コスモス街道−秋風にゆれる心のゆとり |
田舎のハンメの家の側には、秋になると薄紅色のコスモスの花が咲き乱れる。 「コスモスが好き。一つひとつは可憐な花だけれど、風に揺れてるコスモスの群はとても綺麗」と母は言う。 高校3年生の秋、クラスメイトと祖国を訪問し、板門店から平壌に向かうバスの中で街道沿いに咲くコスモスの花がとても印象深く心に刻まれた。 朝鮮半島の北出身の父と南出身の母のもと日本で生まれ育った在日2世の詩人・康明淑さんの詩「リムジン川のコスモス」を知ったのは大学生の頃だった。 きれいねと声かける人もいないのに/どうしておまえはここに咲いてるの/リムジンの川辺に白いコスモス/北と南を行き交う風に/吹かれていたくて咲いているの 野に咲くコスモスは、細くて可憐な花だけれど、大地にしっかと根を張って青空に向かいまっすぐに茎を伸ばすその姿は、どこかたくましさを感じさせる。 今年、「苦難の行軍」を終えた祖国を4年ぶりに訪れた。車窓の外を流れる景色の中で特に印象深かったのは風に揺れるコスモスだった。 コスモスの花は、平壌−板門店間だけではなく、平壌−元山、平壌−順安間の道路脇にも美しく咲き乱れ、江西の畑の畦道までをも楽しく飾り、道行く人々を励ますかのようにゆらゆらと風にゆれているのだった。 同行したある女性は、「こんな所にまでコスモスの花を植えて。苦難を乗り越えた人々の心の中に、優しさとゆとりが生まれたのね」とうれしそうに話していた。(潤) [朝鮮新報 2004.9.27] |