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〈知って得する暮らしの法律講座〉 雇用めぐるトラブル避けるには?

 従業員やアルバイトを雇う際には、賃金や勤務時間、労働条件などのルール作りが必要だ。昨今は同胞企業でも、ニューカマーや中国朝鮮族などの同胞をはじめ外国人を雇用するケースが増え、それにともなうトラブルも発生している。雇用される側も雇用主とのトラブルはつきものだ。19日にNPO法人同胞法律・生活センター(東京・上野)で行われた連続講座では、社会保険労務士・行政書士・ファイナンシャルプランナーの韓鐘哲氏が、トラブルの具体的事例をあげながら、それを未然に防ぐための知識、留意点などについて解説した。講義のポイントを紹介する。

●原因

 まず、なぜトラブルが起きるのか。

 それは一言で、雇い入れる側(事業主)の法律についての認識不足がある。それはおおむね2つに分けられる。

 1つは、労災保険(労働者災害保障保険)、雇用保険、社会保険の適用もれなどに見られる労働関係法令の適用と雇用管理だ。また、雇い入れ時に労働条件を明示する「労働条件通知書」などを作らなかったばかりに、トラブルが発生するケースもある。

 2つ目は、出入国管理法についての認識不足。就労可否についての確認、例えばニューカマーや中国朝鮮族を雇う場合、彼らが就労可能かどうかをきちんと把握しないケースがままある。不法就労の場合、本人のみならず事業主側も罰せられるが、そのような意識が低いのが現実だ。

●義務

 まず、各種保険制度への加入があげられる。

 労災保険 労働者を1人でも使用する事業は加入義務がある。

 雇用保険(=失業保険) 労働者を1人でも雇用する事業は、業種、規模のいかんを問わず加入義務がある。ただし、週20時間以下の労働には適用されない。

 健康保険 常時従業員を使用する法人の事業所、常時5人以上の従業員を使用する個人事業者(農林水産業、サービス業は除く)は加入義務がある。

 厚生年金保険 健康保険と同じ条件で加入義務がある。

 ※労災保険と雇用保険、健康保険と厚生年金保険はペアになっている。

 第2に、雇い入れ時に労働条件を明示することだ。

 労働基準法15条により、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。「労働条件通知書」を作る必要がある(別項参照)。ここには、始業、終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金、退職に関する事項などが記される。

 3番目に、最低賃金法の遵守、国籍、性別などによる差別的待遇禁止、解雇権乱用の禁止などの遵守事項がある。

●外国人

 まずは就労可能の可否を確認すること。

 旅券(パスポート)、外国人登録証明書、就労資格証明書で在留資格と在留期間を確認する必要がある。

 在留資格に定められた範囲で就労が認められている資格は17種類。原則として就労が認められない資格は6種類、就労活動に制限がない資格は4種類ある。

 原則として就労が認められない在留資格の場合でも、例外はある。留学、就学、家族滞在の在留資格を持つ外国人で、地方入国管理局で資格外活動の許可を受けることで、留学の場合は、原則一週28時間(夏休み等の長期休業中は一日8時間)まで、就学の場合は一日4時間まで、家族滞在の場合は一週28時間まで働くことが可能だ。

 しかし、風俗営業許可をとっている場所、キャバレーやバー、麻雀店、パチンコ店などでの就労は不可能である。

 不法就労外国人に対しては、3年以下の懲役、禁固または300万円以下の罰金、その併科が科せられ、強制退去となる。

 雇用した事業主は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、または併科に処せられる。知らなかったでは済まされないので要注意だ。

 また、外国人労働者(超過滞在者であっても)にも、日本国内で就労する限り、労働関係法が適用される。健康保険等の社会保険についても適用される。(文聖姫記者)

トラブルの事例

[朝鮮新報 2005.2.22]