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万里の長城−人間の果てしない夢

 世界遺産に登録された高句麗壁画。すでに日本各地で朝鮮への世界遺産ツアーが始まった。古代のロマンの香りが漂う「高句麗」の響きは、日本でも多くの人たちの心をとらえて離さない。

 たとえば、今回、世界遺産に登録された紀伊の熊野三山。この地と「高句麗」との関係も深い。神武天皇が紀伊の国の熊野に入ったとき、道案内したのが三本足の八咫ガラスであったと「古事記」に記述されている。

 三本足のカラスといえば、「高句麗壁画」に必ず描かれる聖鳥であり、太陽を表す鳥。高句麗王家の不滅の王権のシンボルでもあった。このような共通の信仰や風習が何を意味するかは、興味の尽きないところである。

 先年亡くなった歴史学者の江上波夫さんは、高句麗を非常に愛しておられた。高句麗の始祖王朱蒙と金日成主席を重ねあわせながら、スケールの大きさに魅かれると語っていた。

 その江上さんの「騎馬民族征服王朝説」は敗戦でうちひしがれていた人々に生きる希望や勇気を与え、古代史ブームを呼び起こした。研究のための研究ではない、そこには人間と歴史への深い洞察と情熱があった。

 先日、蘇州での取材の帰りに北京に立ち寄り、「万里の長城」を見にいった。中国を統一した秦の始皇帝によって築かれ、その後の王朝によって引き継がれた人類史上最大の建造物。その頂上に立って思ったのは、歴史の興亡を経ても変わらぬ人間の果てしない欲望と未来への夢である。

 「人間とは何か」。この問いを探るうえでも、高句麗壁画や万里の長城を訪ねてみては?(粉)

[朝鮮新報 2004.8.02]