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「戦犯法廷」NHK特集番組 安倍、中川両氏の「干渉」 在日各界が談話、抗議文

 2001年1月、旧日本軍による「慰安婦」制度の責任者を裁く「女性国際戦犯法廷」(以下「戦犯法廷」)を扱ったNHKの特集番組に対し、中川昭一経済産業相と安倍晋三自民党幹事長代理が放送前日、NHK幹部に「偏った内容だ」などと指摘し、番組内容が大幅に変更されていたという報道と関連し14日、朝鮮人強制連行真相調査団の洪祥進朝鮮人側事務局長、人権協会の宋恵淑さんがそれぞれ談話を発表。また在日本朝鮮民主女性同盟中央本部は両氏に抗議文を送った。談話、抗議文の内容を以下に紹介する。

再編集して報道を

 2000年に行われた模擬裁判「女性国際戦犯法廷」は国際的にも高く評価されている。その理由は、1996年国連人権委員会で日本政府を含め全会一致で採択した「戦時の軍事的性奴隷問題に関する報告書」(慰安婦)を全面的に導入し、国際的に著名な専門家が行った法廷だったからである。

 ところが、今回の件について当時の安倍内閣官房副長官は「中立的な立場」で「反対の意見も紹介」(1/12報道)としているが、模擬裁判の参加要請を拒否したのは日本政府であり、内閣官房の要職にある者が報道関係者を呼び、問題提起を行ったことは「干渉」以外の何ものでもない。

 日本の責任追及等の意に沿わないものを「公正」ではないとの口実でねじ伏せることは、歴史的教訓からすれば侵略と略奪につながる恐ろしい論理である。法律に基づき、責任を明確にし、NHKは再度編集し、報道すべきである(洪祥進、朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側事務局長)。

番組変更の説明を

 「戦犯法廷」は、日本政府が敗戦後、日本の侵略戦争と植民地支配に対する真しな謝罪と補償の責任を果たさず、その結果、戦後半世紀以上経った今も「慰安婦」として人権蹂躙を受けた人々の尊厳が回復されないまま、後遺症やトラウマに悩まされている現状を憂慮した北南朝鮮をはじめとする日本軍性奴隷制の被害諸国と、加害国である日本の人々が開廷したものである。

 また「戦犯法廷」実現には、日本軍性奴隷制のような国家的性犯罪が裁かれなかったことが不処罰の連鎖を招き、1990年代旧ユーゴスラビアなどで起きた組織的性犯罪へとつながっているという事実を認定し、日本政府に対し加害者処罰も含めた「慰安婦」問題の解決を促した国際社会の後押しがあった。

 このような「戦犯法廷」を否定する行為は、朝鮮半島と日本との間の不幸な歴史を克服し、北東アジアに安全と平和を確立しようとするアジア民衆の期待と努力を踏みにじり、国際社会による女性に対する暴力の根絶に向けた運動に反するものであると言わざるをえない。

 中川・安倍両氏は今回の問題に関し、きちんとした説明責任を果たすべきである(宋恵淑、在日本朝鮮人人権協会)。

許せない冒とく

 「戦犯法廷」を扱ったNHKの番組内容に対し、安倍、中川両氏が深く介入し政治的圧力を加えていた事がNHKの内部告発によって4年が過ぎた今、明らかになりました。

 政治家である両氏が旧日本軍の「慰安婦」制度の法的責任を問う放送内容に「偏った内容だ」「やめてしまえ」などと強い圧力を加えたことは戦時下での検閲を彷彿させる大変由々しい問題であり両氏の言動に激しい怒りを禁じえません。

 とりわけこの事は、過去の歴史をわい曲し侵略戦争を美化しようとする安倍、中川両氏のきわめて危険かつ時代錯誤的な言動だと断じざるをえません。

 史実を次々にゆがめ、日本の植民地支配の一切の責任を回避しようとする両議員に在日朝鮮女性の名において民族的怒りを持って強く抗議します。

 両氏の言動は従軍「慰安婦」にされた被害女性たちだけではなく、全ての女性に対する深刻な人権侵害であり断じて許すことのできない冒とくです。

 両氏は「戦犯法廷」後、世界的に著名な法律家たちにより「昭和天皇有罪、日本に国家責任」という歴史的な判決が下されたことを直視すべきです。

 国の政策を司る両氏が史実をゆがめることなく正しい歴史観と良識を持ち事実を明らかにしただちに謝罪することを断固として要求します。

 私たち在日朝鮮女性は祖国解放60周年を目前にして「従軍慰安婦」、強制連行問題等過去の植民地支配に対する日本政府の謝罪と補償が一日も早くなされることを強く要求します。(1月14日 在日本朝鮮民主女性同盟中央本部)

[朝鮮新報 2005.1.18]