人権協会シンポジウム 在日の権利課題について議論 |
在日本朝鮮人人権協会主催シンポジウム「これからの在日朝鮮人の法的地位―統一と和解の時代をむかえる3世、4世の権利課題とは」が26日に東京・上野の朝鮮商工会館で行われ、会員ら100余人が参加した。シンポジウムでは、在日同胞社会の実態分析に基づき、21世紀を生き抜くためにあるべき法的地位とこれからの権利課題について深い議論がなされた。 「質量的変化」を迎えた同胞社会
シンポジウムでは始めに人権協会・金昌宣中央常任理事が「在日同胞の法的地位はどうあるべきか? …同胞社会の実態と私たちの権利課題」というテーマで基調報告を行った。 金理事はまず、同胞社会は「質量的変化」を迎えたと指摘した。2004年末現在の外国人登録統計に基づく朝鮮、韓国籍男女別年齢統計によると、0〜39歳を3、4、5世とするなら全体の46.7%を占める。この過半数を占める3世以降の世代のあいだでは、2世とは違う「質量的変化」が起きている。 その背景には民族分断半世紀、差別と同化政策、同胞社会の地殻変動、グローバル化時代の影響がある。とくに世代交代は、主流世代が移行したという単純な数量的問題ではなく、母国生まれの1世の影響を受けた2世ではなく、日本で生まれ育った2世以降の世代に育てられた3世以降の世代が同胞社会の主力となっているという質的変化を伴っている。また、「トンネ」の急速な減少と同胞の分散、「永住資格」取得による永住者としての人生設計など、内的、外的変化の中で次代を担う在日同胞社会の主体が変化している。 金理事は一方で同胞社会の複合化についても指摘した。「帰化コリアン」とその子や孫であるいわゆる「コリアン系」の増加、国際結婚の増加による「ダブル」の増加によって、国籍において「朝鮮」「韓国」「日本」、「血筋」において「コリアン+日本」、そして日本文化の影響も受けながら実態と意識においてまさに複合化している。 価値観や生活様式の多様化といった領域を超え、民族意識や帰属意識が複合化し、在日同胞個々人も、同胞社会そのものも「質量的」に変化し複合化していると金理事は分析する。 権利課題については、まず過去の清算としての民族教育の法的地位、社会保障、外登法、入管法などの治安管理を目的とした法の改善など未解決の問題がある。また、積極的差別是正措置など、現行法制度内の解釈、運用では解決困難な問題については「在日朝鮮人特別法」の制定が必要であると言及した。一方で朝・日国交正常化とともに朝鮮の準外交窓口としての役割を担うことになる総連を破壊活動防止法適用容疑団体から除外すること、朝・日相互理解を深める地域コミュニティ機関、民族文化を守り継承させる機関として諸般の行政措置がとられるべきであると訴えた。 過去清算としての法的地位 つづいて「朝鮮学校の法的地位」について、金舜植弁護士が報告した。 金弁護士はまず、民族教育の権利は植民地支配に対する原状回復義務として保障されるべきだとしたうえで、これまで差別の根拠とされた1965年の文部事務次官通達は、2000年に地方分権一括法が施行されたことによりその効力を失ったと語った。 さらに金弁護士は、文部科学省が今日において、日本に短期間滞在する外国人子女を優遇することが対日投資を促進し、海外から優秀な人材を呼び込むうえで重要な役割を果たすという理由で、新たに外国人学校のなかで線引きをして、朝鮮学校に対する差別的扱いを維持しようとしていると指摘。2003年の大学入学資格差別撤廃運動によって文部科学省の新たな方針を変更させたように、外国人学校全体の法的地位の底上げと同時に、朝鮮学校に対する差別的取扱いを是正させるため、外国人学校のネットワーク、連帯を強化していくことを訴えた。 また、「分断と植民地主義克服のために」というテーマで、一橋大学大学院社会学研究科博士課程・鄭栄桓さんが報告した。鄭さんは、在日朝鮮人の人権について考えるとき、他の外国人と同じように考えることは必要であるが、それだけでは不十分であると指摘した。 「北朝鮮」そのものが揶揄の対象となっている現在の日本において、「北朝鮮」という用語そのものから否定していくべきだと強調。「北朝鮮」「北朝鮮人」という、存在しないもの、存在しない人が何なのか、誰なのかを問うていくことが「北朝鮮人としての在日朝鮮人」を引き受けることであると訴えた。 報告後、金哲敏弁護士が「差別と人権侵害の撤廃のために」、人権協会中央事務局・宋恵淑副部長が「在日朝鮮人の人権と普遍的人権課題」についてそれぞれ発言した。また参加者からはさまざまな質問が報告者に寄せられた。 シンポジウムの最後には、人権協会から来年度の課題として、@民族教育の権利拡充、A高齢者サポート、B魅力ある組織作りが提起された。(安愛麗記者) [朝鮮新報 2005.11.29] |