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桜の季節

 早いものでもう桜が咲く季節になった。今年は例年に比べて桜の開花が早いようだ。京都は桜の季節になると観光客で溢れる。そのせいで私はこの季節をあまり好きではない。どこに行っても混むからだ。そしてもうひとつの理由は、春は別れの季節だから。ここ何年間、私は春にたくさんの人とお別れをした。

 去年の桜が満開の頃には、大好きだった叔父が他界した。娘のいない叔父は私を娘のようにかわいがってくれた。叔父と一緒に桜の花がきれいに咲く頃、稲荷山に登ったり、散策に出かけたりしたものだ。日本酒が大好きだった叔父にお酌をしながら「夢」の話をしたりもした。叔父はとてもロマンチストだった。

 今から18年前、平壌からソウルまでの距離と同じ京都から長浜までに「統一列車」を走らせた。京都の同胞たちはその列車の中でビールを飲み、歌をうたった。まだ中学生だった私にはあまりにもインパクトのあるダイナミックな行事だった。それを見事にしてのけた叔父を私は尊敬していた。

 叔父は機会があれば私に、ウリマルについて話してくれた。幼い頃ウリマルを充分に学べなかった叔父は「ウリマルをしっかり学び、ウリマルを伝える役割が仙香にはある」と励まし、大学の頃には手紙を送ってくれた。やはりそこにはウリマルに関することが書かれていた。叔父の太く大きな字が刻まれた便箋の間には、お小遣いが挟まれていたっけ…。

 春、桜が満開になったら子どもたちを連れて叔父と散策したあの道を歩いてみよう。そして叔父と話したことを今度は私が子どもたちに伝えていこう。(李仙香、教員)

[朝鮮新報 2004.4.5]