新潟県の「万景峰92」号入港条件 同号の代理人ら県庁に審査請求書提出 |
範囲があいまい、国際法違反
新潟県知事が昨年11月、「万景峰92」号の入港と関連し新たな条件を付したことに対し、同号所有者代理人の床井茂弁護士と総聯中央の金弘哲祖国訪問事務所所長など関係者が21日、県庁を訪れ審査請求書(異議申立)を提出した。同県は、同号の岸壁使用の条件として、@今年1月1日以降に入港する際には、適正な保険契約を締結していること、A新潟港内においては、船舶の拡声機等から発せられる音量を社会通念上許容できる範囲内とすること−を付けた。さらに、これに違反した場合は岸壁使用を許可しないことがあるとし、事実上、「万景峰92」号の入港を制限している。泉田裕彦新潟県知事あての審査請求書は、「万景峰92」号に対する条件付岸壁使用許可処分の不法性について指摘。条件を取り消すよう求めた。 港湾法などに違反 請求書は、新潟県側が付した条件についてまず、「日本国憲法及び国際法並び港湾法に違反する重大な違法、不法なもの」だと指摘した。 日本国憲法98条2項は、「日本国の締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定めているとしたうえで、朝鮮、日本の両国が加入している「海洋法に関する国際連合条約」により、「海運自由の原則」が国際ルールとなっていることに言及。また、日本の港湾法も「何人に対しても施設の利用その他港湾運営に関し、不平等な取り扱いをしてはならない」(13条)と定めており、「万景峰92」号に対してのみ、条件を付して、不平等な取り扱いをしてはならないのは当然のことだと強調した。 さらに、「万景峰92」号の入出港を管理する権限は、日本国としての外交関係の処理にあたる国の事務であり、知事にはないとしながら、これは明らかに日本国憲法及び国際法並びに港湾法に違反する重大な違法行為と言わざるをえないと指摘した。 県港湾管理条例にも違反 また、請求書は新潟県港湾管理条例に言及。それによると、港湾施設を使用しようとする者、港湾施設を施設本来の使用目的以外の目的に使用しようとする者は、知事の許可を受けなければならない。が、「管理」の目的は、岸壁が適切に使用されることにあるので、県の付した条件は、いずれも岸壁の適切な管理とは無関係であると指摘した。 条件の範囲についても、きわめて広く、「条件といえる条件ではない」と指摘。「適正な保険」と「社会通念上許容できる範囲内」の範囲が全く示されていないことに触れ、条件を付せられた相手方が、その条件をどこまで達成してよいか全く不明であると疑問を示した。 往来の自由を奪うもの
請求書はさらに、在日朝鮮人が憲法上有している祖国往来の自由(再入国の自由)を奪うものであると指摘した。 もし「万景峰92」号が違法かつ不当な条件により入港できないとすれば、この船舶に乗船しようとしている、あるいは下船しようとしている在日朝鮮人は祖国訪問のための出入国を拒否されることになり、その結果、日本である定住国への出入国における永住権、定住権が剥奪される結果を生むとしながら、「このような権利が知事にはないことは明白である。このような重大な結果を生じることまで知事は考慮したのか」と問いただした。 さらに、「これは明らかに法務省の許可を得た『再入国の権利』を奪うことになる」としながら、憲法及びB規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)、入管法、特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)に違反すると強調した。 関係者が記者会見
代表らは審査請求書を提出した後、県庁で記者会見を開き、新潟県知事が「万景峰92」号の入港を拒否するため付した条件の違法性、不当性について説明した。 床井弁護士は、今まで新潟県が外国の船舶の岸壁使用と関連し、このような不当な条件を付した例があるなら教えてもらいたいと語りながら、「万景峰92」号に対する差別以外の何ものでもないと批判した。さらに、条件の範囲が示されていない、あいまいな条件がそのまま適用されることになると、県にはいくらでも「万景峰92」号の出入港を調節する権限が付与されてしまうと話した。 今回、提出した審査請求が受理されれば新潟県が出した条件は取り消されることになる。そうでない場合、県側は3週間以内に審査請求書に対する弁明書を提出することになっている。 [朝鮮新報 2005.1.25] |