第2期ブッシュ政権スタート 朝鮮の対米政策 |
政策変更すれば「友邦として付き合う」 第2期ブッシュ政権がスタートした。現在、朝米核問題解決のための6者会談は中断状態にあるが、朝鮮側は第2期ブッシュ政権の対朝鮮政策を見極めたうえで対応するとの立場を表明してきた。つまり、外交安保問題を担当するスタッフを新たに編成したブッシュ政権が、従来の対朝鮮敵視政策を転換させた場合、核や2国間の懸案問題などの解決に向けた、大胆な政策を推し進めていく可能性があるということだ。 米議員団の訪朝
既報のように、第2期ブッシュ政権の発足に先立ち、注目すべき出来事があった。米国のトム・レントス米下院議員(民主党、1月8〜11日)、カート・ウェルドン米下院軍事委員会副委員長(共和党、11〜14日)一行の訪朝である。 核問題で進展が見られない現在の状況に対する国内世論の反応は、「敵対国に安易な譲歩はすべきでない」という強硬論が大勢を占めている。こうした中での米議員団の訪朝だったが、平壌市民は自国が原則的立場を貫いた結果、「米国からメッセンジャーがやってきた」と受け止めている(平壌支局)。 ウェルドン議員一行は、金永南・最高人民会議常任委員会委員長ら朝鮮側要人と会談したが、朝鮮中央通信は、異例にも会談の詳細を報道した。 それによると、ウェルドン議員一行は「米国は朝鮮を敵視せず、侵攻する意志も無いし、制度転覆も追求しないとの立場を表明」した。それに対し朝鮮側は、「米国会議員の発言内容が第2期ブッシュ政権の政策として定まるのであれば、6者会談と核問題はもちろん、朝米間のすべての懸案を究極的に解決する方向に向かうであろう」と「確言」した。 ウェルドン議員は2003年5月にも訪朝しているが、今回は金永南委員長と90分、6者会談の朝鮮側代表である金桂冠外務次官とは延べ10時間にわたり意見交換を行った。その内容を報じた朝鮮中央通信の報道も、事前に朝鮮外務省の李根副局長とウェルドン議員が共同で文面を協議したという。 変わらぬ原則 今回の米議員団の訪朝は、6者会談が再開されず核問題の解決が先送りされている責任が誰にあるのか、その所在を示すものだったといえる。
ウェルドン議員一行は、2003年の後半期に2度目の訪朝を準備したが、当時ブッシュ政権は、それを許可しなかった。今回は、「議員たちの行動を支持する」というブッシュ大統領自身の意向がホワイトハウスを通じて昨年12月に伝えられたという。 昨年6月の第3回6者会談以降、ブッシュ政権は朝鮮側の「消極的立場」が原因で核問題の解決が遅れていると主張しつづけてきた。朝鮮側に責任を転嫁するための世論工作が展開されたが、客観的に見れば第2期ブッシュ政権の発足を前に行動を起こさなければならない立場に置かれていたのは米国側であった。 今後4年間の対朝鮮政策を立案する過程で、朝鮮側の意図を正確に把握することは、ブッシュ政権にとっても不可欠な作業である。それだけに、太平洋を渡って平壌を訪れた米議員団は、立法府のメンバーではあるが、ブッシュ政権の立場を間接的に説明し朝鮮側の主張を直接確認したといえる。 朝鮮中央通信の報道を見る限り、核問題に関する朝鮮側の原則的立場に変更はない。対朝鮮敵視政策を朝米平和共存政策へと転換する「根本的な政策変更」を求めているが、同時に米国が未来志向的な行動を見せれば、朝鮮側も決断力を発揮するとの意向も示した。報道では米国が政策を変更させるならば、「反米をせず」「米国を尊重し」「友邦として付き合っていける」との表現を使った。 一貫した対話路線 米国は、第2回6者会談で核問題解決に向けた同時行動原則に合意したにもかかわらず、その態度を覆した。対朝鮮政策をめぐる政権内部の不協和音が原因だと指摘されている。 朝米関係は、第2期政権の発足を機に、ブッシュ大統領とホワイトハウス、国務省の新たな陣営が一貫性のある対話路線を堅持できるかどうかがポイントとなる。核問題解決と朝米関係改善に向けたブッシュ政権の政策的意志が6者会談で示され、それが実践に移されるとの確証が得られれば、朝鮮側は大きなステップを踏み出すだろう。 ウェルドン議員一行は帰国後、対話路線継続のため、ブッシュ政権に積極的に働きかけていく意向を表明した。朝鮮外務省関係者は、議員たちが3度目の訪朝をすれば、金正日総書記との会談が実現すると語ったという。 第2期ブッシュ政権の対朝鮮政策は、その方向性が徐々に明らかになっていくだろうが、朝鮮側は「偉大な転変の年」(3紙共同社説)の展望に立ち、すでに画期的転換を起こすための準備を整えている。(金志永記者) [朝鮮新報 2005.1.22] |