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秋の訪れ

 時の流れは実に早い。あっ、と言う間に人生も半ばになった。

 思えば人生ままならない事の方が多い気がする。それは、歳を重ねるにつれて増す不自由さにあると思われる。

 夢ばかり追いかけていては暮らせず、現実ばかりじゃ味気ない。人はいつもそのような悩みをくり返しながら人生の道のりを歩んでいくのか。

 ダダダダ〜ン♪ 「運命は突然このように扉を叩く」と、180年ほど前にベートーベンは言った。

 ベートーベンの時代も今も、人生の荒波は突然やってくる。

 運命的にどうにもならない事もあるが、荒波を「どうにか乗り越えよう!」と思う気持ちの方が大切ではなかろうか?

 ウリサラムはどんな時でも苦難に屈せず立ち向かっていく「意地」を持っている。只、それも過ぎると息切れする。

 現代は、頑張る反面、「休息=一息」が不可欠な時代だ。1世たちが生きた時代より楽しみも多様化してきた。

 私の楽しみは自然を愛でる事。それも暮らしの中のささやかなひとときに、ベランダの手入れの不行届きな草花や店の植木に手を入れたり、近くの公園での森林浴であったりする。私は木立が好きだ。鬱蒼と茂った木々のこぼれ陽や葉を揺らす風を感じるとき、さながら、心にビタミンシャワーを浴びるようだ。

 無心でいられるこの束の間は、世知辛い世の中を肯定的に少しは幸せを感じ、明日へと繋げる勇気を与えてくれる。

 心の緩急のリズムの大切さを、つくづく思い起こす秋の訪れである。(金桂仙、声楽家) 

[朝鮮新報 2004.10.18]