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日本横断徒歩の旅−歩いて、飲んで、3300キロ

 昨年、65歳で、北海道から沖縄まで約3300キロの日本縦断徒歩の旅を、150日かけて歩いた報道写真家石川文洋さん。13日、東京・銀座で開催中の写真展とトークショーに行った。デパートの広々とした会場には大勢が詰めかけ、話に聞き入る同世代の人も目立つ。若者のように瑞々しい話に、何度も感嘆の声があがった。

 昨年7月15日に宗谷岬を出発、12月10日に那覇市パレット久茂地広場にゴール。「日本の美しい景色を友に、夜はおいしいビールを飲みほすのが何よりも楽しかった」という飾り気のない話は笑い声を誘った。

 とはいっても、戦場カメラマンとして何度も死線をくぐり抜けた石川さんのこと、ただ歩くだけではなかった。人々と出会い、多くの人情に触れ、それをレンズで追い、ペンで記録した。

 使用したフィルムは333本。旅の途中で見た各地の風景や人々の様子は1万2000枚のカメラ紀行としてすでに岩波新書や笊カ庫に収められている。

 石川さんはいつも夢を語り、それを実現してきた人だ。奇しくも今年は石川さんが長く在籍した朝日新聞社を退社して20年になる。国際的にも名高いカメラマンとして新聞社時代には当時1千万円を遥かに上回る年収をえていた。

 翌年フリーになって収入は4分の1ほどに激減したが、石川さんは「やりたい仕事ができて幸せです」とにっこり笑っていた。

 日本のメディアが米国一辺倒の記事を垂れ流す中、フリーの石川さんは朝鮮やボスニアやアフガニスタンにも飛び、独自の視点で世界を見つめてきた。

 気迫や情熱を穏やかな人柄が包み、多くの人を引き寄せてやまない。(粉)

[朝鮮新報 2004.10.25]