〈朝鮮の食料問題解決とジャガイモ栽培@〉 大紅湍式ジャガイモ農法の創造 |
はじめに
朝鮮では、1990年代後半から提起されてきた深刻な食糧問題解決の糸口をジャガイモ生産に見い出し、強盛大国建設の重要課題として、ジャガイモ農業革命を起こし、二毛作農業を大々的に押し進める方針が打ち出された。 金正日総書記は、朝鮮北部の高山地帯である大紅湍郡でジャガイモ農業革命を起こし、食糧問題解決の突破口を切り開くよう、たびたび現地指導を行った。 その結果、「大紅湍式のジャガイモ農法」が創造され、その科学的な農法と経験が全国的に一般化されるようになり、いまではジャガイモ農業は、耕地面積の拡大と生産量において大きな発展を遂げている。
一方、今年に入って、年頭の3紙共同社説は、農業を今年の社会主義経済建設の主要戦線と位置づけ、4月に開かれた最高人民会議でも、今年の社会主義経済建設の主要戦線は農業部門であることを明確にし、農業生産に力を入れ、党の農業革命方針を貫徹することが重要な課題として提起された。 最高人民会議での報告では、とりわけ多収穫品種の種子を大々的に導入し、二毛作方針、ジャガイモ農業革命方針、豆農業に力を入れる方針が打ち出され、今年の営農物質供給課題を無条件定められた期日に遂行し、農村に対する労力的、物質的支援を実質的に行うべきであると強調された。 実際、今年の5月に朝鮮を訪問してまず目についたのは、党と政府、中央機関と人民委員会の幹部や活動家たち、それに大学生もほとんどが田植え農作業支援のため農村に出向き、昼間出歩く人はあまり見かけられなかったことである。
聞くところによると、全国の農場に出向くのに、自前の食糧を背嚢に詰め、現場の人たちと寝食を共にしながら、6月4日までの期限内に田植え作業を終えるということであった。 新聞やテレビでは、毎日のように田植え作業の活気あふれた現場の生々しい映像や記事が紹介され、食糧問題解決に向けた人々の意気込みを感じずにはいられなかった。 今年の経済建設で農業部門を主要戦線と定め、そのための国家的な支援体制を固めて総動員されていることは、党創建60周年、祖国光復60周年を記念する意義深い今年を、食糧問題解決の決定的な年にしようという総書記の意図に従って、その実現に向けての党と政府の固い決意が下部末端にまで浸透している表れではなかろうか。
ここでは、「総連ジャガイモ栽培技術代表団」の一員として、大紅湍郡で2年間、信川郡で1年間、ジャガイモ生産の試験栽培を行ってきた活動と経験を交えながら、いくつかテーマ別に書いてみようと思う。 朝鮮では、党のジャガイモ農業革命の方針に従い、食糧問題解決に向けてジャガイモ栽培を大々的に推し進めてきた。 朝鮮で推進しているジャガイモ農業で、その増産のためにどのような対策が講じられたのかを最近の労働新聞や民主朝鮮などの朝鮮メディアが紹介している内容から幾つかかいつまんで見てみよう。 朝鮮で講じられた対策としては、適地適作の原則でジャガイモ栽培に適した土地整理事業を大々的に行い、多収穫品種の育成や有機質肥料の増産、そして二毛作の推進などを挙げることができる。 まず土地整理事業から見てみよう。 作付面積の拡大 ジャガイモの栽培に適した土地を、どのように選ぶのかはジャガイモ生産で基本的な問題である。 ジャガイモは南米のアンデス山脈を中心とする山岳地帯の不毛な土地でも生育し、比較的寒冷な環境でも栽培できる作物である。 朝鮮では、以前から両江道など北部高山地帯で主に栽培されてきた。しかし品種の改良が行われ、山間地帯や高原の畑地や平野地の水田でも栽培されるようになり、90年代後半には、咸鏡南道、平安北道の水田で、水稲とジャガイモの二毛作が実験的に行われ成功している。 今では、黄海南道などの穀倉地帯で稲作、畑作の前作作物として、栽培されている。 また朝鮮では、スイス、オランダ、ドイツなど、外国から輸入された品種の試験栽培を高山地帯で始め、土地に適した品種に改良する研究も進められている。とくに、98年にスイスから導入された「ラーヤ」という外来品種を大紅湍で栽培し、ヘクタール当たり71トンという高収量をあげ、その栽培面積を拡大する計画をたて増産に励んでいる。 また、トウモロコシのヘクタール当たりの収量が1.5トン以下の土地では、ジャガイモへの転作が進められるなど、穀物収量の低い土地や、粘土質の混ざった砂地の多い土地などでジャガイモの栽培面積を拡大している。 山地が陸地の80%を占める朝鮮では、山間地帯、高原地帯で作付面積をいかに増やすかは食糧増産の大きな鍵となる。 朝鮮では、慈江道、咸鏡南・北道の山間地帯、そして両江道、咸鏡南道の高原地帯などで作付け面積を大幅に増やしている。たとえば、咸鏡南道ではジャガイモ畑に適した1万数千ヘクタールの多くの土地を選んで作付けを行い、成果を収めている。 一方、江原道では、土地整理で規格化された圃場を造成するのに全国の模範となった。 ここでは、ジャガイモとサツマイモを大々的に植えるため、3万ヘクタールの土地を田畑として整理する事業を進めた。また江原道では、土地を平野地帯、中間地帯、山間地帯の3形態に分け、平野では稲作を基本にしながら、前作としてムギ類、ジャガイモを植え、稲作がむずかしい中間地帯と山間地帯では、ジャガイモをたくさん植えるようにした。(洪彰澤、元朝鮮大学校教授) [朝鮮新報 2005.8.19] |