〈投稿〉 老年、また楽しからずや |
昨秋、長寿会で旅行した時のこと。バスに乗り込むと、テレビの画面にウリハッキョのオリニたちの顔が見えた。「ハラボジ、ハルモニ。良い旅行を。私たちもしっかり勉強します」。そう話しかけてくるにわか孫たちの姿に、年寄りたちは大喜び。 さらに、商工会、教育会、先生たちまでが貴重なポケットマネーをはたいて巨額の祝賀金まで包んで見送ってくれたのだから、感謝、感激、温かい祝福と喜びを乗せ、バスは一路、塩原温泉へと向かった。 オルシンドル、マニトゥセヨ−「オルシンドル」とはウリマルで「目上の方」という意味であり、「マニトゥセヨ」は「たくさんお召し上がりください」という礼を尽くした言葉である。 みな、お風呂を上がり、お腹をすかして宴会場に急ぐと、支部の若い委員長、副委員長に、ウリハッキョの校長先生までが女性同盟の委員長とともに、お酒やビールにキムチなどのおかずを、大きな盆に載せて運びながら、「オルシンドル、マニトゥセヨ」「オレオレチャンスハセヨ」(長生きしてください)と丁寧なあいさつでもてなしてくれた。
驚いた。若い人たちも、組織もこんなに変わってきたのかと。とかくこの世で年寄りは冷たく扱われがちなのに、この温かさ、この思いやりはただ事ではない。「東方礼儀の国」の若者たちの美風だ。そして、総聯が長い間掲げてきた「イオ精神」の発揚、ウリ民族の伝統的で麗しい美徳である。 ふり返れば、川崎を皮切りに神奈川県高麗長寿会が結成されてからわずか3年。 こうした若者たちの敬老の美風が、県下に急速に広まった。その中でも南武は優等生。 喜びを抑えきれず、最初に舞台に飛び出してきたのはハルモニたちで作る「トラジ会」の合唱団8人。張りのあるきれいな声で合唱を始めたから大騒ぎ。これに負けじと80歳以上のハラボジたちが、不自由な体を支えながら演壇に上がり「アリラン」を歌ったので、これまた大喝采だった。 ウリ支部では高齢者中心の健康体操、昼食会、歌の練習も始まった。体操は支部副委員長が指導、専門の先生よりうまい。いつも30人近くが集まり、椅子に座ったまま手足の運動から始めるが、足を伸ばすのは足の老化を防ぐため、背筋を伸ばすのは姿勢を正して内臓を丈夫にするため、次に両腕と指を思い切り伸ばせば脳のボケも防げるということで大人気だ。「ハナ、トゥル、セッ、ネッ」と大声をあげながら一生懸命だ。 だが楽しみはまだまだ続く。「点心(チョンシム)」である。昨年10月に始まった。最初は「トックッ(雑煮)」、11月は「ピビンバ」と続き、今年の3月は「ソコリ(牛テール)コムタン」、4月は「シレギクッ」にご飯、1世たちの好む懐かしい郷土料理ばかりである。来月は何の料理が出るかが待ち遠しいようだ。 ところで先月の3日、近くの等々力公園で祖国光復60周年と6.15共同宣言5周年を記念して、総聯南武支部と民団南武支団合同の花見があった。 「ウリ ハナへ」と一つの朝鮮を象徴したこの焼肉パーティーには、総勢196人が参加。北の平壌焼酎と南の真露酒を程よく混ぜた「統一酒」が即座に造られ、どよめきと歓声がわき起こる中、大声で乾杯した。そこを総聯支部委員長と民団支団長が手を取り合って仲良くあいさつに回る。そして、長老たちの席をうかがい、「オルシンドル、アンニョンハシムニカ」と深々と頭を下げて礼を尽くす。1世たちの目に涙が光った。 この9月の「敬老の日」は民団とともに祝うという。次々と楽しい日々がやってくる。 病苦と孤独に追われがちな老年を、その苦しみを和らげ楽しませてくれるウリ組織とウリ長寿会、ありがとう。ふと大声で叫んでみる。「老年、また楽しからずや」と。(孫済河、総聯神奈川・南武支部所属) [朝鮮新報 2005.5.21] |