて日本の反朝鮮謀略劇である遺骨「鑑定結果」の真相を内外に告げるため、この備忘録を発表する。 1 日本の遺骨「鑑定結果」は徹底したねつ造 横田めぐみさんの遺骨について言えば、彼女の夫から2004年11月14日、朝・日政府間実務接触に参加するため、平壌入りした日本政府代表団団長である藪中三十二外務省アジア大洋州局長(当時)が第3者の介入なしに直接手渡されたものである。 2004年11月15日、日本政府代表団が帰国した後、日本の警察庁は横田めぐみさんの遺骨を犯罪関連の「証拠物」と見なし、刑事訴訟手順に従うという口実のもと、新潟県警察本部を押し立てて鑑定依頼書を出すようにし、科学警察研究所、帝京大学、東京歯科大学でDNA鑑定と骨相学に基づく鑑定で精密検査を行うようにした。 数日間にわたる検査の結果、科学警察研究所は「遺骨が高温で焼かれたのでDNAを検出することができなかった」という結論を下し、東京歯科大学も骨片が微細であるため、鑑定は困難という立場を表した。 ところが2004年12月8日、日本内閣の細田博之官房長官が急に記者会見を開き、「北朝鮮が横田めぐみさんのものであると提供した遺骨がDNA鑑定の結果、他の2人の骨を混ぜたものであることが判明した」と発表した。 これとともに、日本外務省も2004年12月25日、北京駐在代表部を通じてわれわれに送ってきた「朝鮮から提示された情報、物的証拠の精密調査結果」という文書で、「朝鮮側から横田めぐみさんの遺骨であると提供された骨に対してはDNA検出可能性のある骨片10個を慎重に選定して警察当局が国内の最高水準にある帝京大学と科学警察研究所に検査を依頼した。その中で、帝京大学に検査を依頼した骨片5つのうち、4つからは同じDNAが、そして他の1個から異なるDNAが検出された。しかし、どちらのDNAも横田めぐみさんのDNAとは異なるという検査結果報告が出た。これは、国内最高水準の研究機関による客観的で、正確な検査結果である」とした。 しかし、日本政府が断定した「国内最高水準の研究機関による客観的で、正確な検査」にはあまりにも疑問点が多い。 疑問点は第1に、同時に鑑定の依頼を受けた科学警察研究所ではDNA検出ができなかったのに、帝京大学では「結果」を得たということである。 帝京大学では、火葬した遺骨からミトコンドリアDNAを分離し、横田めぐみさんの臍帯と対照して識別鑑定を行ったという。 帝京大学の「鑑定結果」は「奇跡」だと言えるかも知れないが、1人の遺骨を「2人」の遺骨に「鑑定」したことについては明白に科学的であると言えない。 ここで問題は、日本政府が全国の警察機関からこれまで数多くの遺骨を依頼され、世界最新設備を持って鑑定を行ってきた歴史と経験のある科学警察研究所でDNAを検出できなかった事実についてはその科学性に背を向け、帝京大学のDNA「鑑定結果」だけを絶対視したことである。 これに関連して、日本の週刊誌「週刊金曜日」(2004年12月24日号)は、「DNAを検出できなかったという事実と検出できたという事実は同じ科学的事実である。法医学のための設備として世界的な環境にあるはずの科学警察研究所が検出できなかったこともまた、無視すべきでない結論のはずである。結論を採用する時、委託した2つの研究機関の結論が一致した時それを採用すべきであろう。食糧支援を中止し、経済制裁うんぬんの決定につなげることには、科学分析の方法をわい曲して政治的に利用しているに過ぎないと思える」と暴いた。 自他ともに認めているように、ひとつの対象を置いて2つの研究機関が分析した鑑定結果が相反する場合、それに対する評価においてどちらか一方のものだけを絶対視するなら、それは科学性と客観的妥当性が欠如したものだと言うべきであろう。 疑問点は第2に、遺骨鑑定のための分析方法である。 帝京大学は、遺骨鑑定にミトコンドリアDNA分析方法を適用したという。 しかし、人間の血筋を解明するこの方法も、まず骨片の中に存在する細胞を採取し、その中からDNAを選別してこそ可能である。 わが国では、普通平均1200℃で死体を火葬している。 1200℃の高温で火葬した遺骨を、DNA分析方法で鑑定しても個人識別が不可能だというのは一般的な常識である。 遺骨を1200℃の高温のなかで燃焼すれば、すべての有機物質が酸素と結合して気体状態で空中に飛び散り、無機物質である灰分だけ残ることになり、この灰分も一定の期間、外見上、形体を残すことはできるが、それも外部的作用が少しでも加えられると、形体すら維持できない。 それゆえ、帝京大学が1200℃の高温状態で燃焼した遺骨から細胞を採取し、それを培養、増殖させる方法でDNAを鑑定したというのは信じがたいことである。 これについては、日本の週刊誌「アエラ」(2004年12月27日号)が、「DNAは熱に弱く、火葬した骨に残っていることは普通は期待できない。今回も実力では日本のトップと見られる警視庁科学警察研究所の分からは(DNAを)検出できなかったようだ。帝京大学の鑑定結果が正しいとすれば、素人が薪で焼いたためむらができて、偶然、熱が伝わらない部分ができ、奇跡的に細胞が残っていたことになろう」と暴いた。 疑問点は第3に、横田めぐみさんの遺骨に対する帝京大学の「DNA識別鑑定書」に記された分析内容の前後が合わないことである。 「鑑定書」によると、帝京大学ではミトコンドリアDNAに対する分析が同じ区域内で塩基配列が骨片1はC型に、骨片2、3、4はA型、骨片5はAG、CT、TC混合型となっている。 一人の遺骨のDNAを構成するヌクレオチドの塩基配列は同型で現れるが、3の型で現れ、なかでもひとつの骨片は混合型になっているというのは不思議である。 この結果を無理に受け入れるとしても遺骨は3人、またはそれ以上の人のものと見なすべきである。 しかし、これも日本が横田めぐみさんの遺骨は「本人ではない他の2人の骨」という結論と矛盾する。 特に、骨片5に対する1回目と2回目の分析結果が相異なるのは理解できない。 骨片5に対する2回目の分析では1回目の分析と同じミトコンドリアDNAの切れ端を2倍に増加したため当然、1回目の分析結果を立証できる同じ分析結果が出なければならないが、完全に相反する結果が出た。 小さなひとつの骨片から相反する分析結果が出たというのは科学的に完全に矛盾することから、外部からのトリックとしか考えられない。帝京大学の「鑑定書」に「骨片5は分析限界区域にあり、再生成において問題を抱えている資料であることは明白である」と指摘されたのは「鑑定結果」を科学的に保証できないということを示している。 また、遺骨表面でDNAが増幅しなかったというのも疑いを大きくさせている。 「鑑定書」には、骨片に汚染物質の付着を予想してまず、超音波洗浄をし、ここから出た不用物に骨片に適用した同様の方法でDNA抽出を試みたが、増幅が認められなかったため、自分たちが鑑定したのは骨の表面に付いている汚染物質ではなく、骨の中にあるDNAであると記されている。 横田めぐみさんの遺骨は普通の人々の遺骨と同じように火葬、運搬、保管過程で多数の人々が扱った。 1200℃の高温で燃焼した遺骨からDNAを分離するほどの鋭敏な鑑定であれば骨片の表面に付いた不用物を鑑定する時、その遺骨に直接手をあてた人々に対するDNAも検出されるべきであったが、検出されていないというのは多くの疑問を抱かせる。 これは結局、「鑑定」の信憑性を認めてもらおうとしたことであろうか、そうでなければ横田めぐみさんの遺骨からDNAの検出が不可能になるや情報機関や特定の機関、人物が意図的に他人の骨を大学に送り鑑定するようにしたという結論に至る。 DNAの鑑定に明るい帝京大学の石山c夫法医学名誉教授が、日本では「北朝鮮から2人分の人骨が来たとみるのが一般的だが、鑑定中に誰かのDNAが混じった可能性も否定できない」(毎日新聞2004年12月18日付)と述べたのは決して理由なきことではない。 この他に、遺骨鑑定の手順と形式にも問題がある。 DNAを利用した多形分析は非常に鋭敏で、細密な分析であるため、外部から操作が少しでも加えられても分析に大きな誤差をもたらすのは必至である。 一般的に鋭敏なDNA検査は政治的性格を大きく帯びているため、必ず専門家が立ち会いしなければ医学的、法律的見地から見る時、客観性が認められないことになっている。 さらに、横田めぐみさんの遺骨「鑑定結果」が朝・日関係に無視できない影響を及ぼすということを考慮に入れる時、こうした要求がさらに重要な問題として提起される。 しかし、日本政府がわれわれに送ってきた「鑑定書」には分析者は言うまでもなく、立会人の姓名も明示されていない 日本政府が立会人もない「鑑定文書」、分析者の姓名と分析機関の公印もない文書をもって「客観性のある科学的検査」であるとして、なんらかの「解明」をうんぬんすること自体がわが朝鮮に対する重大な冒とくにほかならない。 諸般の事実は、日本が持ち出している遺骨「鑑定結果」なるものが、体質的にわが朝鮮に反対する極右勢力とこの勢力と結託して自分の政治目的を達成しようとする不純な連中のねつ造品であることを如実に実証している。 2 信頼できない日本 われわれは過去、わが国を武力で占領し、史上類例のない野蛮な植民地支配を実施し、わが人民に前代未聞の不幸と苦痛を被らせながらも、60年の歳月が流れようとしている今日も、その清算を回避している日本に対するわが軍隊と人民の憤りが噴出しているなかでも、拉致問題を解決するために可能な限りの誠意と努力を尽くした。 拉致問題が、日本政府の終始一貫した反朝鮮敵視政策とそれによるわが人民の激昂した反日感情を背景に生じたことを考慮に入れる時、日本政府にも問題の責任がある。 しかし、われわれは2002年9月の朝・日平壌宣言の採択以降から2004年7月までの期間に拉致生存者とその家族、そして拉致被害者ではない米国人のジェンキンス氏と彼の二人の娘も日本に帰した。 また、難関は多かったが、日本政府が提起した日本人「安否不明者」の生死可否を再調査し、確認するため、国家的な措置を講じて調査委員会を組織し、誠意ある調査活動を行ったし、2004年8月と9月の北京接触に続いて11月に平壌で行われた朝・日政府間実務接触で「安否不明者」が死亡したこととその原因、生存時期の生活経緯など、その期間の調査結果に対して日本側に具体的に通報し、それを立証できる証拠資料の提示、証人との面談など実際にわれわれはできる限りを尽くした。 これに対して、日本側団長である藪中三十二外務省アジア大洋州局長(当時)は、平壌で行われたわれわれとの公式接触の際、「これまで調査委員会が積極的に協力してくれたことに対してありがたく思う」としながら、今回、自分らが「いろいろな事件確認資料を手にし、証人および関係者との面会などをするように協力してくれたのは調査委員会の誠意として受け入れたい」と発言した。 また、「安否不明者」の解明において基本は横田めぐみさんであるため、「彼女の死亡を確認し、日本の人々を納得させるため、彼女の遺骨を必ずや引き渡してほしい、遺骨は当然、彼女の父母に伝えなければならないのでお願いしたい」としながら、横田めぐみさんの夫との会見と遺骨の引き渡しを何度も哀願するように懇請した。 そして、横田めぐみさんの夫と会って遺骨を受け取る時に日本側団長は「横田めぐみさんの夫からめぐみさんの遺骸をわたしが直接受け取った、これをめぐみさんの両親に直接渡すということを約束する、公表しない」という自筆内容を文書化し、サインまでした。 しかし、日本側は遺骨を持ち帰っては公表程度ではなく、東京都港区の会館に展示しておき、もともと土葬した遺骸をわれわれが意図的に出土し、鑑定できないように火葬したと言いがかりをつけて反朝鮮謀略騒動に火をつけた。 この他にも、われわれが積極的に協力したことに対して表では「ありがたく思う。誠意として受け入れたい」としながら、帰国してからは「朝鮮側の説明を裏付けるものはなかった。日本政府として全く受け入れられない、誠意を欠く対応に強く抗議する」という内容の文書まで送ってきた。 日本は、横田めぐみさんの遺骨「鑑定結果」だけをねつ造したのではなく、彼女の夫と娘との親子関係をも否定した。 日本政府代表団のメンバーは、2004年11月12日に高麗ホテルで横田めぐみさんの夫と会って数枚の家族写真をもとに対象確認をする方法で秘密裏に彼の指紋と皮脂を採取した。 そして、日本側団長は2004年11月14日に横田めぐみさんの夫と再会する前に粘着液を手に塗って彼と握手しながら相手の手に付着した細胞を採集した。 このように採集した細胞を日本政府代表団内の警察庁関係者が高麗ホテルで受け取って帰国した後、科学警察研究所で細胞鑑定をするようにし、その結果を帝京大学に渡して横田めぐみさんの娘のDNAと対照鑑定するようにした。 そして、横田めぐみさんの夫とその娘が親子ではないと事実を完全にわい曲して言論界に流した。 この結果、日本の週刊誌「週刊現代」(2004年12月6日号)には「握手作戦」によってわれわれが「にせの横田の夫」「にせのヘギョンの父」を明かしたという謀略記事が載ることになった。 われわれは、日本政府代表団が外交慣例に類例のない稚拙で、陰謀的な方法で横田めぐみさんの夫の指紋、皮脂、細胞などを採集したことを最初から知らなかったのではないが、それが事実を立証することにつながると見てそのまま放置した。 日本が最初から問題の解決を願わず、いかなる場合にもわれわれに言いがかりをつけるところに焦点を合わせていたということは、日本の反朝鮮謀略団体の策動はさておき、政界の動向だけを見てもよくわかる。 日本政府代表団が2004年11月15日に帰国してわれわれが提示した証拠資料、遺品、遺骨などに対する確認検査をする前の11月17日、安倍晋三自民党幹事長代理は東京都内で行った講演で「見る物もなく、うそにうそを重ねている。北朝鮮には圧力だけが通じ、当然経済制裁を発動する段階に至った」と暴言した。 これに先立って11月16日、中山成彬文部科学相、小池百合子環境相の閣僚らは記者団に「われわれが怒っていることを見せる時期がきた」「経済制裁などいろいろな圧力を重視すべきだ」「国際社会の場でもアピールしていかなければならない」と唱え、超党派国会議員組織である「拉致議員連盟」は総会でわれわれに対する経済制裁発動、人道主義支援の中止などを求める声明を発表し、11月18日には自民党が5段階の制裁実施案を最終検討するなど、われわれに対する制裁と圧力の雰囲気を鼓吹した。 現状況は死んだ人を生きているとし、親子間の肉親関係を否定し、にせ遺骨までつくり出す日本こそ、信じようとしても信じられず、親しく過ごそうとしても過ごすことができない国であることを如実に示している。 3 遺骨「鑑定結果」をねつ造した日本の本心 遺骨「鑑定結果」をねつ造してまで拉致問題の解決を認めず、むしろわれわれの誠意と努力を全面否定しながら朝・日関係を最悪の対決状態へ追い込んでいる日本の下心がどこにあるのかというのは難なく察することができる。 正しい政治哲学と理念がないことから国家外交は対米追従一路に執着し、政界は派閥と権力纂奪のための争いで月日を送って過ごしており、軍国主義の復活が危険度を越えているのが今日の日本の政治状況である。 彼らに共通点があり、一脈相通ずる側面があればそれは拉致問題を「国民感情」の美名のもと、自己の過去清算を回避するための盾に、国際的にわが朝鮮を孤立させるための道具に、政略実現とはなはだしくは金もうけのよい手段に利用するのが「国益」に合致すると見なしていることひとつだけである。 日本はまさに、このような「国益」のために拉致問題の解決を必死になって認めず、にせ遺骨事件をつくりあげたのである。 しかし、日本がいくら白を黒といい、卑劣な方法で政治目的を達成しようとしても横田めぐみさんの遺骨「鑑定結果」をねつ造し、わが朝鮮を謀略で害した責任から絶対に逃れられないということをとくと知るべきである。 日本政府は横田めぐみさんの遺骨が本人のものではないと言った以上、われわれが累次求めたとおり遺骨をたしも引きもせずに原状のまま送還し、「鑑定結果」ねつ造事件の真相を徹底的に究明し、責任ある者を厳重に処罰すべきであろう。 2005年1月24日 [朝鮮新報 2005.1.27] |