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〈朝鮮の食料問題解決とジャガイモ栽培B〉 専門家による技術指導

試験栽培

 大紅湍綜合農場の関係者たちは、ある時は講習会の席で、ある時は作業中の畦道で、またある時は宿舎の外庭でいろいろな形で話し合いの場を持ち、ジャガイモに関する質疑応答や意見交換など尽きることのない対話に明け暮れた。

 代表団として行動を共にした日本の専門家たちは、一つひとつの質問にもていねいに答え解説し、意見のやりとりを行った。

 ここでは代表団の一人、佐藤久泰・北海道農政部OB(ホクレン農業総合研究所作物生産研究室主任研究員)が農場指導者や作業員たちに行った講習内容について簡単に触れることにする。

 まず北海道でのジャガイモ栽培の概況について、ジャガイモの栽培面積、平年反収、主要品種別の栽培面積、原種、採取体系など具体的に説明したあと、多収栽培法について講義を行った。

 その具体的内容は次の通りである。

 −無病健全な種いもを用い、罹病いもは選別して絶対に種いもとして使わないこと
 −種子消毒は必ず実施すること
 −浴光催芽を実施し丈夫な芽を育てること
 −適期植え付けを守り、品種、用途に合わせた植え付け株数をヘクタール当たり4万5000〜5万株にすること
 −施肥はN:80〜100、P:180〜250、K:100〜150キロヘクタールの割合で行うこと
 −生育に合わせた中耕除草と培土を行うこと、まずジバムギ、ヨモギなど多年性雑草が多いので手で抜き取りを行うこと
 −培土法については
 ・茎長が10センチの頃に5センチほどの仮培土を
 ・茎長が20センチの頃に10センチほどの半培土を
 ・3回目は着蕾期に25センチほどの本培土を行うこと
 −病害虫の早期防除に努め、とくに疫病については予防的防除が何よりも重要であることなど。

三池淵飛行場で(01年5月、左から2人目がホクレンOBの佐藤久泰氏)

 代表団は以上のような事前準備を経て、設置された試験区で北海道の品種「農林1号」と「紅丸」を全粒区と切断区に分けて裁植したあと、約2カ月経過した7月の2回目の訪朝で試験圃の状況を見てまわった。

 その結果、部分的に疫病が発生しており、一部には黒アザ病、萎縮病もみられた。

 疫病は水たまりがあったり湿気の多いところで発生しやすいので、排水作業は非常に重要である。

 試験圃が全体的にみて傾斜地になっており、しかも整地の不十分さから所々に凸凹があって、雨が降ればあちこちに停滞水ができ、排水不良で株ごと水に浸ったままのところも多くみられた。

 これは第1回目の訪朝時、最初に試験圃を検分したときに不吉な予感として指摘した通り、試験圃がよく起耕されておらず、排水の対策が講じられなかった結果だと判断せざるをえなかった。

 また、シバムギ、ヨモギなどの雑草が培土が見えないほどにまで畝を覆い、疫病発生の要因にもなったと考えられた。

 代表団はとくに疫病対策として収穫までに農薬散布を4〜5回継続して行う必要があることを現地の関係者に強調した。

 次に排水対策を立ててすぐに工事にかかるよう指導した。

 代表団は朝鮮のジャガイモの在来種と北海道の品種比較、でん粉価の調査など収穫時に必要な作業を手配し、次年度の種いも管理と浴光催芽の方法など技術的指導を行った。

 代表団は最後に試験圃でのジャガイモの生育状況から見て、収穫は9月の中頃が良いとの判断から3回目の訪朝の時期を9月中旬と決め、帰国の途についた。

 試験栽培1年目の結果がどのようになったかについては次回に報告する。(洪彰澤、元朝鮮大学校教授)

[朝鮮新報 2005.8.27]