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〈投稿〉 清川江でのソガリ釣り いつまでも魅惑の川であれ

「10年来の片思いがかなった」

 今、ペットフィッシュ愛好家の中で密かにソガリブームが巻き起こっています。

 私がソガリの名を初めて耳にしたのは今から10年前、清川江で鮎釣りをした時でした。27〜30センチの型のそろった見事な鮎を友釣りで50匹、2人で100匹は釣れたかと思います。

 香山にある朝鮮式瓦屋根(鶴閣)の美しい清川ホテルに宿泊しました。

大物のソガリを釣って自慢げな崔さん

 旅館の従業員の方や近所の人たちに鮎料理をふるまい、得意げに釣果を語り合っていると、トンネの人が「ソガリ一匹あれば4人家族、ほかのパンチャン(おかず)なしでも飯をたらふく食えるわい」と一言。

 「ソガリ? 清川江のソガリ?!」聞くほどに耳当たりのいい響きでした。ソガリ、どんな魚なんや? いろいろ説明を聞いても全くイメージがわきません。

 帰ってからもソガリが頭から離れませんでした。周辺のいろいろな人に聞いてみましたが、誰一人知る人はいませんでした。悩んだすえ、朝鮮大学校に問い合わせてみました。数日後、一冊の辞典が送られてきました。

 「朝鮮の魚類」(1964年9月30日発行。発行部数3000部)。大変貴重な書物です。白黒の絵図ですが、これがソガリとの初対面でした。

 今年8月、10年ぶりに祖国を訪問しました。訪問中、願い叶って清川江で釣りができることになりました。一路香山に。安州を過ぎると清川江のお目見えです。私を魅了してやまなかった川。その名の通り、青く澄み切った川がピダンピル(絹の反物)のように妙香山に向かって果てしなく伸びています。

 10年前の姿と全く変わりがありません。本当に幸いでした。景勝地としてだけでなく、金も豊富な宝の山・妙香山。しかし、金日成主席は金鉱山の開発を許しませんでした。清流清川江の自然を保護するためです。今も妙香山の金鉱山はノータッチなのです。

ソガリ(쏘가리、高麗桂魚−コウライケツギョ)洛東江以西の各河川に分布。全長25〜40センチ。全体的に黄褐色で黒褐色錦模様があり体色は環境によって保護色を浴びる。夜行性で水中の昆虫や小魚を獲って食べる。

 もちろん主席の教えに従って「チョンチョンガンウノ(清川江の鮎)」の解禁日も厳しく守られています。

 球場(清川江中流に位置する町)あたりから100人以上の釣り人が長い釣竿を垂らしていました。まぎれもなく鮎釣りです。

 その数の多さもさることながら、みんな友釣りでした。10年前は鮎の友釣りがなかったのか禁止されていたのかわかりませんが、とにかく同じ釣り愛好家として大変うれしく思いました。運転手アジョシも最近ウリナラでは空前の釣りブームだといっていました。

 清川旅館に着き旅装を解く間もなく清川江へ。10年前の釣果を思い浮かべながらいざポイントへ。1時間、2時間…、鮎がかかりません。川底の小石をひろってみても鮎の通った形跡が全くありません。案内指導員の制止も振り切って水中眼鏡を着装し潜ってみましたが鮎っこ一匹みつかりません。

 10年前は7月末、今回は8月中旬、同じポイントです。2週間の差ですべての鮎が下流に下ってしまったのです。普通はそうであっても少しぐらいの鮎はいるものですが、そこはさすがにウリナラ、見事な集団主義鮎です。自称「鮎釣り名人」の私でもこれにはかないません。ここはひとまずすんなりと退却。そうです。私にはあのソガリとの対面が待っているからです。

 翌日早朝5時、朝もやがかかる香山の清川江。それはそれは絶景! 水墨画の世界です。

 「ヒュッ! ヒュッ!」

 静寂な川岸、竿が空を切る音が静かに鳴り響きます。

 「ヒュッ! ヒュッ!」。釣れてくれソガリよ。

 「ヒュッ! ヒュッ!」。10年間のソガリ恋焦がれ…。

 「ヒュッ! ヒュッ!」

 ググッ、うん?! グググーッ!

 おおー! 手ごたえ十分。相当な大物です。竿が楕円形にしなっています。ソガリかもしれない!

 竿を立てたり寝かしたり全身全霊でリールを巻き上げていきます。

 糸が切れそうでひやひやするもそこは慎重に駆け引き。いよいよ魚影が水面に。ソガリであってほしい。ゆらりと黒褐色の錦模様の腹を見せたその瞬間でした。

 「ソガリや!」。見物人が寄ってきます。

 「ソガリだぁー」

 「おおきいぞぉー」

 辺りは一瞬興奮のるつぼと化しました。

 ついにやりました。しかも最大級のソガリです。42センチぐらいはありました。こうして私のソガリに対する10年来の片思いは実を結ぶことになりました。帰ってきてインターネットで「ソガリ」と書き込み、クリックしてみたらなんと情報満載です。やはりソガリブームなのです。中国産、南朝鮮産と。

 しかし、ウリナラ産はありません。あってたまるもんか! 清川江のソガリは中国産や南朝鮮産とは違います。なんとも言えない奥深い茶褐色、引き締まったスマートなボディーライン、きりっとした精かんな顔つき、もう完全にソガリの虜に。私が釣り上げたからという思いからではなく、まさしくそれが清川江のソガリなんです。

 家路に着いた途端にまた行ってみたくなる魅惑の川−清川江。今は遺訓となりましたが、いつまでも主席がこよなく愛された清川江であれ!(崔政守、大阪府河北商工会副会長)

[朝鮮新報 2005.11.10]