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東京同胞飲食業協議会が国産牛肉実演講習会

 BSEによる米国産牛肉輸入問題が、全頭検査解除に向けて新たな展開を見せているなか、東京・中央江東飲食業組合と東京同胞飲食業協議会(シクタン)主催の国産牛肉実演講習会が3月29日、炭火焼肉・蔵(東京都江東区)で行われ、関東地方の30以上の焼肉業者が参加した。昨年の春から開催されている同講習会。今回も日本の畜産業者・(株)ティーアールエージャパン(滋賀県)側で講師を担当し、牛肉のさばき方の実演、仕入れシステムの提案、安定した牛肉確保の方法などの説明を行った。また、国産和牛と交雑牛を試食しながらその味と食感を確かめ、今後の仕入れの方法などを互いに話し合っていた。

「交雑牛の良さも知って」

 一昨年、アメリカでBSEにかかった牛が発見され、日本への米国産牛肉の輸入がストップしていることにより、同胞業者をはじめとする焼肉業者らは仕入れの高騰、材料不足に苦しめられている。こうした現状を打開しようと始まったのが同講習会だ。

牛肉の解体実演に見入る参加者ら

 講師を担当する(株)ティーアールエージャパンでは「中間マージンを廃し、通常より安い価格で国産牛を提供しよう」という趣旨で、コストダウンの有効な手段となる牛1頭の買い付けとそのさばき方を実演してきた。

 「仕入れで苦しむ在日コリアン経営者に少しでもいい物を提供し、流通の仕組みや原価の知識を知ってもらおう」という同畜産業者の深い思い入れもある。

 当日の参加者は定員の30人を超える盛況ぶり。

 参加者らは肉の解体実演を熱心に見つめていた。肉の切り方から焼肉の材料に使える部位の説明、その部分をどのようにして客に提供するべきかなど参加者らの熱心な質問に、講師を務めた(有)徳志満・代表取締役の徳島明和さんは一つひとつ丁寧に答えていた。

 講演後は国産和牛と交雑牛の試食会が行われた。

 (株)ティーアールエージャパン・レストラン事業部部長の松本正徳さんは、「焼肉店舗の厳しい状況が続く中、仕入れのコストを抑えていかに乗り切るかは経営者らが考えるところ」と話す。

 国産と交雑とでは、仕入れ値に格段の差がある。その分、店のコンセプトやこだわり、「本物」を追求する同胞店舗にとっては、交雑牛の味や食感にはどうしても抵抗感がある。しかし、今回の試食会で、「味と食感を知ってもらうことにより、交雑牛の仕入れも一つの方法であることを知ってもらえれば。要は客の求める安くておいしいものを提供できればいいのでは」と松本さん。

 実際、「国産と変わらない」と参加者の評判も上々だった。

互いに乗りきるアイデアも

 今回、定員を上回る参加率から同胞焼肉店の意欲がうかがえる一方、その裏に経営者が抱える共通の悩みが見え隠れした。

国産の和牛と交雑牛の味の違いを確かめる参加者ら

 東京都杉並区に焼肉店を構える黄炳守さん(30)は初めての参加だ。

 「どこに在庫があるかわからない、情報もない、肉が手に入らない状況は自分の店だけだと殻に閉じこもっていたが、ここに来てみるとどこも同じ状況なんだと感じた。悩みや情報を共有し、互いに乗り切るためのアイデアなどを参考にする意味でも、とてもためになった」

 韓国から日本に来て4年になるシン・ドゥイルさん(35)は東京・渋谷にある料理店でキッチンを担当する。「肉の仕入れ方についてとても勉強になった。在日同胞のこのような集まりで意見交換、交流ができるのはとてもいいこと。今後も参加したい」と語っていた。

 焼肉レストラン雪月花・代表取締役の盧秀男さんは、同講習会で知識を共有するおかげで、業界全体のクオリティーも上がってきていると話す。

 「BSE問題で厳しい状況なのは確かだが、日々発展していこうという強い気持ちが現れている。『これでいい』というのはないからつねに研究していくことが大切。肉の部位の定義づけや食材をどのように使うかということを知ってもらうにはとても意義ある講習会だ」

 主催する東京同胞飲食業協議会と後援する在日本朝鮮東京都商工会では、今後も同講習会を定期的に開催していく予定だ。(金明c記者)

[朝鮮新報 2005.4.9]