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朝鮮大学校 新入生座談会

 夢と希望に胸をふくらませ今年も多くの学生が朝鮮大学校(東京都小平市)の門をくぐった。さまざまな選択肢がある中、彼らはなぜ朝鮮大学校に入学したのか。そこでの生活で何を学び何を得ようとしているのか。新入生4人に話を聞いた。(整理=安愛麗、呉陽希記者)

康潤碩(東京)政治経済学部法律学科 羅琴美(神戸)教育学部保育科 孫民哲(京都)体育学部 李佳也(大阪)外国語学部

 −朝鮮大学校を進路として選んだ理由は。

同胞社会の問題を解決

 康潤碩:中級部の頃から法律家を目指していた。日本の大学に進学する準備もしていたが、自分が同胞社会のために何かできることをしなければと考え、朝大で法律を学ぶことを選択肢のひとつとして考えるようになった。同胞のための法律家になるためには、同胞固有の問題を知ることが大事で、それは朝大でしか学べないと思った。日本の大学で学ぶことは資格を取得するには有利だが、朝大では歴史から始まって「同胞社会」についてより多くを学べると思っている。

「自分自身」を探しに

 李佳也:元々国際関係の学部に入りたいとばく然と考えていた。同胞社会は枠が狭いというイメージを持っていたが、その考えに疑問を持ったのは高2の時、オーストラリアに行った経験からだ。現地のインターナショナルスクールで、日本語、朝鮮語、英語を話す人たちと仲良くなって、自分の「武器」を知った。そして現在の日本ではマイナスのイメージが多い在日朝鮮人だが、実はプラスの要素がたくさんあることを実感した。一方でその存在が全く知られていない現実にもぶつかった。そこで在日についてアピールしようとしたが、いざとなってみると自分自身もよくわからないことが多いことに気づかされた。国際関係をうんぬんする以前に自分のことを知るべきと考えた。

同胞たちに恩返しを

 孫民哲:京都中高サッカー部在籍中に「全国大会」に出場した。そのとき遠くからかけつけ、寒いなか温かい声援を送ってくれた同胞が本当にありがたいと思った。初戦で敗退したが、それでも同胞たちは「よくやった」と励ましてくれた。そんな同胞たちの気持ちを忘れることなく、少しでも恩返しがしたいと思い、朝大でサッカーを続けることにした。

ハッキョを後代にも

 羅琴美:初級部のころから教員になるのが夢だった。結果的に保育科に進むことになったが、目標を新たにがんばろうと思っている。自分にとって学校は楽しい思い出がたくさんある場所。それはウリハッキョが与えてくれたものだと思う。そして、それを後の世代にも伝えたい。少子化の問題もあり、現在ウリハッキョでは生徒数の減少が深刻な状況で、休校になるケースもある。その現状を黙って見過ごすわけにはいかない。教育者としてウリハッキョを守り、発展させる人材になるため、日々励むつもりだ。

 −実際入学してみて、朝大はどんなところだと思った?

サッカー推薦の責任感

 孫:今までとは全く違う環境でサッカーをしなければならないという条件で、4年間本当にやっていけるのかと考えたこともあったが、一緒に練習している先輩や同級生の水準が高いことが、逆に良い刺激になっている。サッカーで推薦を受けたこともあり、自分が活躍しなければならないという責任感も感じる。また、各地から集まってくる人たちと出会えるのも朝大の大きな魅力だ。

民族性を育める環境

 羅:入学する前は保育科に入ることに不安もあったが、実際入ってみると同じ保育士になるという目標を持ったトンムたちとたくさん出会えるいい環境だった。また、朝大は民族的な雰囲気に包まれ常にウリマルで話せる環境であることなど、民族性を存分に育めるところだ。

優秀な講師たちの授業

 李:外国語学部はとてもいい講師がそろっていると聞いていたが、短期間ではあるが授業を受けてみて、それを実感した。また、一日のスケジュールに自習の時間が組み込まれていることもとてもいいと思う。「強制的」という意見もあるが、学生である以上勉強はすべきだし、疲れているときや怠けそうになったときでも「勉強しなければいけない」と強く感じる。実際にそうなっている。また、みんなが同じ時間に自習するので、情報を提供しあったり助け合ったりもできる。また自分の学部の勉強だけではなく、朝鮮の歴史や同胞社会の問題など朝大だからこそ教わることも多い。

周りの刺激が力に

 康:常に人と一緒に生活しているので、遅くまで勉強する同級生や先輩の姿を見ると、自分も負けてられない、この人たちを超えなければならないと思う。「ここでできることがたくさんあるんだ」と感じることができる。

 −これからの目標は何か。卒業までの間どのように過ごそうと思っているか。

プラス要素をアピール

 李:目標はまだはっきりとしていないが、やはり国際関係の仕事に就きたいと考えている。他の国の人たちに在日同胞の存在をもっとアピールし、同胞が受けている差別の実態なども訴えていきたい。そのためにも在学中に自分のルーツを知ること、ウリマルをうまく使えるようになること、人脈を広げることなど、朝大でしか身につけられないことをたくさん体得したい。在日のプラス要素を同胞たちにアピールできる存在になりたい。

強い朝大サッカー部に

 孫:卒業後サッカー選手になるために、在学中はやりたいことも我慢してサッカー漬けの毎日を送ろうと考えている。技術のうえでももっとうまくなって、朝大サッカー部を強くしたい。安英学、李漢宰選手のように朝鮮代表にもなりたい。4年後は22歳、サッカーを通じて大人になりたいと思う。常に謙虚に、現状に満足することなく、一日一日を大切にしたい。

多方面な知識に精通

 康:ロースクール合格を目指して勉強に集中したい。求められているのは、在日同胞固有の問題も解決できる法律家。そのためにはただ法律の知識だけではダメだと思う。朝・日間の問題や在日同胞の人権問題などにも精通した弁護士になりたい。司法試験に受かって弁護士の資格を取得することはゴールではない。その先どうするかをしっかり考え、必要なものを養っていこうと思っている。

同胞のための資格を

 羅:教育者には広い一般教養や人間性が求められる。民族教育の現状を良く知ること、分野を問わずさまざまな勉強をすること、いろんな人と交わることを心がけて大学生活を送るつもりだ。目標は朝大生として初の保育士の資格取得者になること。2年間の在学中に必ず取得する決意でいる。入学してあらためて感じたのは、自分のためだけの資格ではないということ。同胞社会が求めているからこそ、資格を取るのが自分への課題だと思う。

[朝鮮新報 2005.5.30]