朝鮮大学校 明日の同胞社会を担う「学んだ知識、実践に」 |
創立以来、数多くの人材を輩出してきた朝鮮大学校。現在も、日本全国から集った若者たちが、在日同胞社会を担っていく新世代としての自覚を持ち、さまざまな分野の学業に励み研究活動を行っている。 今号では、来年の卒業に向けて日々奮闘する4人の学生たちを紹介する。(崔良先記者) 「朝大生にしかできないことを」(政治経済学部、梁泰準さん、3年生) 高2の時、学生青年代表団で祖国を訪問した際、寝食をともにした友人と、朝大でまた一緒に学びたいと感じた。民族教育で培ってきたものを生かし、在日同胞社会に貢献できる人物になりたいと強く思い、朝大に入ったという。 政治経済学部の法律学科で学ぶ。法律関連だけでなく、哲学、経済、在日朝鮮人問題などにも関心を寄せる。 卒業論文の準備も着々と進めている。戦後処理裁判における個人請求権について研究しているという梁さんは、「強制連行、東京第2土地問題などさまざまな裁判があるが、在日朝鮮人の主体的な立場からの視点を持って、解決していかなければ。日本の過去清算問題の解決は、全ての解決につながる」と強調する。 先日、「在阪朝鮮人研究会」を発足。大阪出身の朝大生たちによる、在日朝鮮人問題や歴史真相究明などについて考える研究会である。「在日コリアンが一番多く住んでいる大阪の人たちがまずたちあがろうと思い、呼びかけた」という。 在日朝鮮人のさまざまな問題を解くカギは、理論ではなく現場にあると考え、地域密着型の活動を推し進めていくことが重要だと語る梁さん。大阪の地域史をはじめ、知的探究心を刺激するさまざまな内容の学習会を開き、「従軍慰安婦」問題、遺骨問題などを自分たちの問題として考え研究し、社会的意義がある活動を行っていきたいという。「1世たちの証言収集作業やフィールドワークもやってみたい」と意欲的だ。 将来は弁護士になりたいという梁さん。「朝大生がやらなければならないこと、朝大生にしかできないことはたくさんある。在日同胞社会の平和と祖国の発展のために、もっともっと勉強していきたい。成長した姿で、自分を育ててくれた大阪の民族教育に恩返したい」と目を輝かせた。 「研究分野を生かしたい」(文学歴史楽部、鄭永寿さん、3年生) 初、中級部や高1くらいまでは、さほど勉強に意欲的ではなかったという。 「民族教育を受けられるよう、苦しい中でもウリ学校に通わせてくれている家族やいつもあたたかく指導してくださる先生たちのためにも、勉学に励みたいと思った」 昔から歴史が好きなこともあり、そして先生の助けも受けながら、歴史地理学部(現、文学歴史学部)に入学した。朝鮮史に対してあまり興味を持っていなかったという鄭さんは、外勢の干渉にも屈せず、さまざまな困難に打ち勝ってきたウリナラの民族史を朝大であらためて学ぶことによって、それを自分たちの問題として考えるようになり、現在は「朝鮮現代史」を専攻している。 また、朝・日関係などの情勢問題にも大きな関心を持ち、関係論文や評論が出ている雑誌のチェックも欠かさず行っている。日韓合同歴史研究シンポジウムなど、国際シンポジウムや講演会にも足を運んでいる。 「朝鮮半島を取り巻く情勢を知らないと、卒業後、日本の社会にのみ込まれてしまう恐れがある。自分の国のことをよく知り、正しい見解、情勢観を確立させることが大事」 「本の虫」と言われている鄭さん。「ウリナラの社会主義体制を学術的に見て論じている」という和田春樹氏(東大名誉教授)や、統一問題や民族解放闘争史などについて述べている南朝鮮の姜萬吉氏(尚志大総長)など、多数の著書を愛読した。 また、民族性を守り、発展させていくという学部の使命に沿って、民族的なアイデンティティーを養うことが重要だとも話す。「多様化するニーズの中でいかにして民族性を守っていくか。大学生活を通じて学ぶことと自分の研究対象を分離させてはならない。研究分野を同胞社会でどう生かしていくかを考えたい。『民族の記憶』として、歴史を次の世代に伝えていきたい」。 「やればやるほど楽しい」(経営学部、鄭慶浩さん、3年生) 将来、何に就いても実践的に活用できると思い、経営学部に入った。 経営管理全般、とくに企業の資金調達、運用について学んでいる。ゼミは「財務管理論」だ。とりわけ興味があるのは「株式投資」と「ポートフォリオ理論」だという。 昨年は、ゼミのメンバー5人で、年に1回行われている「日経STOCKリーグ」(日本経済新聞社主催)に参加した。株式を通じて経済を知ろうというのが目的の、学生を対象とした株式学習コンテストだ。インターネットを活用した本番さながらの株式売買シミュレーションを行う。 「自分たちで、どんな基準を設けて投資をするかを考え、それに合った銘柄を買って、『なぜそれら銘柄に投資をするのか?』などについてまとめたレポートを提出した。何カ月も費やさなければならないもので大変だったけど、とても良い経験、勉強になった」と振り返る。教科書のなかでは得られない知識を身につけた喜びを感じたそうだ。 ほかには、「上級英語」を選択。自習時間にも勉強を怠らない。「英語は知っておいたほうがいい。何をやるにも役立つだろうし、グローバル社会においてはとくに不可欠なもの」という。 また、一昨年に発足された「飲食業研究会」や「遊技業研究会」などが催す講演会、朝大外で催されるセミナーなどにも積極的に足を運んでいる。 「勉強はむずかしいけど、やればやるほど新聞などに掲載されている専門用語のことなどがだんだんわかってくる。それが楽しいし、やりがいがある」と笑う。 卒業後は大学院に入って専攻分野をより深く研究し、もっと自分の力を伸ばしたいという鄭さん。「知識を身につけるだけでなく、やさしい心を持った人間になりたい」とほほ笑んだ。 「解けた時の達成感が最高」(理工学部、宋敬鍚さん、3年生) 「高級部の担任先生の朝大時代の話を聞き、魅力的な人間関係が築けると思った。朝大に対して良い印象を持った」 昔から数学が大好きだという宋さん。理工学部を選んだのも自然の流れだった。自然科学科で物理学を専攻している。 「物理は奥が深い。ややこしくてなかなか理解できず、嫌だなと思うこともあった。でも、解けた時の達成感が最高! むずかしいからこそ、できた時の喜びはひとしおです」 放課後は物理学を専攻する学生専用の教室などで、その日習った部分を復習したり、理解が足りない部分をちゃんと知るため、問題集を解くなどして、自習に励んでいる。 「物理を専門的に学んでいくと、昔の人たちが築きあげてきた科学の理論のすばらしさや、『物はなんで、どうやって動くのか?』などの昔と現在との見方の違いが見えてくる。それにとても感動した」 高校の時、イタリアの物理学者、ガリレオ・ガリレイの「慣性の法則」(静止または一様な直線運動をする物体は、外力が作用しない限り、その状態を持続するという法則)について知った時の感動も大きかったという。「高2、3年時の担任の先生も朝大理工学部で物理学を専攻した。いろんな話を聞き、大きな影響を受けた」と振り返る。「朝大には探究心のある友人が多いので、いい刺激になる。やる気さえあれば学習環境はいくらでも作れると思う」。 「専門分野以外のことも学べるのが朝大の利点。何よりも、日本に住む朝鮮人としての自覚をさらに強固なものにすることができる」とも話す。 これからは、パソコン習得に力を入れ、世界の動向にももっと目を向けていきたいという宋さん。 「卒業後は大学院に入り、いろんなことにチャレンジしながらも、ひきつづき物理の研究に専念したい。将来は開発プロジェクトで働きたい」 [朝鮮新報 2005.1.29] |