高齢社会を住宅の視点から支える(下)−住環境整備と自立支援 |
障害を持っても、年をとっても、人間が人間らしい生活を全うするには住宅が基盤となります。 少子高齢社会になるにつれて、高齢者や障害者が住み慣れた住宅や地域で暮らすことの重要性がますます高まってきました。 1990年代に入って、バリアフリー住宅の建設や改造、人にやさしい街づくりなどの取り組みが注目され始めたのも、まさにそうした視点からだったといえます。 住環境が整備されれば、人手にたよりがちだった介護や介助は軽減され、支援を受ける人は自立へ一歩前進でき、尊厳を守ることができます。支援を受ける人が気兼ねなく、自分の意思のもとに、できるかぎり自立して、その人にとって当前の暮らしを実現できることこそ、最大の支援なのです。 問題は、住環境整備というとどうしても住宅という建築物としてとらえられがちで、住む人の生活や身体、健康、ひいては個人の歴史など、ソフトの部分への理解やアプローチが不足する傾向があることです。 支援を受ける人の生活全体の把握を怠たると、住宅改造も失敗してしまいます。 どんな人でも、住み慣れた住宅、住み慣れた地域で、「自分らしい暮らし」をしていきたいと思っています。年をとっても、障害を持ったとしても、「自分らしい暮らし」を続けたいと願っています。 若い人もやがては、必ず老いを迎えます。元気な人でも、ケガや病気で障害を持つかもしれません。あらゆる年代、あらゆる身体的条件の人を「生活者」ととらえ、一人ひとりが「自分らしい暮らし」を続けられるように、住環境の整備を通して支援していくことも大切です。 望ましい住環境整備 平均寿命が延びて健康寿命も延び、自宅で生活する期間が大変長くなってきました。ケガをしないで、安全に安心して自宅で長く生活できるよう住環境を見直し整えることが今求められています。 住宅を整備し支援を受ける側が安全に在宅生活を長く継続できるということは、「誰もが自分の住みたい家で、人として尊重されながら当たり前の暮らしができる」というノーマライゼーションの考え方そのものとも思われます。 高齢者や障害者が暮らしやすい住環境については、認知症などの精神的障害および視力障害、聴力障害、移動障害など身体的障害があったりしても、注意力が散漫にならないよう喚起できる何らかの工夫がほしいと思われます。 今後は、仮に注意力がおろそかになっても、事故につながらないような住宅の有り様を探っていくことが必要ではないかと思います。高齢者や障害者が生活しやすい住居が提供されれば、「住宅内事故」も減り、生活意欲が高まり、何事にも積極的になり、在宅生活を継続できるようになると思います。そして、地域全体で支援する環境を整えていくことが、大変重要なことだと思います。 高齢者に対する住宅改築 これまで行われてきた支援事業の一つは、1965年から公営住宅における老人世帯優先入居制度など、主として公的住宅を中心に展開されてきました。 個人の持ち家住宅に関するものは、住宅金融公庫の高齢者同居世帯、二世帯住宅に対する割増融資があり、高齢者住宅の建設は、今後の高齢社会を乗り切るために必要不可欠だとの考えから具体的な施策を展開してきました。 そのほかにも、介護保険導入以前から行政では住宅をめぐる各種の取り組みがありました。 室内の段差をなくし、手すりを取り付け、転倒や転落、墜落の予防に努め、狭い浴室のため扉を半折れのものに変えて、出入りの利便性を図り、和式を洋式のトイレに替え起居動作をしやすくするなどの施策を、申請により65歳以上の人は無料で行っていました。 5年前からの介護保険制度導入により、整合性を図るため介護保険を優先するようになりました。 しかし、65歳になった時点で現在だけを考えるのでなく、10年後20年後も住み続けるわが家を考えた時、申請して住宅をあらかじめ改修しておくことをお勧めしたいと思います。(林瑛純、福祉住環境コーディネーター) 当センターでは、同胞が苦労しがちなお部屋探しのお手伝いを、同胞不動産業者や家主のご協力のもとに行っています。また、住まいに関する各種相談も弁護士、建築士、住環境コーディネーターなどの有資格者によって行っていますのでぜひご活用ください。 ※なお、この活動に協力していただける不動産業者や家主、「ニューカマー」のための通訳ボランティアを求めています。ご協力いただける方はご連絡ください。【NPO法人同胞法律・生活センター TEL 03・5818・5424、tonposoudan@yahoo.co.jp、住まいサポートのページ=http://www.tonpo-center.net/sumai-top.htm)】 [朝鮮新報 2005.11.30] |