クロツラヘラサギ保全行動計画策定国際シンポジウム 「ウリ民族」が共同で守ろう |
「クロツラヘラサギ保全行動計画策定国際シンポジウム」が3日、朝鮮大学校記念館で朝鮮大学校、バードライフアジア、恣本野鳥の会の共催で催された。アジアで絶滅の危機に瀕し、10余年前までは280余羽、今でも1400余羽しかいない希少種クロツラヘラサギ(トキ科)に関する北(朝鮮大学校の在日同胞研究者)と南をはじめとする世界20カ国、地域の研究者が集まったシンポジウムでは、これまでの保全運動に関する研究成果が発表された。また今回、南朝鮮からの研究者が同大学での会議に初めて公式参加し、意義あるものとなった。朝鮮大学校が推し進めてきた今回の事業には、来年の同校創立50周年を迎えるにあたり、同校で北南朝鮮の研究者が一堂に会し催される、「アジアの渡り鳥保護シンポジウム」に向け「一里塚的なものになれば」という関係者らの願いが込められている。 国際的な協力が不可欠 シンポジウムでは、バードライフ・インターナショナル名誉総裁の祝辞をバードライフ・アジアの市田則孝代表が代読したあと、朝鮮大学校の張炳泰学長、バードライフ・インターナショナルのマイク・ランズ事務総長があいさつした。張学長は今年、地球環境保全に対する世界的な関心はよりいっそう高まることが期待されているとしながら、「地球環境の問題が一国の努力によってのみ解決できないことは言うまでもなく、鳥類、とくに国境を越えながら越冬する渡り鳥の保護は、何よりも国際的な協力が欠かせない部門だといえる。アジアの政治情勢は複雑だが、アジアにしか生息しないクロツラヘラサギをアジアの人たち自身の力を合わせて保護していこうとするこの活動は、政治の複雑さを乗り越え着実に前進している。これからのさらなる交流と、クロツラヘラサギの保護研究がアジアの平和のさきがけになることを切に願っている」と述べた。
シンポジウムでは、同校教育学部の鄭鐘烈学部長(60)が「クロツラヘラサギの保全とその将来」と題し基調報告を行った。鄭学部長は@クロツラヘラサギ保護国際ネットワーク及び保護研究プロジェクト構築過程Aクロツラヘラサギ保護のための調査研究過程B幅広い保護活動のための啓発活動について報告。「ボン条約」(2002年9月)によりクロツラヘラサギの国際条約による保護が実現されたと指摘しながら、クロツラヘラサギが「たくさんの方々の協力により保護されている」と強調した。 その後、北(朝鮮大学校の在日同胞研究者)と南の研究者をはじめ日本、香港、台湾の各研究者らが「クロツラヘラサギの繁殖生態について」(南朝鮮)、「クロツラヘラサギの渡りルート」(日本)、「香港の越冬地の歴史と現状」(香港)、「台湾の越冬地の歴史と現状」(台湾)、「標識調査と人工繁殖から得られた知見」(朝鮮・朝鮮大学校の在日同胞研究者)、「クロツラヘラサギのDNA解析」(日本)と題し報告した。 保全活動のモデルケースとして
朝鮮代表として報告した朝鮮大学校研究院の韓昌道さん(23)は大学での4年間、自然界における生態及び絶滅に瀕した鳥類の保護を目的とした鳥類繁殖研究サークルに属していた。報告を終えた韓さんは、「年々高まってきているクロツラヘラサギ保全運動機運の中で、今日のような研究発表の場は大変意義深い。この保全運動をもっと拡大していかなくてはならない。今日のシンポジウムからステップアップして、来年の朝鮮大学校創立50周年記念行事(「アジアの渡り鳥保護シンポジウム」)成功へとつなげたい」「非武装地帯(DMZ)での繁殖を主としているクロツラヘラサギの保全活動において、われわれ在日同胞が北と南のかけ橋となり、活動を推進していきたい」と語った。 南朝鮮代表として報告した李起燮氏(45、韓国環境生態研究所)は「ほとんどが無人島のような非武装地帯(DMZ)で繁殖する、世界に1400羽しかいないクロツラヘラサギの保全、調査事業を北と南が手をとり合い、さらにはアジア各国において共同で行っていかなければならない」と語った。 また、基調報告を行った鄭鐘烈学部長は「アジアにしか存在しないクロツラヘラサギの繁殖地のほとんどが朝鮮半島。この鳥を北と南、『ウリ民族』が共同で守っていかなければならない。これからも絶滅の危機にさらされている種の保全のモデルケースに携わっている自負心をかみしめ奮闘していく」と力強く述べた。 シンポジウム終了後、各国、各地の参加者らは同校の講堂前で、降りしきる冷たい雨をよそに、焼肉をほおばりながら研究に関する熱い議論を交わしながらさらなる交流を深めた。(李東浩記者) [朝鮮新報 2005.10.11] |