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朝大卒業生座談会

 1956年の創立以来、祖国、民族、同胞社会を担う人材を数多く輩出してきた朝鮮大学校(東京都小平市)。今年もまた、さまざまな夢を抱き学生たちが新たな門出を迎える。「朝大での経験は人生の大きな糧となる」と口をそろえる卒業生たち。学生生活を通じて何を学び、身につけたのか。4人に話し合ってもらった。(まとめ=崔良先記者)

−出席者

文泰勝さん(政治経済学部法律学科)周りの刺激が原動力

洪玲奈さん(教育学部教育学科3年制)自分の「存在価値」知った

姜太鉉さん(経営学部)民族教育の発展を

李鮮華さん(短期学部生活科学科)奉仕通じて恩返し

意義深い祖国訪問 主導的な役割を

 −学生生活を通じてとくに印象深かったことは何か。

文泰勝さん

 文泰勝 3年生の時に行われた祖国訪問だ。反朝鮮、反総聯キャンペーンが続き、「特定船舶入港禁止特別措置法案」が成立するなど、紆余曲折が続いていた中での訪問だった。実際に自分の目で祖国をみて、素朴で温かい人々の姿に触れることができ、とても感動した。また、在日同胞として何をすべきか−自分たちの存在や役割についてあらためて考え、悟った期間でもあった。自分を見つめなおす分岐点になったと思う。

 李鮮華 (朝大での生活が)忙しいこともあって、祖国に行ってもはじめはやる気が出なかった(笑)。しかし、講師たちの講義がとてもおもしろく、興味深く聞いた。普段自分たちが日本で感じていたさまざまな疑問や質問に対して一つひとつ丁寧に答えてくれた。祖国を知ることによって、みんなが「在日朝鮮人としての自分」をさらに意識するようになったと思う。また、(それまでなかった)短期学部の歌を作ろうと、曲は祖国の先生たちが、歌詞は私たちが試行錯誤しながら創作したが、その過程がとても意義深かった。完成した時の感動は言葉にしがたい。

祖国訪問では子どもたちと楽しく交流した

 洪玲奈 運動会もとても楽しい思い出だ。祖国訪問、教育実習などを通じて、自分の「存在価値」についてあらためて考えさせられた。朝大に進学する前は、民族教育事業を、「誰かが携わり、やってくれるもの」と、半ば「他人事」のように考えていた。しかし、教育学部に入り、国語、算数、日本語、理科、社会など多数の教科の中から選択科目を選び、それらの教材を研究するうちに、「子どもたちに教えてあげられるのは自分たちしかいない」という思いが強くなっていった。民族教育を担当する一員としての自覚をしっかり持って、主動的な役割を果たしていかなければならないと痛感した。

 姜太鉉 (卒業)論文作成は大変だったが、とてもためになった。私は経済経営分野を研究してきたが、その論文執筆の過程で在日同胞社会の未来について考えるうちに、われわれがすべきことに関する一定の答えを見つけ出せた。「未来」を描きながら勉強するのがとても楽しかった。家族、先生、友だち、先輩、後輩みんなのおかげで完成できたと思う。この経験は、学生として貴重な財産だ。

自分の位置を再確認、理解する過程が重要

 −寄宿舎生活を通じて得たものは?

  5人1部屋の寄宿舎生活は決して生やさしいものではなかったが、友だちとの接し方や対応法について深く考えさせられ、得たものが多かった。

洪玲奈さん

 北海道から九州まで、育った場所や家庭環境が異なるトンムたちといろいろな考えを共有し、論議する過程で、人間や物事を多方面的な視野から見ることが大切だと、あらためて実感した。また、何をするにも周りからの刺激が原動力となって、自分の中の潜在力を発揮できたと思う。

  日本で不景気が続き、情勢も複雑な中で育った同じ世代同士、「これからの同胞社会をどう開拓していくべきか」「こういう社会を築きたい」など夢や未来について語り合ううちに、自分たちの位置や使命を再確認しあった。夢を持って生きていくことが大切だと感じた。

  何を考え、何を悩んでいるかなどを互いに話し、理解する過程がとても重要だったと思う。人間関係の面で得るものが多かった。集団生活を通じて、友だちを思う気持ちや人を思いやる気持ちを持つことの大切さを教えてもらった。

  他人の視点から自分を客観視できるようになった。おかげで、自分では気づかなかった部分も知ることができたし、それがその後の自分の行動に大きな影響を与えた。朝大で築き、育んできた友情は、これからの人生の励みになり、いろんな面で役に立つと思う。

次世代を立派な朝鮮人に 同胞経営事業に尽力

 −同胞社会にどのように貢献していきたいと考えているのか。

姜太鉉さん

  私はこれから教壇に立つことになると思う。民族教育を担当する1人として何をすべきか、どういう教員になるべきかを常に考えていきたい。民族心を育んでくれ、朝鮮人でよかったと思わせてくれたのはウリハッキョ。私自身、民族教育を受けて、本当によかったと、心底思っている。

 在日同胞にとって民族教育はなくてはならないものであり、決してなくしてはならないもの。異国で民族性をいかに守るかが重要なテーマだけに、次世代たちが立派な朝鮮人として育っていけるような環境を数多く作っていきたい。

  今年は、祖国解放60周年、総聯結成50周年を迎えるとともに、(日本が朝鮮を実質的に植民地にした)「乙巳条約」(1905年)から100年に当たる。このことをもって、在日同胞形成100年ともいわれる。

朝大では吹奏楽演奏会、演劇、舞踊発表会など、年間を通じて、多彩なイベントが行われる

 歴史的な背景を生きる同胞青年として何をなすべきか。まずは祖国統一と朝・日国交正常化を必ず実現させるための運動を推し進めていくべきだと思う。思いを同じくする日本人や周りの人たちと手を取り合い、互いの知恵と力を集結して行動していくことが肝心だ。そういう取り組みを積極的に行っていきたい。

 また、国際的なネットワークを広げ、広範囲な「在日朝鮮人の舞台」を築き、同胞社会のさらなる飛躍と発展に貢献していかねばと思う。形はどうであれ、「ウリ」を守って発展させていくために、先駆者的な役割を果たしたい。

李鮮華さん

  自分たちが暮らす同胞社会をより魅力的なものにしていきたい。そのために自分がやりたいことは何なのか、何ができるのかを考えてきた。実家で祖母と一緒に暮らしていることもあって、福祉関係に興味を持っている。卒業後もこの研究を深めていくつもりだ。1世同胞たちは、何もないところから学校を建設し、さまざまな権利を獲得し、同胞社会の土台を築いてくれた。しかし、その1世たちが、無年金問題をはじめとするさまざまな差別問題に悩まされている。奉仕活動を通じて、植民地時期、解放後と、いちばん苦労してきたハラボジ、ハルモニたちに恩返ししたい。

  同胞社会を取り巻く環境が複雑であろうと、私たち新しい世代が同胞社会を開拓、改革し、民族性を守っていかなければ。今はまだ具体的なことはいえないが、同胞経済ネットワークを活性化させ、豊かで力強い同胞社会を築いていきたい。今ウリハッキョは生徒数が減り、ますます財政難に陥っている。同胞社会の担い手である4、5世の子どもたちに希望に満ちた未来をもたらせるよう、同胞経営事業などに尽力することで、ウリハッキョの財政を助けたい。それがすなわち民族教育の発展に貢献することだと思う。

[朝鮮新報 2005.3.5]