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〈総連に対する政治弾圧−強制捜索〉 他に意図があるの?

 薬に関する違法性を問う薬事法事件は、立件が困難で、強制捜索、逮捕があったからといって、「有罪」が確定したわけではない。捜査の始まりにすぎない捜査段階で、警察が朝鮮出版会館を封鎖し、11カ所も捜索したのは明らかに行きすぎだ。

 何か他の意図、目的があるとしか思えない。強制捜査は裁判所が発付する令状に基づいて行われる。公安の政治的意図を知りながら、安易に捜索差押令状、逮捕状を出した裁判官の憲法感覚にもあきれる。

 薬事法なのに、なぜ警視庁公安部が100人以上も動員して捜査するのかも疑問だ。公安警察による不当な捜査だ。

 ところが、マスメディア報道は、公安情報を垂れ流し、しかも別件捜査が違法であるとの批判精神が全くない。各紙とも警視庁公安部の記者発表と非公式な情報提供に基づいて報道している。

 もうひとつの問題点は産経、東京新聞のように、「拉致」と結びつけていることだ。薬事法と「拉致」問題はまったく無関係だ。

 自民党が衆院選で大勝したあと、憲法改悪、共謀罪導入、首相靖国参拝強行など、ネオファシズム化に向かうさまざまな強権政治が進められている。メディアは権力の暴走を人民の立場からチェックしなければならない。在日朝鮮人に対する挑戦とも思えるこのような強制捜索には、政治的意図、謀略、差別があるものと見抜いて、社会に問題提起すべきなのに、逆に公安の違法捜査をあおり、権力の行為を正当化している。

 ぼう大な押収物の中には、通信、表現の自由の問題にもかかわることも少なくない。言論機関として危機感を持つべきだ。

 しかも、日朝交渉再開の動きが出ているときに、薬事法違反容疑で、これだけの捜索、一方的な報道は決して許されない。たとえば、A新聞社の社員2人が逮捕されたからといって、社屋だけでなく関連施設すべてを捜索することが許されるのか。ここに長年培われた公安の予断と偏見がある。

 メディアが公安の暴走を阻止しないから、警察権力もこうした行動に出られる。今回の件では、事前に報道機関へのリークがあっただろう。メディアを使って、ショー化している。これは02年9月からの反朝鮮感情をあおるキャンペーンの一環だ。

 報道機関はいまからでも、本件報道を検証して、訂正記事、フォロー記事を出すべきだ。そうしない場合、在日の人たちと心ある日本人は、メディアと警視庁に対して抗議を続けていくべきだ。(談、浅野健一同志社大学教授)

[朝鮮新報 2005.10.23]