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同胞法律・生活センター連続講座 女性のための年金講座

 同胞法律・生活センターが主催する連続講座「ズバリ解決! 在日コリアンの悩みあれこれ」が19日、同センターで行われた。最終回となる今回は、港区役所年金課相談員の富田麻美さんを講師に迎え、「女性と年金」をテーマに行われた。

年金制度の中のジェンダー

講師の富田麻美さん

 年金問題は、自分の将来の老後の生活に関わる事柄であるにもかからわず、きちんと理解できていないのが現状である。講師の富田さんは、年金は複雑だとよく言われるように、専門家でないとわからないことが多いという。その理由は、年金が明治時代に始まった軍人や官吏を対象とした恩給制度から始まり、幾度もの改正を経て現在の年金制度に至ったからである。

 また、年金制度の中にはジェンダーに関わる問題も含まれているという。日本の年金制度はサラリーマンと専業主婦の世帯を標準モデルとしている。サラリーマンでない自営業者などは自営業や不動産所得などで生涯何らかの所得があることを前提としているため、国民年金の給付額が厚生年金や共済年金に比べ極端に少ないという。

富田さんの話に耳を傾ける参加者

 女性の高学歴化や社会進出、結婚、出産後も働き続ける女性の増加、非婚あるいはシングルマザーを選択する女性、離婚の増加など女性の生き方やライフサイクルが大きく変化している現在において、今の年金制度は「結婚したら退職するのが当たり前」とされた時代の負の遺産であると指摘。とくに掛け金額が報酬比例である厚生年金の場合、男女の支給額の対比は100:63だという。これは男女の生涯賃金格差と同じ比率だ。

 また、厚生年金、共済組合加入者に扶養されている配偶者(第3号被保険者)の待遇や、国民年金の遺族年金が男性は受け取れないことなど、制度の中に色濃く残っているジェンダーの問題についても語った。

思いもよらない加入、支払い歴

 富田さんは、戦前、戦中の年金制度について説明しながら、当時「国家総動員法」により会社員、とくに炭鉱などの労働者は必ず年金に加入しており、会社が保険料を納めていると解説した。戦前、戦中に日本で働いていた同胞は、そのような形で保険料を支払っているケースが意外と多いという。支払い記録が見つかれば年金の給付を受けることができる。

 しかし記憶があいまいだったり、創氏改名や読み方の違いなどにより、加入記録が見つかりにくい。

 富田さんはまた、時間がずいぶん経っていること、思い出したくない記憶であるため、それを聞きだすことは大変であるとも言う。しかし家族の協力のもと、小さな手がかりからでも加入、支払い記録を探し出し、同胞への年金給付を助けたいと述べた。

 セミナー参加者は、富田さんの話を興味深く聞き、活発な質疑応答を交わした。(安愛麗記者)

[朝鮮新報 2005.11.29]