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「良書は人生の喜び」−連載小説スタート

 本紙で新聞小説がスタートした(電子版未掲載)。「『東医宝鑑』成る−その後の許浚」である。歴史好きな人にとってはとてもおもしろい内容となっているので、見逃さず、ご愛読願いたい。

 新聞小説といえば、鮮烈な印象を持っているのは三浦綾子さんが朝日新聞に連載した「氷点」である。記者が小学4、5年の頃だったと思うが、毎日夜明けに新聞が来るのが待ち遠しくて玄関先に立っていたのを思い出す。今思えば、その体験がきっかけに本好きになったような気がする。

 後に記者となって三浦さんとお会いした折の感激は忘れられない。大人になってなぜ、あれほど魅きつけられたのかと考えたが、「三浦文学の基底に、人間の在り方を見つめる深い力が潜んでいて、人間の根本の問題から決して目を背けなかった」からだと納得した。 本紙の「『東医宝鑑』成る」は、南朝鮮では300万部という驚異的なベストセラーとなった「許浚」の完結編に当たる。

 作者が「東医宝鑑」完成を前に急逝したために未完のまま終わった物語の、いわばミッシングリンクを埋めるものとご理解いただきたい。

 作者は「許浚」の日本語訳を出版した結書房の担当者であった菊池三之介さん、挿絵は朝鮮王朝時代の民俗画を描いて定評のある洪永佑さんである。

 菊池さんはこの原作を初めて読んだ時、「これほどの骨太の大著が、瞬く間に何百万部も売れてしまう社会の健全さ、民族精神の高さ」に感動を禁じえなかったと語った。良書に出会うことは人生の喜びである。本紙の連載小説がそうあってほしいと願う。(粉)

[朝鮮新報 2004.3.8]