「互いに侵略してはならなぬ」−映画「シルミド」雑感 |
朝鮮半島の悲劇の現代史を扱った韓国映画「シルミド」の試写を見て、17年前のある痛恨の失敗談を思い出した。 87年10月〜11月にかけて1カ月間、平壌に取材記者として滞在した。 そんなある日、全今哲祖統委書記局長(当時)にインタビューした。 当時、南の反米民主化闘争は6月抗争を経て絶頂に達し、全斗煥「政権」は窮地に立たされていた。そんな状況下で朝鮮政府は7月に段階的な軍縮提案と緊張緩和策を発表。 記者が「軍縮案のねらいは何か」と聞いたところ、全氏はこう答えた。 「まず、北南間の誤解と不信を解消すること。(南北は互いに侵略してはならず)互いに疑心を抱いては、いかなる交流や接触も持続しない」()の部分は初めての表現であり、そのせいか、何と原稿を確認するために全氏は記者が滞在中のホテルに3回も足を運んでくれた。そのうえで、本社に送稿したのだが、後で確認すると()の中はばっさりと削られていた。編集長に抗議したら、「()の部分に削るな!」と注意書きすべきだったと叱責された。そんな時代だったのだ。 翌88年、金日成主席は新年の辞で「われわれはどうあっても…南北は互いに侵略しないことを確約する不可侵宣言を採択する決断を下すべきである」と述べた。 半世紀続いた同族相食む血の歴史、それに終止符を打つために流された無数の人々の汗と涙。映画「シルミド」が1200万人もの観客を集めたのは、そこへの圧倒的な思いからであろう。(粉) [朝鮮新報 2004.4.12] |